三話:朝ごはん
その後、何分か話をして、解散することになった。
「じゃあ、また学院で」
「うん。また…あ、私学院では、なぜか『物静かで近寄りがたい』みたいなイメージ持たれてて、あまりみんなの前では話せないかも。でも、困ったらなんでも相談してね!」
「わかった。バイバイ!」
「うん!バイバイ!」
◇
透が帰った後
「バイバイって、また学院でって言ってくれた…ああ、友達だもんね…これが普通なんだもんね…」
「雪那〜朝ごはんできたわよ〜って、嬉しそうだけど、何かあったの?」
「あ、お母さん!私、嬉しそうに見える?」
「多分、誰がどう見てもそう思うわよ?」
「へ〜そんなんだ。別に嬉しいことなんてないよ〜」
「そう?」
「うん。そうだよ〜。そんなことより早く朝ごはん食べに行こうよ〜」
「まぁ、雪那がこんなに楽しそうにしているなら、とりあえずは様子見かしら…」
「お母さん、なんか言った?」
「何でもないわ。それじゃあ、朝ごはんに行きましょうか…」
「うん!」
◇
午前6時頃、朝倉家に到着
「だいぶ話しちゃったけど、みんなどうしてるかな?」
「あら、お帰り。どこまで行ってたの?」
そしてキッチンに行くと、澄江さん(今の僕のお母さん)が朝ごはんや、僕たちのお弁当を作っていた。
「あ、お母さん、ただいま。ちょっと朝早くに起きちゃったから、この辺をランニングしてた。みんなは?」
「まだ、寝てるわ。今、ちょうど起こしに行こうと思ってたところよ。紗夜は確か今日は一限ないから、起こさなくても大丈夫ね。じゃあ、透?」
「何?」
「今暇だったら、陽菜を起こしに行ってきて、紗夜は起こさなくても大丈夫よ!」
「うん。わかった!」
◇
「とは言ったものの…」
前に家の部屋を陽菜に紹介された時に、こんなことを言われていた。
◇
「で、ここが私の部屋で、向こうがお姉ちゃんの部屋ね!あ、でも私の部屋とかは、国家機密レベルで立ち入り禁止だけど、何か用があれば声かけてね!」
「うん。」
◇
起こすために、入ってもいいのだろうか…
とりあえずは、ドアの外から声をかけて、それで返事がなければ部屋に入ろう。
「おーい、朝だぞ〜!起きろ〜!」
ドアをノックしても返事がない。
仕方なく、そっと陽菜の部屋のドアを開けた。
「おーい、朝だぞ……」
声をかけながら中に入った僕は、そこで思わず足を止めた。
ベッドの上で、陽菜は盛大に寝相を崩していた。
淡いピンクのパジャマ姿のまま、大の字みたいに手足を広げ、枕を半分抱きかかえるようにして眠っている。布団はすっかり蹴飛ばされ、シーツの上には小さなウサギのぬいぐるみが転がっていた。
「……ひどい寝相だな」
思わず苦笑する。
髪は寝ぐせでふわふわに跳ね、口は少しだけ開いていて、かすかに寝息が聞こえる。完全に熟睡しているらしい。
しかも腕を上げたまま寝ているせいで、パジャマの裾が少しずり上がり、本人はまったく気づいていない様子だ。
僕はため息をつきながら、ベッドの横に近づいた。
ぬいぐるみをそっと陽菜の腕の中に戻してやると、彼女はむにゃむにゃと小さく声を漏らす。
「……んん……あと五分……」
「まあ、まだ時間あるし、また来るよ!」
「ん…って、お兄ちゃん!?」
すると、急に陽菜が飛び上がってきた。
「おお、おはよう。」
「うん。おはよう。じゃなくて、なんでお兄ちゃんが?というか見た?見たよね!ああ〜私の寝相見られたぁ〜!」
陽菜は恥ずかしそうに赤面する。
「まぁ、可愛かったし、気にしなくても良いよ」
「お兄ちゃんが気にしなくても、私が気にするよ〜恥ずかしい!!」
「僕たちは兄妹だから別に見られても気にすることないよ?」
「兄妹とか関係ないよ〜。ああ、もうお嫁に行けない〜!」
うーん…言霊使うか…
「″僕たちは兄妹だから、恥ずかしがることはない。気にするな。″」
すると陽菜が落ち着き
「まぁ、兄妹だから別に良いか。でも、お兄ちゃん。私の寝相が悪いこととか、絶対に他人に言っちゃダメだからね。これは二人の秘密だよ。」
「うん。わかった。じゃあ準備が出来たら降りてきてね!」
「は〜い。」
やっぱり言霊は便利だけど、雪那みたいに言霊が効かない人物もいるかもだから、人の世で生きるにあたって、あまり言霊には頼りたくはないな。でも困った時には使おう。
◇
そして十数分後。制服に着替えて、陽菜が降りてきた。
「おはよう。」
「あら、今日はちゃんと起きれたのね。珍しいわ…さすが、透くんに起こしに行ってもらって正解だわ〜」
「なんでお兄ちゃんが起こしに来たのかと思ったら、お母さんが犯人だったか…」
「まさかの犯人扱い!?透くんに何かされたの?」
「別に何もされてないよ。ただお兄ちゃんが起こしに来てびっくりしただけだから。」
「ああ、だから何やら騒がしかったのね…」
「おはよう…」
そして、紗夜姉も降りてきた
「あら、紗夜も起きたの?」
「なんか隣がうるさくて、目が覚めた…」
「ごめん。朝から騒いじゃって…」
「別にいいけど、何かあったの?」
「それはね、お母さんがお兄ちゃんに私を起こすのを頼んで、それで私がお兄ちゃんに起こされて、びっくりしちゃったって話。」
「ああ、なるほど。それじゃあ、陽菜は悪くない。お母さんが悪い。」
「ええ〜やっぱり私、犯人扱いされてる〜透くんも何か言っちゃって!お母さん悪くないよ〜って」
やばい、この家族のノリに全くついていけてない。村では基本静かだったから、こんなに騒がしいのは初めてだ。でも悪い気はしなかった。
「まぁ、僕も陽菜のことを考えて断れば良かった話だからね。誰が悪いとかは考えないようにしよう。それよりもせっかく、母さんが朝ご飯を作ってくれたんだし、冷めないうちにみんなで食べよう。」
「うんうん。誰も悪くない。そうしよう。さすが透くんだね。じゃあ、私は朝ごはんの準備をしてくるから、食卓に座って待ってて!あ、紗夜は今日一限ないでしょ?だからもう少し寝る?それとも一緒に朝ごはん食べる?」
「まぁ、せっかくだし、一緒に食べる」
「じゃあ、すぐ出来るから待っててね!」
「「は〜い」」
◇
「じゃあ、いただきます!」
「「「いただきます!」」」
今日のご飯は、鮭に味噌汁に白ご飯。The朝ごはんって感じの見た目だ。
でも、僕は山奥の村出身で、鮭は買い出し組が、買ってきた時しか食べられなかった、貴重なものだった。でも、この街なら普通に食べることができる。なんて贅沢なんだ…
「あ、そういえば、透くんって、二年A組、特進クラスだったわよね?」
「特進クラス?」
「え?お兄ちゃん、特進クラスとかも知らずに、転校手続きしたの?」
「うん。全部、先生に任せてたから…何かまずいことでもあるの?」
前は、女子校という単語の意味も聞かずに問題ないと言って、大変な思いをしたから、今回はその反省を活かし、特進クラスの意味を聞いておく。
「うん。A組は特進クラスと言って、授業の進行スピードがめちゃくちゃ速いんだよ。お兄ちゃん、前まで入院してたんでしょ?だからちゃんとついていけるのかなって…確か、お姉ちゃんってA組だったよね?どんな感じだったの?」
「うーん、そうねぇ〜、確か一年の時点で、数学はIIBまで終わって、二年の三学期には高校範囲全部終わっていた気がする。そして、三年の授業は全部演習だったかな?理科は私は理系だったから、物化生地全部やって、社会は、二科目選択だったね。私は、地理と世界史を選択したよ。」
「うわぁ〜レベルが違いすぎる。」
やばい。単語の意味がわからなくて全く話が頭に入ってこない。数学はわかる。僕も村にある本で三平方の定理とかの数学を勉強していた。でもそれに続く、にーびーの意味がわからない。数学に、にーびーなんてものがあるのか…そして、ぶっかせいち……?仏教の聖地かなにかか?どういう意味だ?
「まぁ、高校数学とか高校物理は、簡単だから、透ならできるよ。多分…」
ああ、良かった簡単なんだ。まぁ、三平方の定理を理解できた僕なら余裕だろう。
「簡単って…それは、お姉ちゃんだからでしょう?私は、数IAで苦戦してるよ〜。」
「私も、高校数学で一番苦戦したのは、数Aだから、大丈夫よ。まぁ、分からないことがあれば、透も陽菜も何でも聞いてくれたら良いよ。」
「うん。ありがとう。」
三平方の定理を理解した僕なら紗夜姉が簡単だって言う、高校数学ぐらいは余裕だろうね。ごめんよ。紗夜姉、僕が姉さんの世話になることは無さそうだ…
「お母さんは数学とか全く分からないから、透くんの役に立てないわ…ごめんね…」
「まぁ、僕なら何とかなるよ。」
大丈夫だろうけど、困ったら言霊使えばいいしね…
そんな感じの会話をしつつ、朝ごはんを食べていった。
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