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86. 最強の「城」

 イェタがピッと指を差すと、『城』の広場に、石で作られた四角い建物ができた。


「『ゴーレム工場』だよーっ!」


 魔動タンクの中央管理施設を『城』に取り込んでできた施設だ。


 でっかい出入り口がポッカリと開いている以外は、普通の外見だ。町とかで食料を保存するのに使われていそうだな。


「魔動タンク達は、どのぐらい作るー?」


「全部のポイントを使ってくれ!」


「全部……良いの?」


 イェタが聞いてくる。


 かなりのポイントになるはずだから……


 ルマールさんたち獣人は泊りがけで魔物狩りに行くと、大体二十体の暴れ大岩グマを倒していた。


 一体百ポイントの魔物を、二日で二十体。

 それだけで二日で二千ポイント、一日千ポイントの計算だ。


 一日一個の約束で作っていた魔動投石機などの兵器の数は六十以上。

 多分、大岩グマだけで六万ポイント以上は手に入れている。他の魔物も大量に倒しているから――


「わかったー! 十万ポイントちょっとあるから、全部使うよーっ!」


 そのぐらいになるか。兵士達が狩ったぶんもあるし……


「えい!」


 できた建物の入り口から、大量の魔動タンクが流れ出してきた。


「五百三台作ったよーっ!」


 十万ポイントを使って五百台。一台二百ポイントってところか。


 そいつらが()()の『城壁』を駆け上がり、俺たちのいるところまで到着した。


「魔王ゲルグを倒せ!」


 魔動タンク達が、そのままの勢いで『城壁』を駆け下り、ゲルグに襲い掛かった。


「兵器は……」


「『城』製の魔動タンクと兵器なら、連携もとれる! そのままで大丈夫だよーっ!」


 再開させていた兵器での攻撃は、このままで良いようだ。


「あいつ、あせってるな」

「魔動タンクが数十台だった時点でビビってたからな……」


 近くのダークエルフ達が、弓を射ながら会話している。


 ゲルグは魔動タンクを簡単に破壊できる魔法も使えるはずなのだが……


「魔法生物を破壊する魔法は効果ないのか……」


 エルナーザさんによると、うちの魔動タンクには効果がなかったようだ。


 神力が入っているせいで、効果がないとイェタのメッセージに出ていた通り。


 最初は迎撃の様子を見せていたゲルグは、魔動タンクの様子と数を見て逃亡を決意したようだ。

 逃げようとしたのだが――


「あっ捕まった」


 蜘蛛型の金属ゴーレムである魔動タンク達は、前足の先から白いイカヅチみたいなのを出して、それをゲルグに当てた。


 ふわりと空中に浮かんでいた彼が、ぽてっと地面に落ちる。そこに魔動タンク達が取り付いた。


「あの白いイカヅチは……」


「魔王対策の能力だよ!」


「ちょっと距離があっても使えたんだな……」


 ユイさんとイェタの会話に、思わずつぶやいてしまう。


 近づかないと使えないような話を聞いた記憶があるのだが。


「アップデートしてるから、『城』製の魔動タンクは能力も強化されてるって!」


 そうなのか。


「イカヅチは魔法とかを打ち消すだけだから、この後、魔王を攻撃する必要があるよ!」


「トーマさん! 見えない盾も消えているようだぜ!」


 ジュナンの言うとおり、連弩の矢が、今まで盾のあったところを通り抜けている様子。


「投石機を使いたいんだけど、魔動タンク達は……」


「そのまま撃てば、大丈夫だよ!」


 魔王ゲルグに抱きついているやつがいるんだが、そう言うなら試してみるか。魔力は、魔動投石機に込めている。


「撃て!」


 俺の投石機への命令にあわせ、二台を残して他の魔動タンク達がゲルグから遠くに逃げた。


 着弾――


 直後に、他の魔動タンク達が再びゲルグに飛びつきヤツを押さえつけた。


「犠牲を最小限にしながら、敵を葬るスタイルか……」


 いかにもゴーレムらしい戦い方だ。


 他の皆がゲルグの周囲の魔物を排除してくれているから、ゆっくりと狙える。


「ただ、魔動タンク達は大丈夫なのかな……」


 なんか、白いイカヅチを使い続けるものの中に、途中で力尽きてそのままバラバラになってしまうものがいるのだが。


「あの能力は、もともと長く使い続けるものじゃないし、魔王が激しい抵抗をしていて機体に負担がかかっているんだって! 一体ずつやられてる!」


 そうなのか……


「このままで倒せるかな」


 俺が魔動投石機に魔力を注入し、その爆石が発射される間に二十台ぐらいの魔動タンクが力尽きている感じだが。


「大丈夫だよ! まだまだ増えるから……!」


 増えるって……?


「魔動タンクのことか?」


 新しい爆石を発射しながら、イェタに聞く。


「そう!」


 どういうことだ? もうポイントは全部使ってしまった。

 今まで倒した魔物たちをポイント化して、新しい魔動タンクを作るつもりなのか?


 兵器の攻撃力が強すぎて、死骸がバラバラになったりしているのだが。

 イェタはバラバラになった死骸をポイントにできないはず……


「あっ、新しい魔動タンクが来るよーっ!」


 考えていると、イェタの楽しそうな声が聞こえてきた。

 そしてジュナンの悲鳴も。


「トーマさん! あの新しい施設から、なんか魔物がーっ!」


「『魔()タンク』だよーっ! 魔動タンク達の『中央管理施設』の中にいた魔物たちを改造したサイボーグ魔物だって!」


 ……魔動タンクじゃなくて、魔()タンクか。


 さっき魔動タンクが出てきた『ゴーレム工場』という『城』の施設から、体のところどころが金属になった魔物たちが出てきた。


 普通の魔動タンクもいるが、こっちは施設に残っていた魔動タンクか?


 門から出て、『城』の魔動タンクに加勢するようだ。


「中央管理施設の施設化が中途半端だったから、完成までちょっと時間がかかったって書いてある! 旧型の魔動タンクを新型に改造したのも含め、五百台ちょっといるよ!」


 多いな!


「あと、国境に集まっていた旧型の魔動タンクたちももうすぐこちらに着くから、ここに来れば『城』の魔動タンク達に協力してくれるはずだよ!」


 イェタが言う。


「新型とデータを共有して、魔動兵器との連携もとれるはずだって!」


 そうなのか……


「あと、『城』の新型魔動タンクは、エネルギーを使い尽くした時点で、魔王の抵抗に負けてバラバラになってるんだけど」


 崩れ落ちている魔動タンクを指す彼女。


「旧型の魔動タンクは千台はいるから、彼らがエネルギーを供給してくれれば、ずいぶん助けになるんだってよ!」


 おおっ、それは頼もしい。


 新型の魔動タンクがバラバラになるのを、エネルギーを供給することで防いでくれるとか。


「……数十台の魔動タンクにビビっていたヤツに、二千台以上の魔動タンクをけしかけるのか」


 まあ、そんなジュナンの声も聞こえてきたが。


 ――安全に倒せるなら、それで良いと思うよ!


 そんな会話をしながらも、魔動投石機に魔力を込め爆石をゲルグにぶつける。


 それを十度ほど繰り返し……


「魔王を倒したってメッセージが出たーっ!」


 イェタの嬉しそうな声が聞こえてきた。


 途中どうなるかと思ったものの、無事、倒すことができたようだ。


「……でも、死骸は灰になっちゃったのか」


 しばらくは形を残していたようだが、急に灰になって崩れ去ってしまった様子。


 ゲルグに抱きついて動きを止めていた魔動タンクが、がっちゃんがっちゃん音を立て、自分の体についた灰を落としている。


 みょうに可愛(かわい)いしぐさだが……


「魔動タンクが、あんまり壊れなくて良かったな!」


 ジュナンの言葉に、「そうだな」と同意する。


 途中、旧型魔動タンクの助けが入ったこともあり、『城』の魔動タンクも二割程度――二百台以下の被害ですんだようだ。


 自信があったのか、敵は真っ正面からこちらに挑んできた。そのため、あまり被害を出さずに倒すことができた。良かった。


「トーマ! 追加のメッセージが来たよーっ!」


 ホッとしていると、イェタが教えてくれる。


「魔王を倒した中心人物とかに、いくつか特典があるってーっ!」


 それはスゴいな……


「神様へ声が届きやすくなったりするって書いてあるーっ!」


 おおっ。


「神頼みが楽しくなりそうな特典だな」


「あと、あの魔王の死骸? 灰なんだけど、珍しく呪いがかかってないみたいで、純粋な魔力でできているとも書いてある! 豊かな大地を作ったりしてくれるみたい!」


 なるほど。


「できれば回収したいんだけど……」


 ジュナンの言葉に灰の様子を見るが。


「灰をかぶっていた魔動タンクの関節とかに、ちょっと残ってるかなー……」


 風に乗って、ほとんどが飛んでいってしまったようだ。


「……まあ、肥料になるみたいだから、荒野になっていたこの土地にはちょうどいいかもしれないが……効果は劇的だろうな」


 そんなエルナーザさんの言葉。


 ――翌日、この言葉の意味を知ることになる。

28日に、87話とエピローグを投稿する予定です。

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