表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/89

83. 魔王への対策

 ダークエルフの裏切り者……ゲルグの居場所はわかった。

『魔王』というのになるための儀式をしているようだが。


「あの儀式って、どのぐらいで終わるのかな……」


「けっこう時間がかかるみたいだけど……でも、あの魔法陣、この施設から盗んだ『呪気』を操るための部品がうまく配置されていたみたい! それも流用して儀式を強化しているみたいだから、正直わからないって!」


 イェタの答え。すごく早く終わるかもしれないのか。

 もともと、その装置が狙いで、この中央管理施設を狙ったのかもしれない。


「アイツがいる場所は、どこなんだ?」


 エルナーザさんの質問に「きゅっ!」とウニが反応する。


 ディスプレイに地図が出た。


「かなり遠いな……」

「魔法で移動したのか? 我々の足でも一日以上かかる」


 ダークエルフ達の声。


「彼、目立つところにいたけど……」


 なんとなく気になっていたことを聞く。


「なんか、あの岩山の上、魔力が集まる場所みたいだよ! 大量の魔物を生み出す可能性がある場所なんだって!」


 イェタが答えてくれる。


 そういえば大昔、大量の魔物に、町が襲われたことがあったと聞いたことがある。

 その魔物達が現れた方向と、ゲルグがいた位置は一致した。


 あの場所から生じた魔物だったのかもしれないな。


「『魔王』というのが産まれたら危険だろうな……」


 その俺の言葉に答えてくれたのはエルナーザさんだ。


「……イェタ君も言っていたが、『魔王』は人々の生命や苦しみを得て強くなると聞いている。ゲルグは人の苦しみをなんとも思わない性格だ。あの儀式は邪魔したほうがいい」


 といっても距離が遠いから……


「……イェタ、ドローンっていうのを飛ばせるなら、そいつに魔法陣を攻撃してもらうとかはできるのかな?」


 彼女が首を横に振る。


「ドローンは探知とステルス性能に特化しているから無理みたい! この施設の攻撃手段も『大破壊』のときに壊れて、そのままだって! 防御力も含めて、かなり弱体化してる!」


「……じゃあ、魔動タンク達はどうかな? まだ俺たちの支配下に置けていない? 攻撃するように命令できないかな」


「彼らは半自動で行動しているみたいだよ! あんまり細かい命令はできないみたいだけど……もう奪われたパーツを取り返しに行っている一団もいるって!」


 ゲルグのほうに向かっている魔動タンク達もいるようだ。


「……魔動タンクに細かい命令ができないのが面倒だな」


「時間をかけて、彼らのプログラムを書き換えれば、細かい命令も聞くようになるよ! この中央管理施設を『城』の施設にすれば、そのプログラムの書き換えも簡単になるって書いてある!」


『城』の『管理室』か。

 あれで、カルアスの町を『城下町』にしたり、町近くにある鉱山を『城下鉱山』に指定することができた。


 同じことを、この魔動タンク達の中央管理施設に対してもできるらしい。


「『城』の施設にすれば、ポイントを使って魔動タンクを産み出したりできるようになるから、戦力の増加にもなるよーっ!」


「……じゃあ、それをお願いしようか」


 ポイントはじゅうぶんあるはずだ。


「わかったーっ! 『城』と、この中央管理施設の距離が遠いから、もっと近づかないとダメみたい! 侵入者に推進機関を壊されていたみたいだけど……修理は終わっている!」


 イェタが俺を見る。


「中央管理施設を『城』に向かって移動させるよーっ!」


 彼女に「頼むよ」と、うなずいた。


「我々はゲルグのもとへと向かいたいのだが……」

「こいつで向かえないかな?」

「……この中央管理施設は防御力などが弱っているそうだから、こいつで近づくのは危ないだろう」

「あいつは、この施設を狙っていたみたいだしな」


 ダークエルフ達の声。


「……『城』の従魔を借りて、そいつに乗っていくのが良い気がするが」


 エルナーザさんがディスプレイにうつる外の景色を見ながら、そんな意見を言う。


 けっこうな速度で動いているようだから、『城』に着くのはすぐだ。


「だが、用意していた予備の部隊には現状を伝えたいな」


「直接、声を届ける機能は死んでいるみたいだけど、ドローンに音声を録音して飛ばすことはできるみたいよーっ!」


「ならば、それを頼もうか」


「わかったっ! こっち来てーっ!」


 イェタが、エルナーザさんを『マイク』とやらのところに誘導しようとした。

 そのときだった。


「なんだ?」


 エルナーザさんの歩みがピタリと止まる。


「今、変な魔力の波動が――」


 彼女が、そこまで言いかけたときだった。


「きゅっ!」


 ウニのあせったような声。


 どうしたんだ? と問いを発する間もなく、ゲルグのいる岩山を映していたディスプレイが赤黒い光を放つ。


  ゴゴゴゴゴ


 そんな地鳴りの音。


「地震みたい!」


 イェタがボタンを押すと、ドローンからの映像だろうか。町や村の様子がうつる。


「うん! 『城下町』や『城下鉱山』になっているところは全部、大丈夫みたい! エルナーザさんのいた村も、家が丈夫になっていたから問題なかったみたいよ!」


 エルナーザさんたちは、魔物対策で、村人の家を頑丈にしたと言っていた。


「きゅっ!」


 そんなウニの鳴き声。


「ゲルグのいた岩山か!」

「魔物があふれてきているぞ!」


 どこからか現れた大量の魔物が、岩山からあたりに散らばっている。


「魔物の作成をする『魔王』の能力じゃないかってディスプレイに書かれてるよ!」


「魔法儀式が完成したのか……」


 エルナーザさんがつぶやく。

 けっこうかかるはずだった『超生物』……『魔王』になるための魔法儀式が終わってしまったらしい。


 しかも、あの魔物……


「なんか、あの魔物たちの移動速度が異様に速いぞ」


 ゴブリンみたいなのもいるが、馬の全力疾走並みの速さの気がする。


「魔物たちに、黒い霧みたいなのがまとわりついているな」


 エルナーザさんの指摘。あの速度は、その効果だろうか。


「トーマ! まだ時間はあるけど、あの勢いだと町や村にも来るよ!」


 ならば、対策をする必要がありそうだ。


「よし、『城』や町、村に警告を送ろうか。ドローンだっけ、あれを使いたい!」


「わかった!」


 ぽっちぽっちとボタンを押すイェタ。二つ目のマイクが現れた。

 あれに伝えたいことを話せばいいはず。


「トーマ! エルナーザさんのいた村は、どうする?」


「関わるなって言われてるし、あっちはエルナーザさんたちのドローンに警告を送ってもらおうか。あの村も『城下町』にできるけど……」


 そうすれば、バリアで守れるようになるな……


「うん、あの隣国の村も『城下町』にしよう」


「わかったーっ!」


 決断に、イェタが嬉しそうに笑う。


「じゃあ、まずは警告の送付からだな」


『城下町』はバリアを出していられる時間に制限がある。


 バリアを使うのは、できるだけ魔物が町の近くまで来たときが良い。


「あとは、町や村の外にいる人達だけど……」


『城下町』の近くにいるならバリアの中に入ってもらうこともできるのだが、遠くにいる人はどうすれば良いのか。


「ドローンのステルス機能で守ったり、守ってくれそうな魔動タンクの近くに誘導したりもできるよーっ! ドローンの数が足りるかわからないけど!」


 なるほど。まあ、魔物が強いこの地域で、遠出をしている人はあまりいないはず。


 少し賭けになるが、彼らにもドローンを飛ばせば、どうにかなるはずだ。


 できるだけ、やってみるか……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ