77. 城に帰る
エルナーザさんとの情報交換を終えた。けっこう時間がかかってしまったが――
「そろそろ、魔動タンク達は落ち着いたのかな……?」
「きゅっ!」
「魔動タンクの気配はなくなっているって!」
ウニが情報をくれた。
「しばらく話し込んでいたからな……。さっき聞いたが、トーマ君は、獣人達や兵士を待たせているんだったか?」
エルナーザさんに「ええ」とうなずく。彼らの元を出発してから、それなりに時間が経っている。
エルナーザさんの鳥の従魔に手紙を送ってもらったが、心配しているかもしれない。
「ならば、私がそこまで送っていこうか……。この集落の防衛などに貸している従魔がいる。それに乗っていけば楽だろう」
「助かります」
「わかった。こちらだ」
エルナーザさんの後について、外へ。
「あれですか」
外に、俺も何回か乗ったことがある、大きなトカゲの従魔の姿があった。複数いる。
ここら辺のトカゲの魔物とは別の種類で毒がなく、体格もガッシリとしている。見た目もけっこう違うのだが……
「……子どもが乗って遊んでいるんですね」
「うん。水汲みとかに同道させていたら、割とすぐ慣れたようだ」
子どもの適応力もなかなかだ。
「彼を送っていくので、一体つれていくぞ」
子供達に声をかけるエルナーザさん。
ダークエルフは人里にはめったに姿を現さないので人嫌いのイメージがあったのだが、彼女は笑顔でやり取りをしている。関係も良好なようだ。
「つれてきたぞ!」
「トーマ! 乗せて!」
「きゅっ!」
はいはい、とイェタとウニを持ち上げて、トカゲの従魔に乗せた。
「じゃあ、村長にひと声かけてから出発しようか!」
「わかりました」
エルナーザさんの先導で、トカゲの従魔も一緒に、他の家とあまり変わらない大きさの村長さんの家へ。
戸口の外で彼に挨拶をして、ダークエルフの彼とも別れの挨拶を交わしてから、俺たちは村を出たのだ。
「かわいい村だったね!」
「きゅっ!」
走るトカゲの従魔に乗る俺達。イェタがそんな感想を漏らした。
まあ、小さい集落だったからな……
「イェタ君らしい表現だ!」
そうエルナーザさんが笑っていたが。
「そういえばトーマ! さっきの村も『城下町』にできるみたいなんだけど、どうする?」
イェタが聞く。
「『城下町』?」
首をかしげるエルナーザさん。
「『城』に付属の町になるみたいですね。少し不思議な能力もついて……」
あそこだと城下村とか城下集落とか、そんな感じだが。
「うちの領地の村じゃないのに、城下町にできるんだな」
俺はそれに驚いていた。
配下にしている場所じゃないとできないのかと思っていたが。
「あそこは『城』の住人であるエルナーザさんが、支配下に置いた村だから『城下町』にできるみたい! あとはトーマが足を運べば良い状態になってたみたいよ!」
「いや……私は別に支配したつもりはないんだが……」
イェタのメッセージさん的には支配だったらしい。ずいぶんと平和的な占領支配だ……
まあ、隣国の集落なんで、城下町にするつもりはないんだが。
そんな会話をしながら、獣人や兵士達が待っている場所へと戻ってきたのだ。
「トーマ殿! エルナーザ殿も!」
「遅くなりました。手紙でも書きましたが、途中で呪気のことを調べに来たダークエルフ達と出会いまして」
武人風の獣人、ルマールさんに説明する。
「皆、変わりはないですか?」
「ええ! 途中、魔動タンク達がこちらを脅すようなしぐさを見せたため、いったんこの場所から離れていましたが……」
……もしかして、例の謎の爆発があったときかな?
あのときの爆発は魔動タンクを達にとって危険なものだったのか、みょうに警戒心が高くなっていた。
その警戒心が、ここら辺の魔動タンクまで波及したのかもしれない。
「トーマ殿のことが心配だったのですが、ご無事でよかったです!」
「俺も、兵士やルマールさん達に問題がなくてよかったです……」
そう言ってから、エルナーザさんを見る。
「……エルナーザさんは、これからどうしますか?」
「私は、いったんあちらに戻ろうか。ダークエルフの里に鳥の従魔を飛ばし、人員や従魔の補充などについて聞きたい」
そう言う彼女。
兵士たちの耳を意識したのか、どこに戻るかはぼかしてくれたようだ。
里のダークエルフと、情報の交換もするんだろう。
「それと、トーマ君には彼らを……」
彼女が手を挙げると、数羽の小鳥が飛んでくる。
「小鳥の魔物ですか……?」
「ああ、警戒用の従魔だ。この子たちを使ってやってくれ」
エルナーザさんの言葉。
「小鳥たちは夜中も目が見え、一部はウニのように、気配を感じる能力がある。言葉も通じるし、面倒もウニがいれば大丈夫なはずだ」
「きゅっ!」
「まかせてだって!」
「首尾よく従魔の補充ができれば、また追加でトーマ君たちの元へと連れて行くからな」
「すみません」
お礼を言う。
「では、いったん別れようか! 仲間と話し合い、それからまたトーマ君の城にうかがうからな」
「おいしい食事を用意して、待っていますよ!」
「楽しみにしている!」
こうして彼女と別れた俺たちは、城まで戻ってきた。
「トーマさん! 頼まれていた保存庫、無事、再稼動させたぜ!」
『城』の門でバッタリと会ったドワーフの少女、ジュナンの言葉。
保存庫は『城』の近くにあるカルアスの町に昔からあった建物だ。
『秘術使い』という魔法使いの女性が作ったもので、生ものなどを腐りにくくする効果があるため、食べ物などの保管に使われていたという。
「よくやってくれた!」
帰って早々、嬉しい報告を聞けた。
「トーマさんのほうは、どうだったんだ?」
「いろいろとわかったことがあったよ。エルナーザさん達にも会ったし……。ユイさんをまじえて、どこかの部屋で話したいな」
隣の領地の村に行ったことなどは、あまり大っぴらにしたくないが、ユイさんには話しておいたほうが良い。
「ユイちゃんなら、こっちだ!」
後片付けがあるというルマールさん達とは別れ、ジュナンに先導され、俺とイェタとウニは『城』の一室へと入った。
部屋に入った俺達に気がつくユイさん。
「トーマ様、お帰りなさいませ」
手に持った紙の束から目を上げた彼女の挨拶に、「ただいま帰りました」と言葉を返す。
「魔動タンク達については、どうでした?」
「いろいろとわかりましたよ」
ジュナンにも伝えたそんな前置きを言って、彼女に今日あったことを話していく。
「なるほど。エルナーザ様たちが隣国の村に……」
「魔動タンクの管理施設ってのは興味深いな! ダークエルフを裏切ったやつについても了解したぜ! そいつへの対策もしよう!」
ユイさんとジュナンが、それぞれに感想を言う。
保存庫の再稼動を終えたジュナンは余裕があるようだな。
「対策っていうのは……」
「対魔術師用のアイテムとかお守りの作成だな! 魔法への抵抗力が強まる護符とかを兵士へ……。トーマさんや獣人達の装備には、そういう能力をつけてあるけど、それも強化したい」
なるほど。
「簡単に色つきの狼煙を上げられるアイテムとかもあれば、兵士達が異変を知らせたりするのも簡単になるだろう」
魔物の襲撃対策なんかにも使えそうだ。
「そんな感じで用意をしてくれるのは嬉しいよ。……ダークエルフ達と仲良くするつもりなら、その裏切り者と敵対する可能性は高いだろうから」
「……では、いざというときのために、その者の似顔絵なども量産して情報を集めるようにしましょうか」
ユイさんも、そう言ってくれた。
ダークエルフ達は、それぞれ顔も違う。きちんとした似顔絵があれば見分けるのもできるだろう。
それもお願いしたい。




