74. 中央管理施設
イェタとウニ、途中で合流したダークエルフの男性に、彼が連れていた子ども。
ついでに、俺達を警戒する魔動タンクたちも後ろに引き連れ、目的地までやってきた。
「このあたりだよー!」
「きゅっ!」
イェタが荒野を指差す。
「この辺りを目指して、いろいろなところから魔動タンクが集まってきているみたいですね」
エルナーザさんの仲間、ダークエルフの戦士である彼に説明する。
「魔動タンクはたくさんいるが、他とあまり変わりないな」
彼が連れている人間の少女も、その言葉にうなずいている。
魔動タンクの数は、ここに来るまでにどんどん多くなっていって、百台以上の数が見えるが、違いはそのぐらいか。
こちらを警戒しているが、それはいつも通りだ。
「何で、彼らがここに集まってきているかはわかるかな?」
イェタに聞くと、彼女がうなずく。
「わかるよー!」
新しいメッセージが出ているらしい。
「どんな理由で集まってきているんだ?」
「なんか、ここら辺に魔動タンク達の『中央管理施設』っていうのが現れる予定なんだって!」
中央管理施設……?
「魔動タンク達に新しい命令を与えたりできる施設みたい! 魔動タンクが滅んでいたりしたら、新しい魔動タンクを作って地上に放ったりもできるみたいだよ!」
魔動タンクが滅びないようにするための施設なのか。
「大事な施設だから、魔動タンク達は、それを守ろうとしているのか」
「うん! ただ、世界が滅びかけたときに、施設をプレゼントされた神様とかが滅びちゃって、魔動タンク達に新しい命令を与えたりはできなくなっているみたいだけど……」
「……神様に施設をプレゼントしたのか」
「欲しいって言われたから、あげたんだって!」
……魔動タンクを作ったのは、当事まだ人間だった黒神サク様。
その中央管理施設を作ったのも、サク様だろう。
異世界から来て、神様になったといわれる人物だが、人間のころから、神様が欲しがるような魔法の施設を作れたらしい。
「……今は神々の声を聞くことはないから、そんな風なやり取りをしているのも不思議だな」
ダークエルフの彼が言う。
伝説の時代は、神々と人間の距離が近かったと聞くから、そのせいもあるだろうか。
「普通は神様の言葉って聞けませんからね」
サク様は、神器であるイェタを通せば、けっこう苦労するみたいだが、言葉を届けられるみたいだけれど。
伝説のころのように、神々が地上に手出しをできるような世界ならば、サク様も簡単にこの中央管理施設を取り戻せたかもしれないが……
「この管理施設は、普段は大地の深いところにいるんだけど、百年に一度ぐらい地上に浮上してくるんだって!」
「……地上に浮上してくるのか」
「うん! 潜水艦のように土中を泳ぐ、円盤型の巨大な船だって書いてある!」
……潜水艦というのがなんなのかわからなかったが、土の中を『泳ぐ』のか。
中央管理施設が不思議な施設だってのはわかった。
「そいつは、魔動タンクの様子を見に上がってくるってことで良いのかな?」
「それと、施設の魔力補給も兼ねているみたい! ここら辺には、呪気を魔力に変換する特殊な力場が存在していて、良質な魔力が確保できるんだって!」
えっと……
「今は、その魔力は出てないよな?」
呪気が出なくなっているのか、魔力に変換する力に異常が生じているのかはわからないが、土地を豊かにする魔力がなくなったせいで荒野になっている。
「中央管理施設には、その呪気を魔力に変換する機能の様子を見て、何かおかしかったら修復してくれるような機能もあるみたいだよ!」
おおっ。
「魔動タンク達は、この土地の能力の修復に自信があるみたい!」
朗報である。
「ちなみに、何で呪気を魔力に変換する機能がおかしくなったかとか、そういうのは……」
「詳しいことは出ていないよ!」
そうか。
「辺りに呪気があるかどうかだけでも知りたかったんだけど……」
あれがあると魔物が強くなったり薬草が育たなくなったりする。
「その情報なら、私が知っている。あたりに呪気はないと仲間が言っていた」
ダークエルフの彼が教えてくれた。
「一応、呪気を魔力に変換する機能がおかしくなっている可能性も、呪気自体が発生しなくなった可能性も、どちらも考えて我々は調べている」
そうなのか。慎重だ。
「ちなみに、中央管理施設を襲撃して制御室っていうのを乗っ取れば、魔動タンクに与えられている命令を変更することができるかもしれないとも書いてあるよー!」
「魔動タンク達を、人間の味方に戻すことができるってことかな」
「うん! お城の『管理室』の能力を使えば、この中央管理施設をお城の施設にすることもできるみたいだよ!」
俺たちは『管理室』の能力を使って、近くの村などを『城下町』に設定したり、同じく近くの廃鉱を『城下鉱山』にして、掘りつくした鉱脈を復活させたりしている。
それと似たようなことができるようだ。
「もし、その中央管理施設とやらに勝負をかける気ならば、我々も参加させてもらえないか? この土地の修復をする力などがあるのならば、詳しく知っておきたい」
「まだ決めていませんが……」
そう前置きし、ダークエルフの彼に「かまいません」と俺はうなずく。
「あなた方が参加してくださるのなら、心強いです」
と、そう告げたのだ。




