72. 再会
「「「お気をつけて!」」」
ルマールさんや兵士たちに見送られ、ウニとイェタと一緒に、この近くに集まった魔動タンク達の偵察へ向かう。
イェタのメッセージで、彼らの目的などが判明すれば良いのだが……
「きゅっ!」
「魔動タンクさん、一台ついてくるねー!」
四台の魔動タンクの一台が、俺達の後ろをついてくる。監視役のようだ。
「警戒はされているのかな?」
「ルマールさんたちほどじゃないみたいよ! でも、近くに見慣れない人間さんとかがいて、緊張しているみたい!」
ルマールさんと兵士のコンビより、俺とイェタとウニのチームのほうが警戒はされていないみたいだ。
魔動タンク達を警戒させないため、腰の剣とかを『倉庫』にしまったおかげもあるかな。
人間などがいるせいで警戒しているというのは、兵士達やルマールさんのことだろうか……?
「ついたー!」
「きゅっ!」
そんな考察をしながら歩き、丘の上まで来た。魔動タンクの集団が、チラホラと見える。
二十台か三十台か? 反射的に腰の剣に手を伸ばし、そこにいつもの剣がないことに気がつく。
……剣は、『倉庫』に入れたんだっけか。
全身が金属でできている魔動タンクに、剣は効かない。
戦闘になったときに使うのは、ジュナンが作った爆弾とかだ。
だから剣があってもなくても、あんま関係ないはずなんだが、ちょっと頼りなく感じるな。
――『倉庫』から剣を出すには、腰から剣を抜くよりも、ちょっとだけ時間がかかる。
俺はあたりを警戒しながらも、イェタに気になったことを聞く。
「……あの伏せているような魔動タンクたちは何をしているのかな?」
「あれは休憩中の魔動タンクみたいだよーっ!」
八台ぐらいが、集団で休んでいるようだ。
「こいつらが、何で、ここら辺の地域に集まっているかは出ているのかな?」
「あっちのほうにある、とある地点を目指して、みんな集まっているみたいだよーっ!」
「……やっぱり、そこに行ってみるしかなさそうか」
行けば新しいメッセージが得られるかもしれない。
メッセージがなくとも、その場所を見れば理由がわかる可能性もある。
「案内するー?」
そのために、ここまで来た。
「頼むよ」
「わかったーっ!」
「きゅっ!」
イェタに手を引っ張られながら進む。途中、魔動タンク達をたくさん見た。
体をかしげ、こちらを見るだけのものが多いが、気になったのか俺達のあとをついてくるものもいる。警戒されているんだろう。
どんどんと俺達の後ろの魔動タンクの数が多くなっているが……
「わたしたち、人気だねー」
「きゅー」
イェタとウニの、そんな会話。
確かに、後ろをついてくる魔動タンク達は増えているんだが、しかし、この状況を『魔動タンクに人気がある』と言って良いのだろうか。
違う気がするな。
そんな風にして進み、目的地に近づくほど魔動タンクの数は多くなっているものの、魔物に出くわすこともなく平和な時間が経った。
動きがあったのは、二時間ほど後のことだ――
「きゅっ?」
ウニが何かに反応した。
「魔物……という感じではなさそうだな」
緊迫した様子がないことから、そんな感想を持つ。
「子どもと……あと、多分、知り合い?」
イェタがウニの言葉を通訳してくれたが、よくわからない。
子どもと、ウニか俺たちの知り合いが、近くにいるってこと?
この魔動タンク達の真っただ中に。
「……どこら辺にいるんだ?」
「きゅっ!」
指を差すウニ。今登っていた丘の向こうかな。
俺たちの向かっていた場所、魔動タンクが集まっているって場所と同じ方角でもある。
ちょっとだけズレている気もするが。
「……まあ、敵じゃないなら、様子を見に行くか」
「きゅっ!」
そんな会話をしながら、丘を登りきる。
「きゅっ!」
もう一度、指を差すウニ。
「あそこにいるみたいなんだけど……あっ、いた!」
イェタは見つけたみたいだが、どこだ……? ……あっ、あそこか。けっこう近い。何で気がつかなかったんだ……?
「エルナーザさんの仲間か……」
かたわらにある小さな人影、子どものことは知らないが、もう一人の彼は知っている。ダークエルフの戦士だ。
ダークエルフの集落で何度も会話をした。子どもは人間の子で、なんでここにいるのかはわからないが……
「……そういえば、呪気の調査で、俺たちの城の近くに来るかもしれないってエルナーザさんが言っていたな」
ダークエルフによると、もともと、ここは『呪気』というものが発生している土地だったそうだ。
さらに、この土地は、その『呪気』を『魔力』に変換する不思議な力も持っていた。
その魔力により、ずっと、緑豊かな環境が保たれていたのだとか。
今は土地に異常が起こっていて、荒野のようになってしまっていた。
その異常について調べるため、彼らは、この土地を訪れる予定だったのだ。
「きゅっ!」
「こっちに気がついたみたいだね!」
彼が、こちらを見ている。
「きゅっ!」
「あのダークエルフさん、驚いているみたいだね!」
「きゅっきゅっ!」
「気配を薄くする魔法……かな? ちょっと違うみたいだけど……。それを使っているみたいだから、誰かに気がつかれるとは思っていなかったんじゃないかって!」
ウニの言葉を通訳してくれた。
彼の表情は俺にも見えているから、驚いているのはわかる。
「こっちに来るみたいだよ!」
「きゅっ!」
「……人数が多すぎるようになると、魔動タンク達に警戒されないかな?」
歩き始めた彼を見ながら、そんな疑問を持つ。
俺とイェタとウニ。
ダークエルフの男性一人に、彼の連れている子ども。
今のメンバーに彼らが加わると、ちょっと人数が多すぎるようになるんじゃないかと思うんだが。
「なんか魔法のおかげで、大丈夫みたいだよ!」
彼らにかかっている、気配を消すという魔法のことか。気配を消すのとはちょっと違うそうだが。
「かなり珍しくて、繊細な魔法みたい!」
繊細だと、使うのも難しそうだ。
「……合流しても大丈夫そうなら、彼らの元へと向かおうか」
「わかったー!」
「きゅっ!」
元気に返事をしたイェタにグイグイと手を引っ張られ、俺達は丘を降りはじめた。




