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70. 魔動タンク達を探ろう

 ルマールさんを含む獣人と兵士、全部で十五人ほど。


 彼らを引き連れ、道中、魔物とも出くわしながら、魔動タンクが集まっているという国境の近くまでやってきた。


「あれですな」


 日照りのため大地が乾いており、風で土ぼこりが舞う。


 そんな中、注意してみると、ルマールさんが指すところに一台の魔動タンクがいるのが見えた。見張り役の一台かな。けっこう遠くだが……


「見えるかな?」


 横にいるイェタに聞く。


「なんか豆つぶみたいな黒い点が見えるよー!」

「きゅーっ!」


 遠すぎて、魔動タンクが黒い点に見えるらしい。


「メッセージは……」


「メッセージは見えないー!」


 魔動タンクが黒い点に見えているぐらいだ。

 近づかないと、メッセージも見えないようだ。


「魔動タンクは、こちらを見ているだけですな。話に聞いていたような、地面を叩き、こちらを脅すような動作もしていません。もっと近づいて、大丈夫でしょう」


 そのルマールさんの報告に、案内の兵士もうなずいている。


 この案内の兵士は、魔動タンクの様子を見にここに何度か来ているそうだ。判断も参考になる。


「では、そうしましょうか」


 ルマールさんに、うなずく。そして皆にも伝える。


「合図を出すまで、配った爆弾は隠したままにしてくださいね」


 爆弾は、魔法生物を簡単に倒せる特殊な爆弾のこと。

 魔動タンクや、ハイ・リッチを倒すとき、ジュナンに作てもらったものだ。


 そのときのものがあまっていたため、全員に持たせていた。

 ここら辺の魔動タンクの数によっては、この爆弾たちで全部を倒せるかもしれない。


「剣などの武器も鞘に収めてください」


 そして魔動タンクを刺激しないよう、武器もしまわせる。


「ウニがいるので、魔物は近くにいればわかりますから」


 安心させるための言葉に、任せてくれと言うように「きゅっ!」と小人サイズのブラウニーが鳴いた。


「イェタも、メッセージが出たら教えてね」


 そうお願いをして、「進みましょう」と皆に号令をかけ、魔動タンクがいる方向へと歩き始めた。


 安全のため、メッセージはできるだけ遠くから確認したいが……


「おう!?」


 ザックザックと進んでいる最中、イェタが驚きの声を出す。


「……どうしたんだ?」


 メッセージが出たのなら良いのだが、ちょっと雰囲気が違う。


 何か予想外のメッセージだったのかなと、警戒感を高めながら聞くと――


「わたしが魔動タンクだと思って見てた『黒い点』、単なる岩だったーっ!」


 うん……


「……たしかに、魔動タンクの近くに、いくつか岩があるね」


 結構遠かったから、岩と魔動タンクと見分けがつかなかったんだろう。


 なんとなく力が抜けてしまった……


 そんなやり取りをして、俺が待っていた報告が聞けたのは、魔動タンクがハッキリと視認できる距離まで近づいたころだった。


 イェタが元気な声を上げる。


「メッセージ出たよーっ!」


 ぴっと先を指し示す彼女。


「あと十歩ぐらい歩くと、あの魔動タンクが示威行動をする距離に入るみたいだよ!」


 俺の十歩か、子どもであるイェタの十歩かはわからないが、もうすぐのようだ。


「こっちの人数が多すぎるから、このまま進むと戦いになるんだって!」


「……人数が多すぎるってことは、少なくすれば良いのかな?」


「うん! ニ人ぐらいなら戦いにはならないみたい! 三人ぐらいでも大丈夫かもしれないけど、ちょっと危ないって!」


 そうなのか。


「戦いになると、物音を聞いて他の魔動タンクが集まってくるよ!」


 そうだろうな……


「……二人以下の人数で進めば、もっとずっと先まで、戦いにならずに進めるのかな?」


「うん! 武器をしまって、相手を脅さなければ、どこまで進んでも大丈夫みたい! 魔動タンクに襲われることは、ほぼないって書いてあるよ!」


 なるほど。ほぼ無いのか。


「魔動タンクたちは、何か目的があって、この先の場所に集まっているみたいだよ!」


「……目的についての詳細は書いてないってことで良い?」


「うん! 集まっている場所に行かないと出なさそう!」


 そう言ったイェタが、首をこてんとかしげる。


「どっちに向かって行けば良いか、案内も出てるけど……魔動タンク達、ちょっと動いているみたいだね」


「この先にいるはずの、魔動タンク達の集団が移動しているってこと?」


「そうみたい」


 うなずいた彼女が、聞く。


「どうする? 案内する?」


 イェタに、魔動タンクたちがたくさんいるところまで連れて行ってもらうのか。

 彼女は、どの方角に彼らがいるのかわかるようだから。


 できるだけ、イェタに危険がないようにしたいのだが。


「なんか、わたし一人だけで行ったほうが、安全みたいだけど」


 そうなの?


「魔動タンク達に設定されたルールに気をつければ、子供は守ってくれるみたいだから……。だから、私一人だけのほうが安全なんだって」


 と、そう言う彼女。


「魔物がいたとき、倒してくれたりするんだって! 変な大人に襲われても助けてくれるみたい! 魔物は、魔動タンクが倒しているから、あまりいないとも書いてあるけど……」


 子どもの場合、魔動タンクに石を投げつけたりしなければ、守ってくれたりするようだ。


 魔動タンク達は、伝説の時代に、人々の味方として作られたゴーレムみたいだからな……


 もっとも、彼らに設定されたルールは、今では時代遅れになっていて、どんなものがあるのかも定かではない。


 それを犯すと戦闘になるから、討伐を推奨されているようなのだが。


 イェタに関しては、メッセージのアドバイスが見れるから、彼らのルールを侵さず、行動することができる。


 ……とは言ってもな。


「イェタを一人で行かせたくはないな」


「……武装していない大人一人と、あとウニちゃんぐらいなら、私と一緒にいても守ってくれることがあるみたいだけど」


 強い魔物がいて勝てなさそうなら、魔動タンクが助太刀してくれる感じだろうか。


「俺とイェタとウニで行くとして、一応、人数は三人になるな。大丈夫なのか? メッセージだと、三人でも大丈夫だけど、ちょっと危ないって出てなかったか?」


 俺とイェタとウニ。三人だと魔動タンクを刺激する恐れがあるが――


「わたしとウニちゃんは、ちっちゃいから大人一人分に満たないって!」


 なるほど。イェタとウニは、連れて行っても魔動タンクをあまり刺激しないらしい。


 ただ、どちらにしても、少人数での縄張りへの侵入になる。


「わかった……。一度、俺とルマールさんで様子を見に行って、安全そうならイェタにも一緒に来てもらおうか」


 そう判断したが、ルマールさんが首を横に振る。


「いえ、トーマ殿は、こちらでお待ちください。代わりに彼を貸して欲しいです」


 指差したのは兵士の一人、ここら辺の魔物なんかに詳しい人だ。


「二人で中に入り、魔動タンクが攻撃してこないこと、魔物などの危険がないかを確かめてきます」


 ……魔動タンク達の様子を直接、見ておきたい気もするが。イェタを守るという意味では、何かあったときに『戦の角笛』を使える俺が、ここにいたほうが良い。


 防御力などを大幅に上げてくれる特殊な能力だ。あれをイェタにかければ、たいていのことには傷つかなくなる。


「……わかりました」


 少し考えて、うなずく俺。


「おとな二人だと、魔物が出ても助けてくれないけど、戦闘で剣を抜いても大丈夫みたいだよ!」


「……くれぐれも、気をつけてくださいね」


 イェタと俺の言葉に、「はい」と答える兵士。


 ルマールさんも「いただいた情報をもとに、しっかりと調べてきますぞ!」とやる気を見せた。


「では、行ってまいります!」


 こうして二人は、魔動タンク達の偵察へと向かった。


 いつの間にか仲間が集まってきていて、四台になっていた魔動タンク。

 そのうちの一台が、ルマールさん達の後を追うようだ。

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