69. サクの作成物
村に行った帰り道。道案内などをしてもらった町の兵士は、村近くのパトロールのために置いてきた。
今はユイさんやイェタ、ウニ、ルマールさんなどの獣人達とともに、村から城へと帰る途中だ。
俺はユイさんに気になっていたことを聞く。
「そういえば、ユイさんは村の兵士に用事があると言っていたんですが、それはすんだんですか?」
「はい!」
うなずく、彼女。
「私もゴーグ兵士長から聞いたばかりなのですが、なんでも国境近くのある場所に魔動タンクが集まっているのが発見されていたとか」
へー。昨日ぐらいに聞いたのだろうか。
「魔動タンクって、黒神サク様が造られた、蜘蛛型のゴーレムですよね?」
「そうです! よく知っていますね!」
一度、戦いましたから。
「それで、それについて調べた兵士たちが、あの村の常駐兵として異動されていたので、その方に話を聞きたかったのです」
なるほど。俺が村人たちのために『倉庫』から麦や米を出したりしている間に、話を聞いたのだろう。
「十人ぐらいの兵士で調べに行ったようなのですが、戦闘になってしまったそうで……」
まあ、武器を持った人間が近づけば警戒するわな。
「何故、あんなに魔動タンクが集まってきているのがわかっておらず、疑問に思っています」
なるほど。
「魔動タンクは、自己増殖するときに複数台が集まると聞いたことがあるんですけど……」
「その場合『繁殖拠点』と呼ばれる施設も作るようなのですが、それも見当たらないとか。他の繁殖時特有の行動も見られず……なので、増殖を目的としているわけでもないようです」
「……確かに、何か変な理由がないか、できるだけ調べておきたいですね」
彼女に同意した。
イェタのメッセージにも、魔動タンクは『討伐推奨』と出ていた。
サク様が人間だったころに造られたゴーレムで、犯罪者の基準とか、『魔動タンク』はいろいろ時代遅れになっているそうだ。注意したほうが良い。
「できれば討伐しておきたいところですが……。そういえば、魔動タンクの造り主は、イェタの創造主と同じ黒神サク様ですね」
そのせいか、魔動タンクの弱点など、説明がイェタのメッセージに出ていた記憶があるが。
そんな俺の言葉に、ユイさんがイェタを見る。
「……イェタ様なら、魔動タンクが集まっている理由もわかりますかね?」
イェタの元気な返答。
「魔動タンクの情報なら出るみたいだよー! 魔動タンクの上とかにメッセージが出るー!」
サク様の作成物についての情報は出る感じだろうか。
「姿が見えれば良いのですか?」
ユイさんの質問に、「前のときは、そうだったー!」と元気よく答えを返す。
「……それならば、様子を見に行くだけならば、イェタ様を連れて行っても大丈夫でしょうか」
そうなのか……?
「彼らの監視をしている兵士によると、魔動タンク達が集まっている場所に近づきすぎると、彼らは、まず、前足を地面に叩きつけるような警告動作をするとか」
地面に足をガシャガシャと叩きつけるような動作か。
「それ以上近づかなければ襲われないとのことで……。これは『繁殖拠点』を作ったときの魔動タンクの行動と同じです。信頼して良いかと」
そうなのか、と考えていると、誰かに服をクイクイと引っ張られる。
「トーマーっ! わたし、様子を見に行くよっ! お手伝いするーっ!」
「きゅーっ!」
イェタを連れて行くのは、少し不安だが……
……まあ、敵の数にもよるが、魔動タンクを簡単に倒せる爆弾も、前に作ったのが大量に残っている。
近づきすぎなければ襲われることはないということだし、防御力などを大幅に増強する『戦の角笛』という能力もある。
獣人などの護衛と一緒に行けば大丈夫だろうか。
「……あくまでも安全優先だけど、じゃあ、メッセージが出るか試してくれるかな」
「わーい! お手伝いできるー!」
「きゅーっ!」
そうして、いったん『城』まで帰還。
支度をして、翌日になった。
「動作を停止した魔動タンクがあったら持ち帰ってくれると嬉しいな!」
城の外で、ジュナンからそんなお願いをされる。
彼女は、前も魔動タンクの死骸を望んでいた。どんな風にゴーレムが動いているのか興味があるとか言っていたが、今回も持ち帰って欲しいらしい。
「お手伝いするーっ! おさんぽもするーっ!」
「きゅーっ!」
イェタの機嫌の良い声。俺達の手伝いができるのに加え、二日続けて皆で遠出するのが楽しいようだ。
楽しいまま、何の問題も起きず、帰ってくる予定だ。
「それじゃあ出発しましょう!」
俺のかけ声とともに、獣人や兵士が歩き出した。
人数が多すぎると、魔動タンクたちを刺激し戦闘になってしまうとのことで、全部で十五人ほど。
兵士はユイさんが信頼できるものを選出してくれた。
魔動タンクを倒すための爆弾は大量にあまっているので、人数さえそろえば戦闘も可能かもしれないが、まずは様子を見るつもりだ。




