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68. 食事を振る舞う

 『お米』の食べ方の披露も()ね、広場に集まった村人にお粥を作ることになった。


 塩で軽く味をつけたもの、だし汁などを使った味の濃いものを作る予定だ。


「……でも、お粥だけだと少し寂しいんですよね」


 そんな俺の独り言に答えてくれたのは、ユイさんだった。


「それなら、野営のときに作っていた『お好み焼き』あたりを作ってみては……?」


 ……好まれるかはわからないが、珍しいし良いかもしれない。


 お粥と一緒に食べるものなのかはわからないけれど。


「そうですね。調味料や『けずりぶし』は『倉庫』に入っている物がありますし、他の材料も村人達からもらったものがありますから作れます」


 広場で挨拶をしたときに「領主さまへ」と彼らから鳥の魔物の卵などをもらっていた。


 献上品ということになるが、彼らへのプレゼントに使っても良いだろう。一口味見をする程度の量になると思うが。


「じゃあ、料理は――」

「私が作ります!」


 手を挙げるユイさん。


「作り方も覚えましたので!」


 前に作ったときに覚えたのかな。優秀な彼女が言うのならば、大丈夫だろう。


「わかりました。では、お願いします。俺はお粥を作りますんで」


「わたしも手伝うーっ!」

「きゅっ!」


「じゃあ、材料とか調味料、調理道具なんかを『倉庫』から出してくれるかな?」


「わかったー!」

「きゅっ!」


 そうイェタにお願いして、野外で料理を作った。


 獣人達も村人と一緒に水を汲んできてくれたり、料理の手伝いをしてくれ、ユイさんも、レシピからいくつか材料を抜いたようだが、お好み焼きを問題なく作ったようだ。


「おいしそうな匂いですね」

「ふっふっふ、この料理の真骨頂はここからなのです……」


 村人に答えたユイさんが、できた大きめの『お好み焼き』に『けずりぶし』をかけたのだが……


「なっ、なんですか、その上に乗せたものは!」

「うにょうにょと動いています!」


 お好み焼きの上にかけた、踊る『けずりぶし』にじゃっかん引き気味の村人さん達。


「お好み焼きっていうんですよーっ!」


 その反応にユイさんはご機嫌な様子だ。


「おいしいよーっ!」

「きゅっ!」


 パクッとそれを食べたイェタを見て、村の子供達が、彼らにお好み焼きを取り分けるユイさんに近づく。


 えいっと思い切って食べる様子の彼ら。


「本当だ……」

「おいしい!」


 半信半疑で村の大人達も近づいて……


「おおっ、たしかに」

「カリカリしていて、食べたことのない味です」


 彼らと一緒になって俺も食べてみたが、良い味だった。


 まあ、お粥の作り方の披露会のはずが、主役をお好み焼きに奪われてしまった感じだが、喜ばれたようなので良いんじゃないかと思っている。


「いやーっ、せっかく作り方を覚えたので、誰かに披露したかったんですよ! ずっと機会とかがなくて!」


 良い顔のユイさん。


 『けずりぶし』が、うにょうにょ動く様子に驚くところを見たかったんだろう。獣人とかは何回も見ているので、まったく驚かないから。


 ちなみに作ったお粥は、だし汁などを使った味の濃いものは好評。味がほとんどないものもハムと一緒に出したら、まあまあ好評だった。

 後者はハムへの評価の気がしないでもない。


 あとは適当に具材を入れたり味を変えたりして、自分たちの好きなように食べてくれるんじゃないかと思っている。


「領主さまに料理をさせてしまい、申し訳ありません」


 村長さんに謝られたが、自分でやったことだから。


 そんな村人たちに別れの挨拶をし、ついでに村の付近を視察代わりに見回り。


 ウニに、トカゲの魔物のような強い魔物はもうおらず、ウサギ型や小鳥型などの弱い魔物しかいないことを確認してもらってから帰路についた。


 念のため、城からここまで案内をしてくれた兵士も全員置いてきて、付近の見回りを頼んだけれど。


「結局、あの村を『城下町』にできるようにはなったのかな?」


 周囲にはユイさんと獣人達だけの今、気になっていたことを聞いてみる。


 『繁栄値』が上昇し能力が強化されたため、あの村も『城下町』に指定できるようになっていた。そのためには俺が、あの村を一度訪れる必要があったのだが……


「村の近くまで行ったとき、城下町にできるようになったってメッセージが出てたよーっ!」


 おおっ、そうなのか。


「今はポイントが足りないけど、ポイントさえあれば、もう『城下町』に指定できるよっ!」


「イェタ様が、お城の外にいても、『城下町』の指定などはできるんですね」


「うん! そうみたい!」


 と、ユイさんにうなずくイェタ。


「あと、『城下町』に指定すると、村が魔物とかに攻撃されそうなときもわかるようになって、バリアも張れるようになるとも書いてあるーっ!」


 おおっ。


 村から離れたところにいても、村が攻撃されそうなことがわかるとか。便利である。


「安全のために、村は『城下町』に指定しておきたいな」


 そのためにはポイントが足りないのだが……


「我々が、がんばりますぞ!」


「兵士達にも協力させますよ」


 そのことを相談したら、獣人のルマールさん、そしてユイさんが頼もしく言い切ってくれたんだ。

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