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67. 領内の村へ

 領内の村を『城下町』にするため、獣人たちと、そこへ移動している途中。


「ここら辺は、魔物が出ないと聞いていたのですが……」


「見事、出会っちゃいましたね」


 ユイさんの独り言に答える。


 敵は、馬ほどもある大きさのトカゲの魔物だが――


「パワー・スラッシュ!」


 武人風の獣人、ルマールさんの突き出した槍が、そいつの頭に刺さった。


 パーンと破裂する頭部。


「と、トーマ様っ? あの魔物、頭が吹き飛びましたよっ!?」


 うん……『つらぬく』とか、そんな感じじゃなく、頭を爆散させていた。


「……まあ、ポイントを使って取得した能力ですから」


『パワー・スラッシュ』は、五十ポイントを使って得た、『兵士』という職業の力だ。


「あと、『スラッシュ』も、『切る』とか、そんな感じのイメージだったのですが、普通に槍で突いて発動していたんですが……」


 ……そこらへんも、()を城下()にできるぐらいだからな。――気にしないことにしている!


「問題なく仕留めることができましたぞーっ!」


 ズリズリと魔物の死骸を引きずってくるルマールさん。


「ここら辺は魔物が出ないという話でしたが、村への道中、魔物を見つけることができてよかったですな!」


 死骸を手に入れたという意味でもそうだが、けっこう強い魔物だそうだから、村や町の人たちの安全を確保するという意味でも、見つけることができてよかった。


「この程度の魔物ならば私一人でも、どうにかなりそうです!」


 どのぐらいの強さか見てみたいということで、魔物に一人で立ち向かった彼。見た感じ、余裕で勝利していた。


「トーマーっ! 魔物、『倉庫』にしまって良いー!?」

「きゅっ!」


「もちろん、かまわないよ」


 そうイェタにうなずくと、彼女は「わーい」と喜びながら、死骸を『倉庫』にしまう。


 こんな風に途中、魔物を見つけたりして、村の近くまでたどり着いた。


「あれが目的地の村ですね! トーマ様が来訪されることは伝えていますから、出迎えの者達がいるようです」


 町から村へ、兵士か誰かを走らせて伝えたんだろう。


 ユイさんの言うとおり、魔物よけの石壁かな。その門のところに、十人ほどの村人がいた。村の代表者か。


 兵士の姿をした人物も六人か七人いるから、彼らが知らせてくれたのだろうか。村に常駐している兵士かもしれないが。


 彼らのところへと向かう。


「新領主のトーマ様です」


 挨拶の後、一緒についてきてくれていた町の兵士が紹介してくれる。


「お噂はうかがっております!」


 村長だと言っていた中年の男性がキラキラした目で、こちらを見る。


「我々のために川を作ってくださったとか! とても助かっております!」


 川といっても、そんな大きくはないのだが、役に立っているようだ。良かった。


「本日は、食料を届けにきました」


「ありがとうございます! 食料も不足していたのです!」


 日照りが続いていたらしいからな。大地も乾燥しきっている。村で育てている作物も枯れたものは多いだろう。


「食料を保存してある場所まで案内していただけますか?」


 その俺の言葉に「はい!」とうなずく。


 食料が見えないことに疑問は持っていないようだから、多分『倉庫』の能力も噂として伝わっているんだろう。


「こちらです!」


 (くら)のような場所に案内された。

 食料は、あそこに出せば良いかな……


「あの空いているスペースに麦などを出して大丈夫でしょうか?」


「はい!」


 念のため、そんな確認をして、小麦や米、調味料などを『倉庫』から出していく。


「おおっ!」


 何もないところから出てくるように見える物資たちに、村長さんや村人達が驚きの声をあげる。最初はみんな驚くな……


 俺はイェタにも手伝ってもらい、食料を、一個一個その場に並べていったんだ。


「こちらの小さな子も、領主様と同じ力が使えるのですな!」

「トーマ様の弟子ですから!」


「弟子のイェタだよー!」

「きゅーっ!」


 ユイさんの言葉の後に、イェタもそんなアピールをしている。


 彼女は、事前にお願いしていた通り、俺の速度にあわせて『倉庫』から物を出してくれたようだ。ちゃんと弟子に見える。


「あの……ところで、領主様、こちらの食べ物は……?」


 一通りの食料を出し、一息つく俺に、話しかけてきたのは女性だ。たしか村長の奥さんだったか。


「お米という食料ですね。あとで食べ方も伝えようと思っていたんですが、どこか料理をできるところはありませんか?」


 そんな彼女への問いかけに、別の提案が来る。


「それならば、どうせなら広場で作って、皆に振舞(ふるま)ってはどうでしょう!」


 ルマールさんだ。


 それも良いかもしれないな……


 そう思った俺は、「そうですね」と、彼の言葉にうなずいた。


『水源』からの小川が流れているから、水もある。一番簡単に作れるお粥でいいだろう。


 皆でゾロゾロと(くら)の外に出た。


「……ちなみに、何か他に困っていることがあったら、この機会に言ってくださいね」


 村の広場に移動しながら、せっかくなので、村長にそんなことを聞いてみる。

 枯れた作物をどうにかしてくれと言われても困るが……


「いえ、町に伝えて、大体の答えをもらっておりますので」


 首を横に振る村長。


 町にいる役人さんが、ちゃんと仕事をしてくれているのか。優秀だ。


「あっ、ただ……」


「……何かあったんですか?」


「はい。村の子供の話なので真偽はわからないのですが、近くでオオトカゲの魔物を見たとか……」


 おおっ。それって、ルマールさんが倒していたヤツか?


「もしかして、これじゃないですかね」


 この村に来る途中見つけたトカゲの魔物を『倉庫』から出す。


「……!? これを、どこで!」


「村のそばですね」


「なんとっ……」


 驚く村長。村人達からは、「頭が砕け散っている」とか「こりゃ、すごい。爆発の魔法で倒したのか?」みたいな声が漏れ聞こえているのだが……


 ――これ、槍で刺したんだよね。


 説明すると混乱を招きそうなので言わないけど。


「本当にオオトカゲの魔物がいたとは……!」


 驚いた村長。そのあと村長や、他の村人からも感謝の言葉を述べられた。


 他にもいないか調べる必要はあるだろうが、どうやら村人などには被害がないうちに仕留めることができたようだ。よかった。

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