66. 繁栄値の上昇
施設、『大浴場』を町に設置したりした、翌朝――
「トーマーっ! 『繁栄値』が十二から二十五になってるーっ!」
「きゅっ! きゅーっ!」
起きた俺に、イェタが、そんな報告をしてくれた。ウニも一緒に喜んでいる。
『繁栄値』というのは、カルアスの町を『城下町』にしたときに見れるようになったものだ。
「たしか、町の人の忠誠心や幸福度、町の繁栄具合なんかで数字が変わるんだっけ」
その言葉にうなずくイェタ。
昨日は『水源』なんかを作って、日照りが続いていた町に、水を供給している。
そのせいで、幸福度などが上がったのだろう。
「なんか、新しい村とかを『城下町』に指定できるよーっ!」
「きゅーっ!」
村だけど『城下町』……城下村ってところか。
『繁栄値』が上がることで能力が増えたり、強化されたりするらしい。
「近くの村を『城下町』に指定できるようになったのかな?」
「たぶん、そう! 城主が一度村に行ったりする必要とかがあるって!」
城主の俺が、『城下町』にしたい村に行く必要があるらしい。
それ以外にも何かやらなければいけないことがあるのかもしれないけれど。
「とりあえず、村にいけるかユイさんに相談してみるか……」
「うん! わかった! よんでくるーっ!」
イェタがウニを持って、寝室から外に走って行った。
あっと……、このままだと、マズいな。
まだ起きたばかりで、身支度とか終えてない。
服を着替えている最中だった。
「急いで着替えを終えるか……」
そう判断し、バッサバッサと服を脱いでいると、外から声が聞こえてくる。
「また、新しい能力を取得したのか」
「うん! 『城下町』を増やせるよ!」
「きゅっ!」
「すごいですねー」
ドワーフの少女ジュナン、イェタ、ユイさんなどの声だ。
ユイさんを探す途中で、ジュナンを見つけたのだろうか。
ノックされる扉。
「トーマ様! イェタ様からお話しがあると聞いたのですが」
「すいません! ちょっと待ってもらえますか!」
今、裸だから! 上半身も下半身も、裸だから!
「どうしたんでしょうね?」
「着替え中とかじゃないかな? えいっ!」
ジュナンのかけ声とともにガチャっと開かれる扉。
彼女達と目が会って……
「当たったな!」
カラッとした笑顔で満足そうにうなずいたジュナンは、「言いつけ通り、外で待ってるぜ!」と言って、また扉を閉めていた。
うん……朝っぱらから、ひどい逆セクハラを受けた気がする……
「お着替え中のところ、すみませんでした」
着替え終わった俺に、ユイさんが謝ってくれる。
ユイさんは、何にも悪くないよ。むしろ、変なものを見せてごめんって思うよ。
「見事に全裸だったな!」
ジュナンは反省して欲しいんだけど。
「それで、なんか新しい能力が手に入ったんだって?」
まったく気にしてないし……
「なんか、新しく、城下町を増やせるようになったよーっ! ここら辺には、村が一つ! 集落が一つあるけど、どっちも城下町にできるってーっ!」
「きゅーっ!」
「ほー。一つは、この領地にある村かな?」
「もう一つは、隣国の村かもしれませんね」
ジュナンとユイさんの予想。
領地にある村は一つだけだから、もう一つは隣国の村と予想したのだろう。
「村を『城下町』に指定するには、一度、その場所を俺が訪ねなければいけないみたいで……」
「わかりました。村の者たちに新しい領主様の顔を見せる必要もありますしね。トーマ様が、その村に行けるよう手配をいたしましょう」
話が早い。
「朝食のあとで良いので頼みます」
ユイさんに頭を下げた。
そして朝食を済ませ、村へ行く準備も整った――
「トーマ殿が視察に行くという村は、あちらの方角ですか」
城の外。武人風の獣人、ルマールさんが村の方向を指差す。
「そうみたいですね」
ユイさんが、うなずく。
案内をしてくれる兵士たちの一人に聞いていたようだ。
村の兵士に用事もあるとのことだが、彼女も顔見せのため村についてきてもらう。
ルマールさんなどの獣人も、半分ほどを連れて行く。
獣人も武装している集団だから、挨拶をしておいたほうが良いと判断した。
魔物狩りのときとかに、ばったりと村人と出会い、怖がらせてしまっても困るから。
「楽しみだねーっ!」
「きゅっ!」
村にはイェタとウニにも来てもらう。
『倉庫』に入っていた食料を村へ供給する予定なのだが、その量が多い。
魔力が少ない俺だと、全部出し切るのは大変なので、イェタに協力してもらう予定だった。
「魔物も狩れると良いですなー!」
ルマールさんは期待しているが、魔物と出会う可能性は少ないはず。
町や村の近くはあまり強い魔物が近づかない場所になっているそうだし、兵士も定期的に巡回しているそうだから。
そんなことを思いながら、そのメンバーで城を出発した。




