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65. 町の壁

「それーっ!」


 イェタのかけ声にあわせ、ズゴゴゴゴ、と音を立てて『城壁』が高くなった。


「それでは、あとは『大浴場』を町につくるだけですね」


 領地経営などの補佐をしてくれている、ユイさん。彼女の言う『大浴場』は、カルアスの町にも設置することができる施設だ。


 兵士たちの傷を癒すため、作りたいと思っている。


「町に行くのですか。我らからも、護衛を出しましょう!」


 武人風の老人、ルマールさんが、そんな提案をしてくれる。


 イェタや、多分ユイさんも一緒だから、護衛がいたほうが安全だ。


「すみません、お願いします。あっ、あと、魔物の解体に使った道具などの手入れもお願いできますか?」


「お安いごようですぞ!」


 胸を叩くルマールさん。彼に、もう一度お礼を言う。


 そうしてイェタやユイさん、護衛の獣人たち、従魔のウニも一緒に、町へと向かった。


 ザックザックと荒地の土を踏みながら町へ向かう途中、イェタから説明の続きを聞く。


「あと、なんか『城下町』の壁も動かせるようになったりとか、いくつか能力が増えてるみたいだよーっ!」


 『城壁』を作ったとき、新しく解放された能力か? まだ、あったらしい。


 町を囲む壁を広くしたり、せまくしたりできるとか。


「それは便利ですね……」


 ユイさんが反応している。


「使うのは、ちょっと大変みたいだけど……。トーマが」


 俺が……?


「私が魔力を町の壁に充填したあと、トーマが壁を押すことで、町を囲む壁を広げたりせまくしたりすることができるんだって!」


「おおっ! トーマ様が押すと、町の壁が動くのですか! 町の住民の前でやったら、驚くでしょうね! ぜひ、やりましょう!」


 楽しそうな、ユイさん。


「壁は、今あるところから遠くに動かすほど重くなるみたいで……『筋力の限界にチャレンジだ!』って書いてあるよっ!」


 あんまりチャレンジしたくないぞ……


「きゅっ!」


 そんなことを思いながら歩いていると、ウニが何かに気づいた。


「町の兵士さんだよーっ!」


 イェタが通訳してくれる。

 町の方向から、兵士たちがやってきていた。


 ゴーグ兵士長もいて、兵士数人で荷車を引いている。

 魔物の死骸を載せているようだ。


 ゴーグ兵士長は、鉱山のあたりで、魔物が残っていないかパトロールをしていたはず。

 そのパトロール中に倒した死骸を、持ってきてくれたのだろう。


「城壁が、ずいぶんと厚く、高くなっていますな!」


 近くに来たゴーグ兵士長たち。


 イェタの城を見ながら、彼が驚いている。


「あの『城壁』は、見た目以上に、防御力が高いんですよ!」


「おおっ! 立派な城壁ですが、それ以上の力を持っているのですか!」


 胸を張るユイさんに、彼が目をきらめかせた。


「ちなみに、町の壁も、壊れていたところなどが修繕されていたようなのですが……、あれもトーマ様のお力なのですか?」


 それは知らないが……


「『城下町』の壁も、自動で修復されるようになっているよーっ! 自動修復の機能は切ることができるから、今ある壁を打ち壊して、新しい壁を作ることもできるーっ!」


 ゴーグ兵士長に、答えるイェタ。


 多分、これも『城壁』を作ったときに得た、能力なのだろう。


「スゴい! いつの間に、そんな機能を!」


 俺も今知りました……


「他の機能もつけたのですか?」


「バリア……見えない透明の壁を、町の壁の上に出せるようにもなっていますね」


 他にもあるかもしれないが、知らないからな。


 そんなことを思いながらも、彼らが持ってきてくれた魔物の死骸を見る。


「パトロールで倒した魔物を、持ってきてくれたんですか?」


「ええっ! ゴブリン二体とトカゲの魔物一体。鉱山付近で倒し、もってまいりました!」


 ありがたい。


「兵たちは皆、無事でしたか?」


「はいっ! トカゲに噛まれた兵士がおりましたが……。あの魔物は、牙に遅効性の毒を持つのです」


「それは、大丈夫なのですか……?」


「麻痺の効果もあるため、少人数で戦うと危険ですが、大人数で戦えば問題ありません!」


 複数人で戦えば、麻痺しても他の人に助けてもらえるからかな?


「トーマ様からいただいていた霊薬などが役に立ちました!」


 多分、解毒のための霊薬が役に立ったんだろう。


「みなが無事で良かったです……。魔物の死骸も、いただきますね」


「はい!」


 死骸に近づくと、俺は、それを『倉庫』にしまった。


「トーマ様は、何か用事があって、町に向かっていたんでしょうか?」


 その質問に、うなずく。


「これから『大浴場』という施設を、兵士たちのために、町に作りたいと思っていて……」


「『大浴場』ですか?」


「ええ。複数人で使う大きなお風呂で……、そのお湯に入ると怪我や体力を回復してくれるような不思議な力があるんです」


「おおっ! そんな不可思議な建物を、トーマ様のお力で作ってくださるのですか!」


 うん。俺の力じゃなくて、イェタの力だけど。


 人目もあるから、『支城』を作ったときと同じやり方で、『大浴場』を作ることになるかもしれないが。


 イェタがポイントを使い、最後の仕上げの部分……魔力を使って施設を出現させる部分を、俺が担当するようなやり方だ。


「場所は、どのあたりに作ってくださる予定なのでしょうか!」


 ゴーグ兵士長の質問だが、それは知らなかった。ユイさんまかせだったから……


「候補地は、いくつか用意していました」


 彼女を見ると、代わりに答えてくれる。


「そうですか……。町の住民たちにも、その浴場を貸せると良いと思うのですが……」


 魔物と戦ったりする職業の者には便利だろう。


「彼らにも施設を開放するかはわかりませんが……、その位置ですと候補地は一つにしぼられますね」


 ゴーグ兵士長に答えていたユイさんが、俺を見る。


「候補地のどこでも、利便性にあまり変わりはないと思いますが……」


 そうなのか……。それなら、そこでもいいかな。


「わかりました。では、そこに『大浴場』を設置しましょう」


 そしてゴーグ兵士長を見る。


「使いにくかったりしたら、言ってくださいね。簡単に場所を移動することもできますから」


 イェタの施設だから、場所の移動も楽にできるはず。


 ポイントさえ獲得できれば、複数の『大浴場』を町に設置することもできるはずで……。――こちらは、個数制限とかがあるかもしれないが。


「ありがとうございます!」


 俺の言葉に、お礼を言うゴーグ兵士長。


 彼は、町の住民のことにも気をかけてくれる、そんな兵士長のようだ。


 そんなやり取りを終え、町に移動。今日作る最後の施設である大浴場を作ったんだ。

ファミ通文庫様より書籍版の『俺、城を育てる』が発売されています。機会がありましたら、中のイラストなど見ていただけたら嬉しいですね。


また、この場を借りて、いつも読んでくださっていることに感謝を伝えたいです。ありがとうございます!

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