64. 城壁
ジュナンやユイさん、獣人たちと一緒の城の外。そこで魔物のポイント化を終えた。
今あるポイントは八百七十。
「とりあえず『魔導工房』は作れそうだけど。他に、作ったほうがいい施設はあるかな?」
その質問に、イェタが今作れる施設をあげていく。
「今作れるのは『薬草園』に『謁見室』『宝物庫』! あと『錬金室』や『魔導工房』とか! 『倉庫』のレベルも二にできるよ!」
うん、『薬草園』は、いつか作りたいが。
そんなことを考えていると、ユイさんに、声をかけられる。
「あの……イェタ様から聞いたのですが、『倉庫』のレベルを上げると、誰が『倉庫』を使えるのかなど、細かく設定できるようになるとか」
「そうみたいですね」
うなずく。
「だとしたら、この『倉庫』のレベルというのも、上げておいたほうが良いのではないでしょうか」
そう言う彼女。
「町の兵士を『城の住人』にしていますので……」
ああ、なるほど。
確かに、『倉庫』の部屋にある黒いオーブに触れさえすれば、『城の住人』ならば誰でもアイテムなどの取り出しができる。
彼らが盗みを働くとは思いたくないが、今の状態だと、ちょっと心配か。
「他にも、設置できる施設はあったよな?」
ジュナンの、イェタへの質問。
「うん! 他にも『宿舎』『兵舎』『大浴場』も設置できるよーっ!」
これらの施設は、城の外や、カルアスの町に設置できるものだ。
設置できる数に制限はあるかもしれないが、複数設置できる様子。
「あっ、『大浴場』は良いかもしれませんね」
ユイさんは、お風呂の設置に積極的なようだ。
「町に作れば、ケガをした兵士達を癒すことができます!」
兵士のために、作りたいらしい。
傷や疲れを癒す不思議なお湯だからな……
「彼らには薬草なども支給しているのですが、怪我をガマンしてしまう方がいるので」
もったいない精神が発揮されるのか?
そういう人のために、作っておいたほうが良いかもしれない。
「あと『魔動投石機』『魔動大型連弩』『魔動速射型連弩』『城壁』も作れるよーっ! 『城壁』を設置すると、もっとお城っぽくなるっ!」
イェタは『城壁』が欲しい様子。
「『城壁』を設置すると、カルアスの町……『城下町』を守るバリアも強くなる! 町にバリアを出していられる時間も長くなるって!」
へー。『城』の防壁の強さが、『城下町』のほうにも反映されるらしい。
「今は五、六時間で切れちゃうけど、それが倍以上の時間、バリアを出していられるようになるみたい!」
それに感心したような声を上げたのはジュナンだ。
「おー、半日以上もつのか。呪気でおかしくなると、大量に増殖する魔物とかがいるらしいからな。そのぐらいの時間、町を守ることができると良さそうだ」
呪気についての情報は、ダークエルフ達から聞いたのだろう。
この土地は、もともと『呪気』を発生させるような土地だったらしいから、そんなことが起こってもおかしくはない。
一応、その『呪気』を『魔力』に変換して、無害化するような力もあったみたいだが、今はどうなっているのかわからないから……
「じゃあ、欲しいのは『魔導工房』。あと『倉庫』のレベルを二に上げて……、町に『大浴場』を設置。『石壁』も『城壁』にするって感じかな」
『薬草園』も欲しいが、薬草は、今のところ足りているから大丈夫だろう。
手持ちのポイントは八百七十。このぐらいなら、全部作れるかな……?
「とりあえず、『魔導工房』から作っていこうか」
「わかったーっ!」
イェタに先導されて、城の中へ。
「えいっ!」
空き室に『魔導工房』ができた。
「五百ポイント使ったーっ! 八百七十ポイントが、三百七十ポイントになったよーっ!」
……なんか一気に手持ちのポイントがなくなってしまった気が。
「次は『倉庫』のレベルを上げましょうか」
ユイさんが、近くにあった『倉庫』を指す。
こちらを見るイェタに「頼むよ」と声をかける。
「わかったー!」
彼女が指差した『倉庫』がピカッと光った。
「セキュリティー対策が万全になったよーっ!」
見た目はあまり変わっていない。
黒いオーブに、それを囲むように描かれた魔法陣があるいつもの『倉庫』で、魔法陣が少し複雑になったぐらいか。
「百ポイント使ったから、残り二百七十ポイントだよー!」
「あとは『大浴場』と『城壁』を作るんでしたっけ。ポイントは足りますか?」
ユイさんの質問に答えるイェタ。
「『大浴場』は百ポイントで! 『城壁』は百五十ポイントで設置できるよーっ!」
両方足して二百五十だから、二百七十ポイントあれば、どちらも作れそう。
「では、先に『城壁』を設置してから、次に町に『大浴場』を設置しに移動すれば良いでしょうか」
まあ、町に『大浴場』を作ってから、城に戻って『城壁』を設置しても良さそうだが、イェタを待たせるのも悪い。
ユイさんの言った順番で、設置していこう。
「それじゃあイェタ、『石壁』を『城壁』にしてくれるかな?」
「わーいっ!」
喜んだイェタ。一緒に外へと出て『城壁』を作った。
「壁が高くなったーっ!」
俺の首ほどの高さだった『石壁』が、三メートルぐらいになった。
「壁の厚さも、立派みたいですね……」
門の辺りを調べて、そう判断したらしいユイさんの言葉。
『城壁』の上へと昇るための階段があり、壁の上を歩けるようにもなっている様子。
「バリアも強くなって、『城壁』の高さなんかも変えられるようになったよーっ!」
イェタが説明する。
「『城壁』の高さを低くしても、バリアはそのまま残るから、防衛能力はそのままに、景観を確保できるって書いてあるーっ!」
そして彼女は俺を見る。
「トーマーっ! 『城壁』、一番高くしても良いっ!? そのほうが、カッコイイっ!」
……メッセージだと、『城壁』は、高さを低くして使うものらしいが、イェタは、その反対をご希望のよう。
一応、彼女の造り主である黒神サク様のメッセージのはずなのだが……。……まあ、でも、イェタが望むのなら、そちらを選ぶしかないだろう。
「良いんじゃないかな」
その返答にイェタが喜びの声を上げ、『城壁』は高くすることが決まったのだ。




