63. 素材採取
『暴れ大岩グマ』などを倒した後、鉱山の周囲をパトロール。追加の魔物を倒した。
さらなるパトロールなどをするらしい兵士たちと別れ、俺や獣人たちは城へと帰ってきた。
「おおっ、何かおっきいのがいる!」
出迎えてくれたイェタが驚いている。
近くには、ジュナンの姿やユイさん。獣人の子ども……ルマールさんのお孫さんの姿などもある。
イェタが驚いたのは、持って帰った魔物の死骸を見たからだ。
「これは『暴れ大岩グマ』っていう魔物らしいよ」
体全体が岩で覆われている、小屋ほどもある大きな魔物。
獣人たちが引っ張る荷車に載せて運んできた。『倉庫』に入らなかったから。
『倉庫』を使うには魔力が必要で、俺はあまり魔力が多いほうじゃない。
この魔物の大きさだと魔力が足りず、『倉庫』に入れることができなかった。
イェタの近くにいたジュナンも、驚いたように死骸を見ている。
「体を覆っている岩が、ところどころ光っているんだけど。あれって、もしかしてリュカ鉱石かな?」
彼女は、霊薬と一緒に、何かの道具を持っている。
外で霊薬の試験でもしていたのだろうか。
彼女の疑問に、うなずく。
「そうみたいだね。坑道の中で、その希少鉱石を食べて体に取り込んだらしい」
廃鉱になっていた場所らしいが、鉱石も、ちょろっと残っていた様子。
「おおっ、スゴい! 保存庫の修理の助けになるよ!」
喜んでいた。
ジュナンには、カルアスの町にあった保存庫という設備の修理を頼んである。
魔法の力により、食料などを腐らせないように保つ設備。その修理にリュカ鉱石が必要なんだとか。
「魔物から、鉱石の採取をしたいんだけど……」
ある程度なら、死骸から、素材を採取してもポイント化はできるはず。
「わかった、私も一緒にやるよ! この魔物は初めて見る魔物だから、体を観察するのも楽しみだ!」
ジュナンは素材採取のときに、ついでに体の観察をするつもりなんだろう。
あまり急ぐ必要もないから、問題ない。
「採取に必要そうな道具は……、ここら辺かな」
道具類を『倉庫』から取り出す。
「あとは、水も欲しいかな……」
解体のときに、どうしても汚れが出る。
『水源』という、水が流れ出ている施設がある。しかし、あの小川は、城の外に流れ出ているものだ。
領地の人が使用するかもしれない水だから、血などを混ぜたくない。この魔物を倒すのに、毒も使ったしな。
「……『兵舎』の近くに移動しようか」
あっちにも蛇口という、水を供給する魔道具があった。
暴れ大岩グマの死骸を獣人たちに運んでもらい、ジュナンとともに作業を開始する。使った毒は、人への効果は少ない物だったが、皆に気をつけてもらうよう注意し、毒を中和する霊薬なども使う。
そうして、ルマールさんなどが手伝ってくれたことや、ジュナンの器用な手先に助けられ、どうにか作業が終わった。
ジュナンが持ってきてくれた、城の『鍛冶工房』などから持ってきた道具類が、すごく役立ったな。
結局、全部の石を、暴れ大岩グマから剥ぎ取ってしまったのだが……
「これ、ポイント化は大丈夫そうかな?」
あまり素材を採りすぎてしまうと、ポイント化ができないことがあるのだけれど。
「たぶん、だいじょうぶーっ!」
頼もしいイェタの言葉。
「ポイント化して、良いー?」
「人目も、大丈夫そうか……」
ちょうど、兵舎が邪魔で、町の方向からは俺たちが何をしているかはわからない位置だ。その上、石壁もある。
仮に誰かに見られていたとしても、『秘術使い』である俺の弟子ということになっているイェタだ。
不思議なことをするのに、何の問題もなかった。
俺よりも、弟子のほうが優秀ということに気がつかれるのは避けたいが……
「お願いするよ!」
「やったー!」
イェタが、ポンと死骸にさわる。それがキラキラと輝く光の粒子になった。
小屋ぐらいの大きさの死骸が、一瞬で消えた。
「百ポイントになったーっ!」
オーガは四十ポイントだった。その二倍以上か……
「ちなみに、六本足の馬ぐらいあるトカゲの魔物がいたんだけど、あのポイントはどのぐらいだったのかな?」
途中、『倉庫』からなくなっていた。多分、ポイント化したんだろうなーと思っているのだが。
「トカゲの魔物は二十ポイントだったよーっ!」
なるほど。ゴブリン二体分か。
たしか鉱山の戦闘で倒したのが、さっきの暴れ大岩グマ……これが百ポイント。
他に、十ポイントのゴブリンが四十四体。二十ポイントのトカゲの魔物が五体。五ポイントの鹿やイノシシの魔物などが六体。
後、周囲をパトロールしたときに、トカゲの魔物四体と、ゴブリン五体を追加で『倉庫』に入れている。
けっこう大猟だが……
「ポイントは、どのぐらいになったのかな?」
「とってきてくれた魔物で、ちょうど八百ポイント! 使っていなかった七十ポイントもあったから、合計八百七十のポイントがあるよーっ!」
おう……。鉱山にいた魔物だけで八百ポイントか。なかなかだ。
「これなら『魔導工房』は作れそうか」
『魔導工房』は五百ポイントの施設だ。
「『城壁』も作れる!?」
キラキラした目のイェタ。
やっぱり、そういう戦闘用の施設を欲しがるのね。
「多分……」
必要な施設を作ったあまりのポイントで作れると良いんだけど。
『魔導工房』以外にも、必要な施設があれば作るから……。ちょっと不安になった。




