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45. 地下大空洞へ

 森の中――


 ハイ・リッチの封印された場所に移動するため、馬の倍ほどの大きさがあるトカゲに乗り、移動していた。


 このハイ・リッチが持つ『転移石』を奪うことができれば、傭兵たちから逃げるための……イェタの城を転移させるための施設を作れるようになる。


 右側を走るトカゲにはエルナーザさんが乗っていて、新しく飛んできた従魔の鳥から、誰かからの伝言を取得していた。


 その彼女が、こちらを見る。


「巫女様からの連絡だ。現在、あの城を転移できそうな広場を作成中とのこと。もう九割がた終わっているとのことだぞ」


「そうですか……。ホッとしました」


 城を転移させる場所は、頭を痛めていたことだからな。ある程度、障害物がない場所が必要だそうだから。


 草原などに転移すると目立つため、森の中に良い場所があれば、そこに転移させたいと思っていた。


 一度使うと再使用に数年の時間がかかり、さらに距離の制限もあるとか。転移場所は慎重に選ぶ必要があった。


「よし、行け!」


 エルナーザさんが、従魔の鳥を空中に放つ。

 バサバサと、そいつが飛んで行った先――木々の間から、巨樹が見えた。


「あの木は……」


「聖樹様だな。客人なので、今のトーマ君にも姿が見える」


 首をかしげていると、エルナーザさんが説明してくれる。


「前に一度見ていますが、不思議な存在感がある木ですよねー」


 左を走るトカゲに乗る『弓兵』の青年、ヨシュアくんが、そんな感想を漏らしていた。


「あの木のもとに、我らの集落がある。ハイ・リッチが封印されているのは、そのさらに下。地下にある巨大な空洞だ。聖樹さまを狙って森に侵入してきたヤツを、その大空洞に封じたのだとか」


 エルナーザさんが、トカゲに向かう場所を指示する。


「その大空洞につながる洞窟が、このすぐ近くにあるから、今からそちらに向かう。私の仲間達が、封印を解く準備をススメている……。我らの戦士たちも、戦いの用意をして待っているぞ!」


「ダークエルフ達の戦士に協力していただけるのは、ありがたいですね」


 ぺこりと頭を下げた。


 今回、イェタの城から戦いのために出てきたのは、三人だけだ。俺とヨシュア君、あと獣人の女性が一人。

 彼女は、手伝いを申し出てくれた獣人の一人だ。武器や薬の用意をしたりとか、そういう後方支援をしてもらう予定だ。


 他の者達は、全員、城に残っている。


 イェタは、ダークエルフの従魔が運んでくる死骸をポイント化しているはず……

 数千とかそのぐらいのポイントが、城転移のための施設に必要なようだから、死骸を運ぶだけでも時間がかかる。


 ただ、最終的にはポイントはあまる感じだったので、『宝物庫』の他、戦闘に関連する施設も作っていた。

 俺の『城主』としての力を高める施設、『謁見室』だ。これで戦いが少しでも楽になってくれればいいんだが。


 ドワーフの職人、ジュナンも城だ。例の魔動タンクを倒すときに使った爆弾などの作成をしている。

 時々『倉庫』を意識すると、彼女が入れたのであろう、そのアイテムたちが増えていっていた。


 ――爆弾のほうはアンデッドにも効くという話だから、今回のハイ・リッチにも使えるだろう。あれもアンデッドだから。


 ルマールさんは、人との戦闘に忌避感がなかったようなので城に残ってもらった。

 可能性はあまりないが、俺のいないときに、例の貴族が攻めてきたら彼に対処してもらうことになる。


「トーマくん、洞窟が見えてきたぞ」


 エルナーザさんの言葉。

 そこには、槍や弓などを持った、十人ほどのダークエルフ達の姿も見えた。


「……なんか、バタバタしているな」


 不思議そうに首をかしげる、エルナーザさん。


 トカゲから降りた俺達に、彼らが走りよってきた。


「エルナーザ、連絡は届いているか!?」


「……巫女様からの連絡なら来ているが」


「違う! 例の傭兵たちを見張りにいった仲間からのほうだ。ヤツら進軍速度が異様に速いらしい」


「どういうことだ?」


「多分、スカルシア家の初代が使っていた行軍速度を高める魔法を使っているんじゃないかって話なんだが」


 エルナーザさんの疑問に答える男。


「三代目だか四代目がボンクラで失伝したって聞いてたんだが、いつの間にか復活させていたらしい!」


 男が、そんな情報も伝える。


「あいつら、我らダークエルフが森の中を移動するのに使う魔法も使っているようだぞ! こっちは我らの裏切り者が関わっているんだろう。兵達の中に、アイツはいなさそうだが……」


「足止めは?」


 エルナーザさんの問いに、首を振る男。


「一応やっているみたいだ。ただ、ヤツら、有能な魔法使いを連れているみたいでな」


 ダークエルフ達が得意とする、魔法を使ったやり方が、通用しにくいのか……


「あの城の場所が、もうちょっと我らの土地に寄っていたら、難癖をつけて行軍を止めたりもできたんだがなー」


 そんな愚痴を言っている他のダークエルフ。


「城の人よけの結界も、少し細工をしたんだが、あいつにバレている可能性があるんだよな……」


 エルナーザさんも困った様子だ。


 洞窟竜との戦いのあと、城の場所がバレにくくなるよう、彼女に細工をしてもらっていた。

 それが裏切り者のダークエルフに伝わっている可能性があるみたいだ。


 ダークエルフの中に洗脳された人がいて、ある程度の情報が伝わってしまったんだったな。


 ダークエルフの男性に、俺は質問する。


「敵は、どのぐらいで『城』に到達しそうですか?」


「道のりの半分は踏破している」


 半分か……


「ハイ・リッチから転移石を奪う時間はあるが、城に戻る時間は無さそうか」


 そう、つぶやいたエルナーザさん。


「……一応、転移石を手に入れてしまえば、城に戻らなくても大丈夫ですけどね」


 彼女には知らせていたことだけど、念のため、説明を添える。


「奪った『転移石』を、その場で『宝物庫』に入れれば、もう城を転移させるための施設は作れるようになりますから」


 あとは城にいるイェタが、その『城転移』をするための施設を作れば終わりだ。

 イェタは、定期的に、転移石が入っていないかチェックしているはず。


 『城転移』はイェタでも俺でも使えるみたいだから、あとは適当な場所に城を転移させれば良い。

 時間が足りないときは、そのやり方をするつもりだったが。


「正直、もうちょっと時間的余裕は欲しかったですね……」


 うなずく、エルナーザさん。


「だが、良い武器がそろっている。戻る必要がないなら、予定通りに進めば余裕を持って終わるさ」


 ……といっても、予定外のことというのは、よく起こるからな。


「洞窟の先で、仲間がハイ・リッチの封印を解く作業をしているはずだ。向かおう」


 地下にあるという大空洞に、彼女の案内で向かったのだ。

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