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03. 魔物狩り

 ギルドの受付で、薬草の受け渡しを終えた翌日。


 俺は城に泊まるために必要そうな物品を、町で買い集めていた。

 森の中で何週間か狩りをするときに使うものと、だいたい同じだ。


「あとは……薬草図鑑なんかがあると便利かな……」


 薬草園には、体調不良の時などに便利な草がいっぱい生えていそうだし、どれがどういう薬草なのかわかると便利だろう。


 本屋に入る。薬草図鑑を探すと、一冊だけ見つかった。大銀貨七枚、七万エーナほど。絵がたくさんついているカラーの本は高い。


「……そういや、精霊についての本ってあんのかな」


 そう思って探してみる。

 城の精霊というのは聞いたことがなかった。なので情報があればと思ったのだが……


「……無さそうだな」


 あきらめて、城の精霊――イェタへのお土産を選ぶことにする。


 絵本や大人が読む恋物語あたりを選ぶか。

 見た目は子供だが精霊だ。

 子供が喜ぶものと大人の女性が喜ぶもの、どちらを好むかわからない。


 絵本は一冊が()銀貨一枚、一万エーナほど。

 恋物語の本は一冊が銀貨三枚、三千エーナほどだった。

 タイトルを知っているものを手に取り、数冊購入する。


 次に雑貨屋に行き、(あめ)玉や色紙、リボン、アクセサリーなんかをイェタのために買った。


「こんなもんか……」


 あんまり買いすぎると、森で魔物に遭遇したときに邪魔だ。


(買ったお土産で、喜んでくれるものがあるといいんだけどな……)


 俺は宿にもどり、荷造りをし、町を出る。草原を進み、森に入った。

 襲ってきた狼の魔物などを討伐し、ゴブリンの群れからは隠れたりしつつ、城へと戻ってきた。


「トーマーっ!」


 ブンブンと手をふる幼い少女の姿。

 どうやらイェタは、城の入り口で俺の帰りを待ってくれていたらしい。

 手をふりかえし、彼女のもとへと歩いていく。


「ただいま。お土産も買ってきたよ」


 彼女は「おおっ!」と歓声を上げ、目をきらきらとさせていた。


「気に入ったものがあると嬉しいんだけど……落ち着ける場所に案内してくれるかな?」


「うん!」と元気よくうなずいたイェタに連れられ、俺は城の中に入ったのだ。


 清潔なベッドが置いてある部屋――、そこで俺は町から獲得した戦利品をイェタに披露する。

 高いアクセサリーも買ったんで喜んでくれるかなーと思ったんだが……


「これ、キラキラしているし甘いし、すごいねーっ!」


 そう喜んでいるのは、飴玉に対してだ。

 同じくキラキラしているアクセサリーには、まったく興味を示していなかった。

 色紙とリボンもあまり興味を示していなかったから、お菓子が好きなのかもしれない。


 本……特に絵本には興味を示していたから、次回のお土産はお菓子や本を中心にしてみようか。

 甘いもの、日持ちしそうなクッキーとかも良さそうだ。


「ねーねー、トーマ! これ読んでよ!」


 両手で絵本を掲げ、俺に見せてくるイェタ。

 さっき本を見てタイトルを読み上げていたから字は読めるはず。

 他人に読んでもらいたいのかもしれない。


「もちろんかまわないけど……、魔物は良いのかい?」


 理由はわからないが、彼女は魔物の死骸を(ほっ)していた。

 なので魔物狩りをしようかと考えていたんだが。


 俺の質問に考え込んでしまうイェタ。

 うーん、うーんと、うなっていたが結論が出たようだ。


「まずは絵本で!」


「……はい、わかりました」


 俺は彼女から絵本を受け取り、ひざの上によじ登ってきた彼女をそこに乗せたまま、絵本を読み聞かせることになった。


 そんなこんなで午後も過ぎたころ、俺は魔物狩りを開始する。


 ここに来るまでの途中、近くでゴブリンたち五体の群れを見ていたから、そいつらを狩るつもりだ。

 緑色小鬼とも呼ばれる人型の魔物……

 人を見ると殺そうと襲ってくるが、子供ほどの大きさで、そんなに強くない。


 さっきは荷物を持っていたため迂回したが、ほとんどの荷物を城に置いてきた今なら、問題なく倒せるはずだ。


 ついてきたがったイェタを城に残し、弓と剣を持ち、俺はゴブリンを見かけた森の場所までやってきていた。

 彼らの姿は、すでにここにはない。移動したのだろう。


 だが、あいつらは、近くの木に当り散らしながら歩いたりするから……

 そのため本職の狩人ではない俺でも、追跡がしやすかった。


 万が一足あとを見失っても、そういう痕跡を見つければ、後を追うことができる。


「行くか……」


 こうして彼らのあとを追い、しばらく……


(見つけた)


 時間は経っていたが、ゴブリンたちはあまり移動していなかった。

 獲物を狙いやすい位置で、俺は、静かに弓に矢をつがえる。


 背中を見ながら、ゆっくりと狙いをつけ……


 矢を放った。


 ひょう、と飛んだ矢は狙い通り、一体の首筋に突き刺さる。

 どさりと音を立て、倒れるゴブリン。

 急に倒れた一体に、彼らは混乱している様子だ。


(今のうちに)


 俺は二本目の矢を手早くつがえる。

 放たれた二本目のそれは、別のゴブリンの胸に突き立った。


「グオオオッ!」


 残り三体だったが、気づかれたか!


 こん棒を俺に向け、咆哮を上げる一体のゴブリン。

 その声に応じるように、他の二体のゴブリンがこちらに突進してきた。


(落ち着いて……)


 放った、三本目の矢。

 少し狙いをそれ、一体の肩に突き刺さった。


 近づく二体のゴブリンたち。

 もう矢で戦う距離じゃない。

 俺は弓を捨て、長剣を抜いた。


 無傷のゴブリンが、大きくこん棒を振りかぶる。

 俺はそれをかわすと、すれ違いざまにそいつの首を切り裂いた。


 残りは……

 どうやら、残りの二体はひるんでいる。


「オオオオッ!」


 俺は雄たけびとともに、剣を振り上げる。


 気圧(けお)され、逃げ出そうとした、肩に矢を受けていたゴブリン。

 そいつを切り捨てると、最後に、破れかぶれで突っ込んできた五体目のこん棒を避け、そのゴブリンの胸をつらぬいた。


「ふう……」


 安堵の息をついた俺は、近くに茂っていた大きな葉を一枚もぎ、それで長剣の汚れをぬぐった。


 ソロのゴブリン狩りは、森の中を逃げ回りつつ、突出してきた一、二体をちょっとずつ倒すような戦い方がスタンダードだ。

 ゴブリンたちの連携があまりうまくないからこそ取れる戦術なんだが……


 今回は、弓矢でうまいこと敵を倒すことができたので、早めに決着をつけることができたよ。


「……さて、と。このゴブリンの死骸を城まで運ばなきゃいけないわけだが……」


 持ち運べるのは二体ぐらいまでか?

 残りの死骸は、心臓にある魔石だけもらって、ここに打ち捨てていくしか無さそうだ。


 ここは魔の森とも呼ばれる場所。

 死骸は、すぐ他の魔物に食われてしまうだろう。


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