表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/89

37. 失伝霊薬

 ビリー達のため、預けていた王金貨などを返してもらい、冒険者ギルドを出る。

 町で獣人たちの生活必需品や、お土産を購入。魔物を倒しつつ、城まで帰った。


「トーマ、お帰りーっ! ポイント八十になったよーっ!」


 石壁の門で出迎えてくれたのはイェタだ。


 今日は、イノシシの魔物一体と、鹿の魔物一体。

 帰る途中に、オオカミの魔物二体とゴブリン三体を倒している。


「俺のだけで五十ポイントだから……。ルマールさん達が三十ポイント分の魔物を倒したのか」


「うん! 午前中にゴブリン一体! 午後にゴブリン二体を持ち帰っているよ!」


 それで三十ポイント。

 彼らの狩りは、好調のようだな。


「トーマは、町はどうだった?」


「いい感じだったよ。……それで、今度B級昇格試験を受けることになったんだけど、ジュナンに作って欲しい矢があるんだよ」


「ジュナンちゃんなら、たぶん、工房だよ! 来て!」


 イェタに連れられ、ドワーフの職人、ジュナンのところへと向かった。


「おっ、トーマさん、帰ったかー」


 木工工房で矢をいじっていた彼女が、部屋に入ってきた俺を発見する。


「調子はどうだ?」


「大体、道具の使い方は把握したな! トーマさんの弓とか剣も、問題なく鍛えなおすことができそうだぜ!」


 おおっ、それはスゴい。

 時間があるときに、お願いしたいな。


「トーマさんは、それについて聞きに来たのか?」


「あっ、いや、そうじゃなくて……ちょっと頼みがあるんだけど」


 俺は魔動タンク……黒神サクが作った蜘蛛型のゴーレムについての資料を取り出した。


「こいつを倒したいんだよ」


「魔動タンク……サクのゴーレムか。魔石から作る爆弾があれば、簡単に討伐できるそうだが」


 ん? 魔動ゴーレムに効果がありそうな、カミナリを落とす矢が欲しかったんだが。


「魔石から作る、爆弾?」


「うん。小規模な爆発と同時に、周囲の魔力をかき乱して、ゴーレムとかリッチとかの魔法生物の動きを止めたり、大ダメージを与えるアイテムだな」


 ……周囲の魔力をかき乱すってことは、魔法も使いにくくなるのかな?


 ガルーダさんも、大昔は、もっと簡単にこいつを倒すアイテムがあったと言っていた。

 それが、この『魔石から作る爆弾』なのだろう。


「魔動タンクでも一個投げれば動きが止まり、もう一個か二個投げてやれば倒せるって話だ」


「それは、スゴいな」


「ただ、原材料の一つの作り方が失伝しているから……。今、その爆弾を保存しているのは、魔術師ギルドぐらいなんじゃないかな」


 魔術師ギルド……

 研究資料用として持っているんだろう。


「そこじゃ、ちょっと手に入れられないか」


「うん。まあ、失伝した原材料……とある霊薬なんだが、そいつの作り方さえわかれば、他の部分は伝承もある。けっこう簡単で、私も覚えているから、この爆弾は作れるんだけど」


 首を振る彼女。


「その霊薬――赤く輝く液体の中、小さな稲妻のようなものが走る霊薬なんだけど……。それは誰も再現できていないんだよ」


 ……ん?

 赤く輝く液体の中、小さな稲妻のようなものが走る霊薬?


 それ、どっかで、見たことあるぞ……


 たしか、唐辛子の霊薬を()()したものが、そんな特徴を持っていた。


 どんな風になるのか、川原で、その霊薬が入ったビンを割ったことがある。

 大炎上して大変だったが……


「……なー、ジュナン。その霊薬って空気に触れたら、こう……すごく燃え上がったりするのか?」


「おっ、なんだ、トーマさんも知っていたのか。そうだぜ! 博識だな!」


 間違いなく、それだ。


 えっと……、唐辛子の濃縮霊薬は……『倉庫』の中か。


「それって、この霊薬じゃないかな? 唐辛子の霊薬を濃縮したらできたんだけど」


「はっはっは、トーマさんも冗談が過ぎるぜ。唐辛子なんかから、あの霊薬ができるわけが――」


 そう言いながら霊薬を受け取った彼女が無言になる。


「こ、こここ、これは……」


 手が震えた彼女。思わず霊薬を落としそうになり――


「うおーっ!?」


 ビンごと、彼女の手を支える。

 落として割れたら大惨事だ……


「トーマさん、多分、これだよーっ!」


 ずいぶんと興奮している。


「さっそく試してみなくっちゃ! あっ、材料に魔石も使うから、それも欲しいんだけど……!」


「うん、わかった。明日、町へ行って買ってくるよ」


「頼みます! それと、特殊な道具も必要で……それは多分手作りできるんだけど、必要なデミル鉱石と……、宝石も足りないかな」


 そう言うジュナン。


「その、鉱石や宝石は、町で買えるのかな?」


「デミル鉱石は、ダークエルフたちに頼まないと」


 そうか。でも彼女たちは、いつ来るかわからない。

 イェタの作る施設、鉱石採取所なら採取できるか?


「イェタ、『地下鉱石採取所』を作れるかな」


「うん! 八十ポイントあるから、七十五ポイントのこの施設は作れるよ! 今、作る?」


「頼むよ!」


 ジュナンと一緒に、部屋の外に出たイェタを追う。

 廊下の行き止まり。


「作るよー!」


 宣言の後、床がピカッと光り、そこに地下への階段ができた。


 下に降りていくと、どこか自然の洞窟を思い起こさせるような部屋がある。

 地面には瓦礫のような石や岩が転がっていて……


「地面に転がっている石とかが全部、何かの鉱石だよ! 宝石なんかも採れるって! 金や銀、魔力のない宝石ぐらいまでなら、ここから採れる!」


 おう……


「鉱夫の技術が必要だけど、壁を掘れば魔力を持つ鉱石や宝石を採掘できる! 城から離れる方向に掘っていくほど良い物が出て、一番奥ではオリハルコンも採れるって!」


「おっ!?」


 ジュナンが、ものすごい反応している。


「採った鉱石は一日たてば補給されるし、壁や床に掘った穴も、一日たつと元に戻るよ!」


 ……オリハルコンは、掘るのに城から離れる方向に向かっていかなきゃならない。

 なのに、壁とかの穴は、一日たつと埋まっちゃうらしい。


 貴重な鉱物は、採掘しづらいようになっているのだろう。


「よっしゃ、燃えてきたぜ! オリハルコンを掘ってやる!」


 ジュナンが、そんな決意表明をしていたのだが、必要なのはデミル鉱石と、なんか宝石だったよね……?


 オリハルコン目指すなら、魔動ゴーレムを倒すためのアイテムを作ってからにしてくれると嬉しいな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ