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35. やっかい

 ドワーフの少女、ジュナンから魔法の矢をもらう。


「……もしかしたら、『木工工房』なんか作れば、もっと良い武器作れるのかな?」


「イェタちゃんの工房だからな! 弓矢なんかは良いもんが作れそうだぜ!」


 弓矢は木の部分が多いから、そこに仕掛けができるかもしれない。


「じゃあ、『木工工房』作る?」


 イェタに聞かれるが、どうしようかな……


「鉱石とかも必要だから、それを採掘する場所が欲しいけど……」


「あっ、それは、しばらくはなくても大丈夫そうだぜ」


 ジュナンの言葉。


「今日、ダークエルフからの報酬が届いたからな!」


 ……そういえば、昨日か今日に、彼女たちから報酬とかが来る予定だったな。


 イェタが、ウニを指差す。


「ウニちゃんのお母さん……エルナーザさんっていうらしいけど、そのダークエルフさんが届けてくれたよ!」


 ……洞窟竜に追われていた、ダークエルフの女性のことか。

 鉱石のほか、薬草や木製品の素材になる木なども届けてくれているはずだ。


 彼女のことを思い出していたら、ジュナンから情報が。


「報酬の鉱石とかを集めていて遅くなったって謝ってたな! エルナーザは、巫女さんからの許可ももらったって言ってたから、冒険者ギルドにダークエルフ達の情報を伝えられるぜ!」


 ちょうどいいな……。

 明日、冒険者ギルドに薬草を届けに行く予定だったから、そのときに情報を伝えられる。


「トーマさんから頼まれていた伝言もつたえといたぜ!」


 シルバーサフが必要なら、あまっているから渡しますよ、などといったことだ。


「シルバーサフがいくつか欲しいって言われたから、イェタちゃんに頼んで採ってきてもらった! 鉱石とか素材になる木とか、また報酬として持ってくるってよ!」


 なるほど。


「じゃあ、『樹木園』や『地下鉱石採取所』はいらなそうか」


 木材や鉱石は、ダークエルフ達からもらえそうだ。


 イェタを見る。


「それじゃ、『木工工房』、お願いできるかな?」


「うん! わかった!」


 鍛冶工房から出て、空き室へ。


「作るよー。えい!」


 イェタが気合を入れると『木工工房』ができあがる。


「ひゃっふーい!」


 ジュナンが喜び勇んで、作業道具に飛びついていた。

 静かに見守っていたルマールさん達も、興味深そうに中を眺めている。


「残り六十ポイントだよ!」


 あとは、どうするか……


「ルマールさん達の狩りを助けてくれる人が、もう一人ぐらいほしいかな……?」


「……それならば、あの『職業』というので、それがしを強化するのはできないんですかな」


 ルマールさんの質問。


「できるのかな?」


 イェタに聞くと、彼女がうなずく。


「弓や槍の腕前がいいから、そこら辺は『職業』を得てもあまり変わらないよ! でも『兵士』には体力なんかを高める効果があるみたいだから、それが役に立つかも!」


 じゃあ、それがいいかな。


「ルマールさんは、それでいいですかね?」


「ええ! この老いた体が、ある程度動くようになるなら!」


 彼も賛成したので、イェタにお願いする。


「行くよーっ! えい!」


 ピカッと光るルマールさん。


「さっそく試してきますぞーっ!」


 たったか走って外に出て行った。


 様子を見に行ったところ、楽しそうに、槍の素振りをしていたよ。


 そして翌日になる――


「いってらっしゃーい!」


 イェタに見送られ、城を出発。


 ルマールさんと『弓兵』の青年は魔物狩りへ。ウニも貸した。


 一方の俺は、町へと向かう。ギルドへ薬草を納入して、ダークエルフ達からの情報も伝えて……、あとは獣人たちの食べ物とか、生活必需品も買いたいな。


 そんなことを考えながら、途中、イノシシの魔物や鹿の魔物を倒し、町の冒険者ギルドまでやってきた。


「すみません」


 いつもの受付嬢……サリーさんに声をかけ、個室まで案内された。


 今日はダークエルフ達からもらった薬草もある。

 イェタの薬草園から採れたものとあわせ、通常の倍ぐらいの量だ。

 渡したところ、彼女の顔が引きつっていたよ。


 オーガの角なども採取していたので、それも渡した。


「では鑑定をおこないますので、少々お待ちください」


 彼女が部屋の外に出ていった。


「おっす、トーマいるかー」


 しばらくし、ギルド長のガルーダさんが入ってきた。


「この前はありがとな! ビリー達の(けん)は解決したぜ!」


 ああっ、彼らの借金か。

 金貨一枚ぐらいの借金が、なぜか王金貨一枚を借りたことになっていた……みたいな話だったはず。


 ガルーダさんが、バトルアックスを担いで、話し合いに乗り込んでいたが。


「やっぱ、あれは詐欺だったぜ!」


 へー。


「魔法紙を使った契約なのに、よく詐欺ができましたね?」


「んー、詳しいことは調査中なんだが、なんか細工された魔法紙だったらしいな。借金の金額を後から変えられるみたいで……。専門家が詳しく調べないと、細工されていることがわからないんだ」


 何それ怖い。


「かなり前の話になるみたいだが、ユモン・スカルシアへの紹介を望むローブをかぶった二人組がいたようでな……。ユモンにつながる下位の貴族を紹介したときに、報酬として受け取ったみたいだ」


 ……ユモン・スカルシアとは、ダークエルフの薬草園への侵入者とつながりがあるかもしれない人物。

 ガルーダさんが言うところの『ダメ貴族』である。


 契約用の魔法紙に細工をするなんて、大魔導士と呼ばれるぐらいの、ほんの一握りの魔法の達人じゃないと無理だ。

 そんな人物が、その貴族とのつながりを求めていたことになる。


「その魔法紙に細工をした者たちについて、詳しいことはわかっているんですか?」


 俺の質問に、首を横に振るガルーダさん。


「人相とかはわかっていないな。褐色の肌を持っていたらしいが……。まあ、それだけの能力を持つ魔法使いだから、人相も肌の色も変えられるだろうから……」


 どちらにしても信用できないということか。

 でも、褐色の肌なのか……。ダークエルフと同じ特徴だな。


 ……そういえば、ダークエルフの集落から逃げた裏切り者もいたか。

 人間の世界なら、大魔導士と呼ばれてもおかしくないぐらいという魔法の腕を持つという人物と聞いた。


 そんな魔法の達人は、そうそういないし……

 この魔法紙へ細工をした大魔導士クラスの人物って、もしかして裏切り者のダークエルフなのか?


 ここでユモン・スカルシアとのつながりを得て、ダークエルフの薬草園に、ユモンの手の者を導いた感じなのだろうか。

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