表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/89

33. 兵舎

「『兵舎』は外に作る施設だよ!」


 イェタにつれられ、城の外へ。


「作るよーっ! えい!」


 彼女が指差した土地がピカッと光る。

 石壁の内側……城の敷地内に、建物ができた。


 二階建てで、少し大きめの宿屋ぐらいのサイズ。

 練習に使うのだろう、木の剣や木の槍が入った箱、矢の的のようなものが外にあった。


 観察をしていると、イェタから声をかけられる。


「あっ、トーマ。住人に『職業』っていうのを与えられるようになったよ! でも、ポイントが必要みたいだけど……」


 ……『職業』?


「よくわかんないけど、それはどういうのなんだい?」


「なんか、与えた『職業』に応じた戦闘技術を使えるようになるって書いてあるよ!」


 へー。


「今、与えられる『職業』は『兵士』と『弓兵』の二つ! 『兵士』は近接戦闘の技術とかを! 『弓兵』は弓やボウガンなんかを扱えるようになるみたい!」


「ふむ……彼は、どちらも苦手なのですが。弓を扱えるようにできるのならば、性格的に、そちらのほうが向いているかもしれませんな」


 俺とイェタの会話を聞いていたルマールさんが、さっき『皆を守れるようになりたい』と言っていた気弱そうな青年を指差した。


「どっちの職業も、取得には五十ポイント必要だよ! この獣人さんに、『弓兵』の職業を与えるの?」


 チラッと青年を見ると、彼にうなずかれた。文句は無さそうだ……


「お願いするよ」


「わかった! えい!」


 ピカッと光る獣人の青年。

 ちゃんと『城の住人』として認識されていたようだな。

 多分、『弓兵』の職業が得られたのだろう。


 見た目からは、変わったところはわからないが。


「じゃあ、この弓矢を使ってみてくれるかな?」


 俺が差し出した弓矢を、恐々と受け取る青年。


「あれを狙ってみようか」


 兵舎の外に設置してある、弓の的らしきものを指差す。


「はい」


 うなずいた青年が、矢を射始めた。


「……かなり当たるな」


「彼の弓の腕は、からっきしダメだったのですが……。しかし、これなら狩りも、はかどりそうです!」


 ルマールさんも満足そうだ。


 弓矢は俺の予備があるし、獣人たちで持っている者がいた。

 あれを借りれば大丈夫だろう。


「……ちなみに、俺も、職業を得られるのかな?」


 気になって、イェタに聞いてみる。


「一応『城主』が『職業』みたい!」


 そうなのか……


「なんか、『城主』にも、剣や弓の腕前を良くする効果があるようなんだけど、トーマは、もともと武器の扱いがうまかったから効果が出てないみたい!」


 なるほど。


「あと『城主』は特別で、『鍛冶師』とかの生産系の職業なら追加で取得可能なんだって! デュアルジョブが可能だって書いてあるよ!」


 デュアルジョブの意味が少しわからなかったが、すごそうである。


「『謁見室』の施設で『城主』の力は、さらに強くなるよ!」


 いつか作ってみたいな。


「ちなみに今ので残り二十ポイントになったから、もう作れる施設はない!」


「……じゃあ、今日はこれでおしまいか」


 俺はルマールさんを始めとした獣人たちを見る。


「後日、『宿舎』も作るかもしれませんが、あの建物を住居として自由に使ってください。もちろん、昨晩使われた部屋を、そのまま使うのでもかまいませんが」


「おお! ありがとうございます! それでは、さっそく中を見させてもらいますぞ!」


 わいわいガヤガヤと建物の中へ。


 二人部屋が大量にあり、城のものに比べると小さいが、共用の風呂やトイレなど、一通りのものはそろっているようだ。

 武器や、外に出ていた木剣などの練習道具を置くんだろうな、と思われる部屋もあった。


「では、今日からこちらの建物を使わせてもらいましょうか!」


「……城の調理場なんかも、勝手に使ってかまいませんからね」


 ルマールさんに、そう告げて、あとは彼らに任せることにした。


 そして翌日――

 俺は、城の外で、狩りの支度をしたルマールさんと、『弓兵』の職業を得た青年を見ているのだが……


「僕、うまくできますかね……?」


 そんな不安そうな青年を励ます、ルマールさん。


「なーに、失敗しても最悪、死ぬだけ! 心配しなさんな!」


 いや、全然、励ましてなかった。

 青年の顔色が悪くなっている。


「俺もついて行くから、大丈夫ですよ」


 そう言って、彼をなぐさめることとなった。


 今日は、この青年とルマールさんの狩りに、ついて行くつもりだ。

 薬草採取の日でもあったが、そちらはイェタやジュナン、他の獣人に任せる。


 昨日来なかったダークエルフの女性も、約束どおりなら、今日来るかもしれないのだが……

 薬草などの受け取りはジュナンたちに任せることにした。シルバーサフも必要ならまだ採れるので、それについての伝言も頼んである。


「じゃあ、イェタ、後は任せたよ」

「うん!」


「皆さんも、よろしくお願いします」


 見送りに来ていた他の獣人たちにも後を頼み、従魔のウニも連れ、ルマールさんや『弓兵』の青年と狩りへ出発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ