スレの中の自宅警備員達
100 :ながしの女:
なに言ってるの?
可愛い妖精のお願いでしょ。
頑張らないわけないじゃない。
101 :名無しのオカルトマニア:
そうだ。むしろオッサンに頼まれるより
300倍モチ上がる
102 :すらいむ:
禿同
103 :名無しのツボ民:
今までの状況を推測すると、
身体の負担というのは、その妖精氏の負担ということか?
104 :さすらいの自宅警備員:
あぁ。
その通りだ。
なんか苦しそうなんだ。
だいじょうぶとは言うが、
きっとムリをしているのだろう。
105 :ながしの女:
私もあなたと同じ。
自宅警備の仕事をしている。
だから時間はあるわ。
106 :名無しのオカルトマニア:
俺もだ。
時間だけは無限にある。
107 :すらいむ:
禿同
108 :名無しのツボ民:
俺も引きこもって15年。
でも少年だったころは、
世界を救いたいと思っていた。
勇者に憧れていたのだよ。
でも、
その夢は扉という壁に閉ざされた。
でもお前となら、
あの頃の夢を叶えられそうだ。
俺はお前を、
利用するのかもしれないが、
だからお前も俺を利用すると良い。
109 :さすらいの自宅警備員:
みんな、ありがとう。
自宅警備員が、
魔王から世界を警備するなんて。
笑えるな……。
でもきっとできる。
110 :ながしの女:
きっとできる。
111 :名無しのオカルトマニア:
きっとできる。
112 :すらいむ:
きっとできる。
113 :名無しのツボ民:
きっとできる。
……
俺はスレを一旦閉じた。
胸が詰まりそうだったからだ。
ふと横を見ると、
ジュノが涙をためていた。
「人間って図体だけデカくて、ロクでもない連中が多いって思っていたけど、
あんた達は優しいわよね」
ジュノは言った。
俺は過去を振り返る。
「あぁそうかもしれない。
でもその優しさが仇となった。
そんな気がしていた」
俺は呟いた。
「優しさが仇になる世界って……。
ロクでもない世界ね」
ジュノは呟いた。
「そうだな。優しさが報われる世界がいいよな」
俺は言った。
「そうね。
でも忘れないで、私はあなたの優しさに救われた。
それは事実よ。
だからあなたの優しさは無駄じゃない」
ジュノは涙をふいた。
俺が心の奥で封印していた感情が一気に流れ出す。
涙が止まらなくなった。
でも……、
その理由がわからなかった。
ただジュノの言葉が、
俺の心に突き刺さっていた、
針のようなモノをスーッと溶かした。
10分ほど涙を流して、
涙はピタッと止まった。
感情は雨の後の世界のように、
静かに静まり返った。
常に心の中に浮いていた、
砂煙のようなざらつき感。
それが治まった。
頭の中のノイズが消える。
俺は過去のメールやファイルをパソコンから消去し始めた。
その数およそ6GB。
机の引き出しの奥にしまい込んでいた書類や、着られなくなった服や小物、段ボールや、空の容器、ガジェット類も全部かためた。
そしてダンちゃんに食べてもらった。
心の中に、
ぽっかりと空間があいた。
それはちょうど、
キレイに掃き清められた神社のようでもあった。
ジュノは少し驚いた様子だった。
泣きだしたと思ったら、急に片づけを始めたのだから、
ムリもない。
「どうしたの?心が痛いの?」
ジュノは心配そうに言った。
「いや。
違うんだ。
ジュノの言葉で、
ずっと心の奥に刺さっていた針のようなモノが取れた。
そうしたら、
いらないモノが見えたんだ。
もう俺は先に進めるから、
もっと軽くなりたい。
重荷はいらない。
そう思えたんだ」
俺は答えた。
「そっか。よかったね」
ジュノは笑った。
「うん。ありがとう」
俺は言った。
俺はスレに戻ることにした。
掲示板では、
激励の声が300件ほど入っていた。
……
414 :さすらいの自宅警備員:
みんな、ありがとう。
自宅警備員は自宅を警備するだけの役立たず、
そんなことを言われたことがある。
その時は何も言い返す気力はなかった。
事実だと思っていたからだ。
しかし今は違う。
俺は戦える。
そして世界を守れる。
みんな力を貸してくれ。
手始めに、
どうすれば良い?
415 :すらいむ:
そうだな。
成功事例の横展開が必要だな。
416 :ながしの女:
そうね。
417 :名無しのオカルトマニア:
さすらいの自宅警備員氏が、
データを送ったりしている間に、
俺らが次の手を考えたりしてはどうだ?
418 :すらいむ:
なるほど。
さすらいの自宅警備員氏が、
実行&最終判断、
スレ民が戦略アイデアを考える部隊ということだね。
419 :名無しのツボ民:
それはいいかもしれない。
420 :さすらいの自宅警備員:
みんな、ありがとう。
わかった。
それで行こう。
手始めに、
今回のようなパターンが使えそうな、
地域を探ってみて、実際に行ってみる。
そして結果を戻す。
俺がやっている間に、
みんなアイデアを考えておいてくれ。
421 :名無しのオカルトマニア:
よしわかった。
考えておこう。
それで、
状況がよくわからないから、
整理から始めていこうか。
422 :名無しのツボ民:
そうだな。
これまでの情報からわかることは。
異世界は中世くらいの時代っぽい。
軍隊はいるが、
あまり機能していない。
魔物が出る。
423 :すらいむ:
こう見ると、
あまりにも知らなさすぎだよね。
映像で見た感じから推測すると、
とりあえず銃とか現代の武器っぽいのはなかった。
424 :名無しのオカルトマニア:
軍事訓練とかどうだ?
425 :名無しのツボ民:
騎士団とかは、
もうすでに軍事訓練をしているだろうし、
急場しのぎの軍事訓練はムリがあるんじゃないかな。
……
スレの中で議論が盛り上がっている頃、
俺は次の場所の選定、画像のピックアップで忙しかった。
探索のやり方を工夫して、
とりあえず同じようなケースで60ほどの地域が見つかった。
あとは、
個別の事情に合わせたカスタマイズをするかどうかだが……。
どうだろう。
「なぁ。個別の事情に合わせたカスタマイズはいるのだろうか?」
俺は尋ねた。
「時間と人手があるのなら、カスタマイズしたほうがいいだろうけど、実際に労力を使えるのはあなただけだから、少し無理があると思う」
ジュノは言った。
「そうだな。じゃあ送信だけ少し時間を空けて、同じ形式のデータを送ろう。もちろん地図とかはカスタマイズしないといけないけど、流用できるものは流用しよう。最後の呼びかけとか」
俺は言った。
俺は表計算ソフトでデータを管理しながら、
送信のスケジュールを組んでいく。
問題はジュノの負担だ。
彼女に尋ねたところで、だいじょうぶと答えるに決まっている。
だから様子を見て、随時止めていこう。
「ジュノ。いくよ」
俺は言った。
「わかった。まかせて。うっあっあ~」
ジュノは答えた。
「うっ……!あっ、あ~」
顔を紅潮させ、苦痛に耐えるジュノ。
それを横目で見る俺とダンちゃん。
俺は彼女を、世界を、
守り切ることができるのだろうか……。
END
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は完結していますが、
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