五十五話『イッてええええええ‼いきなり何すんだよ‼』
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宇宙警察ステーションでは、佐野本部長は、デスクの椅子に座り、空間上に立ち上げたモニターを眺める。
「…」
仏頂面を浮かべる佐野本部長に、マナが「葛城怜士隊員のことですが、今どこに」と問いかける。
佐野本部長は深刻そうに視線をずらす。
「現役戦士でありながら定期的にしか現れないスーパーイエロー。彼の現在地がGPSを使用しても測定できないんです。なぜ」
と食い込むマナに、佐野本部長は「…これ以上の追及は英雄防衛法、及び宇宙警察法に反する」と言及を避けた。
「なぜ⁉」と納得できないマナ。
「スーパーイエローを正式に戦士として認める必要は現時点ではない。よって現在彼は私人であり警察職務とは何ら関係がない‼」
と言う佐野本部長に、マナは「でも彼は宇宙警察の一員でしょう⁉」と声を荒らげる。
だが佐野本部長は「本部長命令だ」とマナに威圧感のある声色で言った。
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…宇宙警察ステーションに戻ったマナは、バンッ‼と大きな音を立てながら椅子に座る。
「信じられない‼スーパーイエローを戦士として認めないなんて‼」
と愚痴るマナに、カーガは「まぁ、彼、実験用で本当の戦闘を想定して作られていないからね…」と答える。
「なーに?カーガさんも本部長の肩を持つわけぇ?」と言うマナに、カーガは「違うわよ」と笑った。
「だってそうじゃない」
とマナはしかめっ面をカーガに向ける。
カーガは、「あの子、変身は出来るけど宇宙警察に籍置いてないのよ?私たちが関わっていいわけ無いじゃない」と説明するが、
マナは「でも兵器は作れてるんだよ?佐野本部長のマネーで。矛盾じゃな~い?」と頬を膨らませる。
カーガは、「ひょっとして彼以外にイエロー枠がいるのかも」と微笑む。
マナは「それはあり得ないわ‼色被りは無いように出来てるもの‼それにぃ~?黄色は怜士くん以外嫌だし♡」とカーガに言った。
カーガはパソコンを立ち上げながらコーヒーのカップを机上に置く。今日はどうやらカフェオレらしい。
「でもね、マナ。いくら葛城怜士くんがよくたって、私人を追いかけ回すのは佐野本部長が言う通り違法よ」
とマナに返した。
マナは、「むぅ」とタコのように頬を膨らませる。
「はいはい怒らない」とカーガはマナを宥めた。
マナは「宇宙警察って厳し」とパソコンのカメラを切り替えながら呟く。
「戦士の素質があろうと本来はカメラ追い回すのは駄目だからね」
とカーガが言ってる間にも、翠の着替えシーンがモニターに映る。
「駄目ッ‼」
カーガが急いでカメラを止めた。
「全く、言ったそばから」
安堵するカーガ。
マナは「わざとじゃないですぅ」と口を尖らせる。
「うふ」
カーガは面白がるように笑った。
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「さてと。増築も終わった事だし、私たちも地球に行く?」
とカーガは首を傾げながらマナを誘う。
マナは「えぇ⁉」と驚く。
「正気⁉」と目を見開くマナに、カーガは
「嘘♡」と微笑みながら答える。
「でも…」とカーガが言うと、「久しぶりに光太郎たちに会いたいわね」とカーガはスマートフォンの待ち受けを開いた。
「ところで、なんで戦士たちに搭載された通信手段、スマホじゃなくてインカムなの?」
カーガのスマホを見たマナが尋ねると、カーガは
「スマホを片手に戦えるとでも?」と説明した。
「嗚呼、そういう…」とマナは納得する。
マナが居なくなった後の宇宙警察本部の本部長室。
本部長は空間に立ち上げたモニターで誰とメールのように連絡を取っている。
相手は…。【弐式火神】。
この名前…どこかで見た事があるだろう。
そう、ホテルシャイニングロードで光太郎が検索した家族の長男。
金持ちのボンボンと言われた、あの消息不明の学生だ。
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クロウサギアジトでは、ミドハラがカタカタとキーボードを鳴らしながらパソコンを触っていた。
「できたぞ」
ミドハラの声に、サルジマが振り返る。
「ハラ‼」
ミドハラは「作ったはいいがなんだこれ」とサルジマに言った。
「バーチャル配信者のアバターだ、これで配信して大儲…」
と言うサルジマの背中に、ダークマスターは蹴りを入れる。
「あべっし‼今回もいいのが入った~‼」
と言うサルジマは、ミドハラのパソコンの方へ倒れ込む。
ミドハラのパソコンが衝動でバキッと壊れる。見事なまでの真っ二つだ。
「ダークマスター様あああああああああああああああ⁉」
絶叫するミドハラ。
サルジマも「うわあああああああああああ⁉」と真っ二つのパソコンを見て絶叫する。
ダークマスターは声色を低くしながら、
『ふざけるのも大概にしろこのサル』
とサルジマを罵倒する。
サルジマは「サルじゃ…な…」
と言うが、ガンッ、と後ろ髪を引っ張られ机に頭を強く打ち付けられてしまう。
「ど、どうかされたんですか」
とダークマスターに尋ねるミドハラ。
ダークマスターは『あぁ~すっきりした』
と言いながらクロウサギの指令室に帰ろうとする。
「ちょっと⁉ダークマスター様⁉」
理由も無く蹴られ、驚くサルジマ。
ミドハラは「ダークマスター様」
とダークマスターを止めようとする。
『私の怒りのサンドバッグになるのもお前らの役割だろう?』
と言うダークマスターに、サルジマは
「いくらダークマスター様と言えどそれは許されていいはずが‼」
と反論しようとするが、
「うぐぁあああああ」
とサルジマは突然走る激痛に声をあげることになる。
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『お前らにとってのダークマスター様、なんだろう?なら私が何をしようと認めろ』
とダークマスターは心を弾ませた。
ミドハラはギュッと拳を握る。
「そんなことをするなら俺ァもう従えねぇ」
出て行こうとするミドハラに、ダークマスターは真っ直ぐ手を伸ばし、深海で溺れるような感覚を与える。
「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」
苦しむ二人を見て、ダークマスターは
『思い知れ、それが理不尽の極みだ』
と悶えるサルジマとミドハラに吐き捨てた。
そのまま立ち去ろうとするダークマスターの足に、サルジマはしがみつく。
「俺の事くらい…好きに使え…だが…俺の仲間を傷つけるやつは…許さんぞ…」
サルジマの台詞に、仮面の下でダークマスターはハッとしたような顔を浮かべる。
すぐさまサルジマの腕を振り払いそのサル顔を蹴とばした。
サルジマは「ぼっふぅ」と目に涙を溜める。
『ヒーローにでもなったつもりか』
ダークマスターのその言葉は震え、少しばかり声が上ずっていた。
『斬』
ダークマスターは気怠そうに言うと、サルジマとミドハラにかけた精神干渉を切る。
「このッ‼」
とこちらに斬りかかろうとするミドハラを軽々避けつつ、ダークマスターは再度の着信に耳を当てる。
ダークマスターは着信を受けた途端どこかへ歩いていった。




