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第36話 ドキドキ、帰り道

「大丈夫かい、槇原さん?」

「だいぶ良くなったけど、まだ頭がクラクラするわ~」


 そうだよな。

 俺と名月さんのドスケベな関係を、一般人が味わったら、こんなことになるんだな。

 槇原さんを見て、俺たちの異常性を再認識する。


「では、私たちはそろそろ帰るわ。行きましょう、槇原さん」

「あ、ああ……」


 名月さんのことを見た槇原さんの顔が若干引きつっている。

 先ほどのpenis地獄がトラウマになっているらしい。

 下ネタNGピュアピュア黒ギャルと、下ネタ大好物のドスケベ地味子……改めて、凄い組み合わせだな。

 玄関に出て、俺と母さんで二人を見送ろうとするが、母さんがこんな提案をしてきた。


「並介。せっかくだから、二人を駅まで送ってやりな」

「ええ~。大丈夫でしょ」

「全くこれだから。ごめんなさいね、この子デリカシー無いの」

「母さん……!」


 母と息子の小競り合いを、二人は微笑ましく見ていた。


「だったらお願いできるかしら。これから夜になるし、女の子二人というのはいささか不安だわ。ねえ、槇原さん」

「あ、ああ……そうだな……」

「じゃあ、しっかり駅まで送り届けてくるのよ」

「は~い」



 ということで、陰キャモブの俺が美女二人を送り迎えすることになったんだが。

 駅に向かうために、すっかり日が暮れた通りを歩く。


 右側に居るのがカーストトップの黒ギャル、左側に居るのがクラスでは大人しい地味子。いづれも、超が付くほどの美少女。

 これが両手に華、というやつなのだろうか。胸のドキドキが収まらない。


「今日はあんがとな、名月ちゃん。あんたのおかげで中間テスト、赤点回避できそうだ」

「槇原さんが頑張ったからよ。別に私のおかげじゃないわ」

「しかし、名月ちゃん……。あんた、あんなにヤバい奴だったとはな……」


 槇原さんが名月さんに対して、明らかに畏怖の念を抱いている。

 カーストトップの黒ギャルが、いつも一人で過ごしているカースト底辺の地味子に恐れおののくってどういう状況?

 それほど、ドスケベというのは、一般人にとって理解できないものなのだ。


「あと……平谷も、あんがとな」

「えっ? 俺?」

「私の代わりに名月ちゃんに勉強を教えてほしいって頼んでもらって、それに勉強の場まで提供してもらって」

「まあ、大したことじゃないけど……」


 よくよく考えたら、美女二人が俺の部屋にいたという事実が残る時点で、メリットしかない気がしてきた。

 帰った後、二人の残り香を堪能できるのだからな。

 じゅるり。いかんいかん、涎が垂れてきてしまった。


「平谷君、またドスケベなこと考えていたでしょ?」

「うぐっ。バレたか……あっ」


 つい、いつものように、名月さんとドスケベトークをしてしまった。

 この場には槇原さんも居るんだ……。

 案の定、槇原さんは俺たちを見て、ドン引きしている。

 それを見た、俺と名月さんは思わず慌てふためく。


「いや、これは……冗談みたいな感じで」

「そ、そうね。これが陰キャ同士のコミュニケーションって感じよ」


 手をパタパタさせて弁明する俺たちに対して、


「男女で下ネタトーク……ありえねえ……」


 槇原さんはまるで怪物を見るように、目をかっぴらいていた。


 そうこうしていると、駅に着いた。

 すると、槇原さんがとんでもないことを言い始めた。


「なあ……ここは何の駅だ? どうやって、帰ればいいんだ……」


「「はい?」」


 その発言に、俺と名月さんは思わず目を見合わせた。


「あの……槇原さん、なんて?」

「私、方向音痴だから、ここがどこだか分からねえよ!」


 んぎゃー、と頭を抱える槇原さん。

 黒ギャルで、ピュアで、ポンコツって……どれだけ、属性盛れば気が済むんだ、この人。


「最寄り駅はどこかしら?」


 見かねた名月さんが、槇原さんに寄り添ってヒアリングを始める。


「××駅」

「困ったわね。私とは逆方向ね。私が最寄り駅まで送っていけば良いけれど、ちょっと時間がかかってしまうわね」

「名月ちゃんに、そんな迷惑はかけられねえよ」

「確かに、勉強を教えてくれた名月さんに、そこまでの重荷は背負わせられない」

「どうすれば……」


「一つだけ案があるわ。平谷君、あなたが槇原さんを送ってあげるのよ」


「え……マジで……」


 なんか、とんでもない展開になったんですけど……。


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