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転生して異世界に指導者として出向くことになった  作者: よぎそーと
二章

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28/57

28歩目 言われてみればそうかもと思う事

「やあ、ご苦労さん。

 今回も凄いね」

 四十年ぶりに聞く声が少々鬱陶しい。

 死んで、再びやってきた死後の世界で彼は、記憶の中と変わらない姿で立っている。

 そういう存在なのだろうからさして不思議とも想いはしない。

 人間の尺度や考えでとらえる事の出来ない存在だけに、持ってる常識でとらえる事は無意味だろう。

 ただ、あらためて見る事で、ああ自分は再び死んだのだと理解する。

「かなり上手く進めてくれたよ。

 これなら上手く成長していくんじゃないかな」

 評価の声を聞き、いくぶん満足する。

 しかし、やってきた事を振り返ると果たしてあれで良かったのかと思ってしまう。

「もっと上手く出来たんじゃないのか?

 対立して終わってるわけだし」

 そこが気がかりではある。

 もっと良い形で決着をつけられたのではないかと。

 問題を発生させないで物事を進める事も出来たかもしれない。

 それは無理だとしても、もう少し穏便な形で済ませられたのではないかとも思う。

 強硬手段というか、やむなく厳しい方法をとったが、果たしてそれで良かったのかという思いもある。

 そうするしかなかったし他の方法も思いつかなかったが、やはり多少の後悔はある。

 しかし造物主は、

「しょうがないじゃん、あんなの」

と笑いとばした。

「全部を制御するなんて無理だし。

 それに、期待していた通りの動きをしてくれたし」

 思ってもいない言葉だった。

 あれで良いというのはさすがに想定外だった。

「もっと穏便な方法とかが良かったんじゃないの?」

「いや、そうでもない」

 ヒロフミの疑問に造物主は首を横に振る。

「むしろはっきりきっぱりと断ち切って正解だと思うよ。

 言っても駄目な連中ってのはいるから。

 なんでそんな事するのかは分からんけどね」

「そういうもんなの?」

「そういうもんだよ。

 お前さんが手こずってたというか、はっきりと拒絶した連中な。

 あれはああいう風に生まれついたからどうしようもない。

 損害を受けるのが確実なら、切り捨てるしかないでしょ」

「はあ……」

 造物主────神とは思えない言葉である。

 もう少し気にかけるとか、教え導くよな言葉があると思ったのだが。

「本当にそれでいいのか?」

「いいって。

 どうしようもない連中なんて救っても仕方ないし。

 バグとか不良品ってどうしても出て来るじゃん。

 それを後生大事にとっておくか?

 消したり廃棄するのが普通だろ。

 再利用しようもないし」

「そりゃそうだけどさ」

「救いたいっていうならそれも良いけどさ。

 それで結局自分まで駄目になっちゃ意味が無いでしょ」

「まあね」

 それはその通りだと思う。

 救えるならともかく、やるだけ無駄な事に時間も労力も費やしたくない。

「じゃあ、ああする以外の手段はないでしょ。

 それで良いよ。

 一カ所を救う為に他の全部が駄目になる理由もないんだし」

「いや、神様としてそれでいいのかよ」

「はい?」

 造物主は意外そうな顔をした。

「なんで?」

「え?」

「別に構わないよ。

 悪いのや駄目なのが潰れていくのは。

 自然な事じゃん」

 今度はヒロフミが驚く顔をした。



「──なるほど、そう思ってたのか」

 ヒロフミが驚いた顔をした理由を一通りきいた造物主は、ようやく納得したという顔をする。

「慈悲と慈愛か。

 それと救済ね。

 まあ、言いたい事は分かるけど」

 それでも造物主は不可解な表情をする。

 いや、説明を聞いたから余計にというべきか。

「なんでそういう事になってるんだ?

 そっちの方が不思議だ。

 別に救う必要もないし、義理や義務もないんだし」

「え、いや、え?」

 ヒロフミは混乱していく。

 彼のもってる常識からすれば、それで良いのかという思いが強い。

 前世、それもこちらに来る前の元の世界における行動を省みれば、ヒロフミがそんな事言えた立場でもないが。

 それでも、多少は悩んでいたし、何が良いのかと考えもしていた。

 こちらにおける先ほど終えた人生における行動にも、だから多少の迷いがあった。

 ああやって切り捨ててよかったのか、元の集落の人間をどうにかするべきじゃないのかと。

 しかし造物主はそれを否定する。

 そんなヒロフミの考えや常識に疑問すら抱いていた。

「そもそもさ、誰がそんな事言い出したの?

 慈悲やら慈愛やら。

 そりゃ、助け合ってる者同士とかなら分かるけど」

「いや、だって、そういうもんじゃないの?」

「何が?

 別にそういう決まり事があるわけじゃないよ。

 少なくとも俺はそういうの作ってないし」

「え…………」

「そもそも俺は世界は作っても、その上で誰が何をどうするかなんて決められない。

 これは前にも話したと思うけど。

 だから、君やあそこで生きてる者達がどんな振る舞いをしようと否定出来ない。

 まあ、発展や繁栄を阻害するような事はしてほしくないけど。

 もし出来るんなら、君が拒絶して排除した連中を真っ先に消すよ」

 さらっと恐ろしい事をあっさりと言う。

「俺は確かに世界を作ったけど、別に慈悲とか慈愛とかいうのをもたらしてるわけじゃないしね。

 負担にしかならないのなら、そんなものをさっさと消すよ。

 というか、そもそも神が人を救うってのが分からないんだけど」

「…………」

「それ、たぶん前の世界での話でしょ。

 で、神が救うみたいな話になってると思うんだ。

 でも、別にそんな取り決めなんてないよ。

 虐げたり蹴落としたりはしないけど、救いもしないし」

 あくまで世界を作っただけであり、作るだけしか出来ないならそんなものだろう。

「そもそもなんだけど。

 神が救うとか言ってて、実際に神が救ってたの?

 そっちの世界見ても、君の話を聞いても、救ってたのは人じゃん。

 神が救うなら、神が出ていって助けなきゃ駄目でしょ。

 それが出来てないって時点で、神の救済なんて無いって事じゃん」

「あ…………」

 言われて知った。

 確かにそうである。

 助けていたのは人間であり、神ではない。

 なのになんで神の救済だなんだという話になるのか。

「それもそうだな」

 言われてあらためて感じた。

 確かにそこはおかしいと。



「あと、助け合いって意味で慈悲とか救済とか言うならいいんだけど。

 でも、助け合ってたの?

 一方的に助けてただけじゃん、話を聞くと」

「まあ、確かに」

「それってさ、略奪とか搾取って言うしかないよ。

 どちらか一方が片方に奪われてるようなもんなんだから。

 提供とか貢ぐとかでもいいけど。

 でも、それでどんな見返りもらってたの?」

「…………無いな」

「うわ、最悪だ」

 造物主は手を額にあてて上を向いた。

「じゃあ、助けるというか、提供する意味ないじゃん」

「確かにそうだな」

「しないで良いのにやるわけか?

 そっちの方がおかしいだろ」

「言われてみれば確かにね」

 そこは確かにそうである。

「何かしないとまずい理由でもあったのか?」

「理由ってのは特にないかな。

 なんとなく、そうした方が良いって考えてたから」

「なんで?

 誰かに言われたのか?」

「いや、そうでも……。

 でも、子供の頃からそう教えられてた気はするな。

 何かのおりに」

「そう言い聞かせられたから条件反射で、って事なんだろうな。

 でも、やらなくても特に何もないんじゃないのか、そういうの」

「まあ、あまり良くは思われなくなるくらいか」

「いや、それって最悪だろ」

 造物主は更に顔を歪ませていく。

「悪評がたつって、完全に制裁じゃないか」

「え?」

「そんな評判建てられた奴に、誰が近づくんだ?

 それこそ救済や援助どころか、共同作業とかにも参加出来なくなるじゃん。

 完全な排除行為だぞ、それ」

「あ…………!」

 再び気づいた。 

 確かに物理的な痛みを伴うような罰ではない。

 しかし、その後の生活が著しく損なわれる。

 共同生活から切り離される事により孤立化し、生活の負担は極度に増大する。

 例え集団の中にいようとも、極論すれば原始時代並の生活を強いられることになる。

 他の者から切り離される、絶縁されるといはそういう事だ。

 それが評判一つで行われるのだから、確かにこれは大きな処罰と言える。

「助けなけりゃ制裁するって事にしか思えんぞ。

 もう、そうなったら脅迫じゃないか。

 慈悲や慈愛なんて言ってるけど、とんでもない圧政や抑圧だぞ」

 その言葉をすんなりと受け入れてしまう。

 反論する材料がないのだから当然だろう。

 言われてる事に全て納得してしまえるのだから。



「助け合いっていうなら、提供した分をちゃんと返してもらわないと駄目だろ。

 同じものが返ってくることはないにしても、別の形で何か返さなくちゃ」

「確かにな」

「だからお前さんも、あそこで元の集落の連中を排除したんだろ」

 その通りである。

 ヒロフミが元の集落との縁を断ち切ったのも、一方的な強奪や収奪が理由だ。

 そんな事をする連中とは付き合えない。

 互いに納得が出来る、損が出ない形でのやりとりをしようとしない者などは敵でしかない。

「だから、お前さんのやった事は間違ってないと思うぞ。

 少なくとも、被害を拡大させる事はなかったんだから」

 造物主の言葉が正しいかは分からない。

 だが、その言葉が今は救われる思いだった。

「だからこっちに引き込んだんだしな」

 本日、あと一つを投稿予定。

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おまえら、教えやがれ
  ↓
  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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