辿り着いた先で
カエデとスズと一緒になった悠真たちは、遠くに見えてきた中継都市へそのまま馬車を走らせていく。
街の姿が徐々に大きくなり、門の様子も見えるようになってきた。
そこで悠真は、少し目を細めた。
「ん? なんか門の前に人が並んでない?」
「風の龍核兵ちゃんを飛ばして確認します〜。」
フィルの肩に乗っていた風の龍核兵が翼を広げる。
次の瞬間、ふわりと宙へ舞い上がり、中継都市へ向かって飛んでいった。
フィルは龍核兵を通して門の様子を確認する。
「騎士団の皆さんが並んでます〜。」
「え? 何かあったのかな?」
「あ! ミリアちゃんが居ます〜。でも、リシェルさんの姿は見えないですね〜。」
フィルが悠真の方へ振り返る。
「そうなんだ。とりあえず、行ってみよう。」
「はいです〜。」
悠真はそのまま馬車を門へと走らせた。
◇◇◇
門の前までやって来ると、並んでいた騎士たちの中からミリアが歩み出てきた。
「お疲れさまであります。」
「ミリアちゃん、また会えたです〜。リシェルさんは〜?」
「リシェル隊長は王都に居ます。私は皆さんをお待ちしておりました。」
「どうしたの?」
悠真が尋ねると、ミリアは姿勢を正した。
「私はリシェル隊長の部下ですが、普段はここ、中継都市メソヴェリア勤務であります。」
「そうだったんだ。」
「そして、先日の雨による河川の氾濫から街を救っていただいたという知らせを受けまして、こちらでも皆さんの宿を用意してあります。」
「ホントですか〜? 嬉しいです〜。」
フィルがぱっと笑顔になる。
「自分が案内しますので、ついて来てください。」
「わかった。ありがとう。」
「いえ。流された橋も直していただいたようで、こちらがお礼を言う立場でありますから。」
悠真は頷くと、ミリアの案内に従って馬車を進めた。
悠真たちは、街の中をゆっくりと馬車で進んでいく。
しばらく進むと、ミリアが一軒の建物の前で足を止める。
「こちらであります。」
悠真も馬車を停め、目の前の建物を見上げた。
「え? ここ?」
「わ〜。大きい建物です〜。」
「はい! であります。」
目の前に建つ建物は、明らかに普通の宿ではなかった。
広い庭を備えた、大きな館。
「なんか、すごく豪華で大きくない?」
「はい。元々貴族の方が使っていた館を買い取り、悠真さんたちに使っていただくことになりました。一通りの家具も揃っていますので、大丈夫であります。」
「え? こんな大きい館を? 掃除とか大変じゃない?」
「そこは大丈夫であります。こちらで人員を用意してあります。」
悠真たちは庭へ馬車を停め、館の中へと入った。
すると玄関ホールには、執事らしき男性と数名のメイドが並んでいた。
中央に立っていた男性が一歩前へ出て、悠真たちに深く頭を下げる。
「お帰りなさいませ、悠真様。私は執事長のルクスと申します。御用の際は、何なりとお申し付けください。」
「メイドさん、いっぱいいます〜。」
フィルが辺りを見回す。
「なんか、すごいわね。」
ツバキも少し驚いた様子で館の中を見渡した。
「広いおうち〜。すご〜い。」
スズは目を輝かせている。
「なんだか落ち着かないね〜。」
カエデは苦笑しながら呟いた。
「ガハハハ。お前は相変わらずだな〜。」
「あんたには、言われたかないね。」
「とりあえず、俺は風呂に入るからエールをくれ。」
そんな中、ゼノンだけはいつもと変わらない。
「かしこまりました。お風呂も御用意してございます。すぐにエールをお持ちいたします。」
ルクスがそう告げると、数名のメイドがすぐに動き出した。
「お荷物をお預かりいたします。そのまま皆様をお部屋へ御案内いたします。」
メイドたちはそれぞれの荷物を受け取ると、悠真たちを各々の部屋へと案内していった。
◇◇◇
悠真はルクスの案内で、館の中を見て回っていた。
いくつもの部屋を案内され、ダイニングへと着いたところで、ルクスが悠真に尋ねる。
「本日のお食事は、いかがなさいますか?」
「夕食か……。」
悠真は隣を歩いていたフィルを見る。
先ほどミリアと夕食を一緒に食べる約束をしており、ミリアはその後、任務へと戻っていった。
「フィル、どうする? ミリアと夕飯を食べる約束していただろ?」
「ん〜。」
フィルが少し考えていると、ルクスが口を開いた。
「それでしたら、こちらでご一緒にお食事をなさるというのはいかがでしょうか。」
「あ、いいですね〜。そしたら、一緒にお風呂に入って、お泊まりも出来ます〜。」
「いいんですか?」
「もちろんでございます。」
ルクスは静かに頭を下げる。
「では、すぐに用意させていただきます。それまでは、どうぞごゆっくりお過ごしください。」
「ありがとうございます。」
悠真はルクスと別れ、自分の部屋へと戻った。
「それにしても、部屋も広いな〜。」
大きなベッドへ腰を下ろし、そのまま仰向けになる。
「ちょっとだけ休むか……。」
悠真は目を閉じた。
旅の疲れもあったのだろう。
そのまま、いつの間にか眠りについていた。
しばらくして――
(ゴーン。)
眠っている悠真の身体が淡い光に包まれていく。
そして、その姿は光とともに部屋から消えていった。




