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323.煙草とお薬

煙草の有名な産地は九州と東北なのです。

昔は熊本でも結構広い範囲に煙草畑あったのだけど、気が付いたら以前煙草畑だった所には何かデントコーンとか植わってるようになったので、まあそういう事なのでしょうね……という寂しさを心に抱いて書いたお話、というわけではない。

ちなみに、この世界の熊本にTSMCは誘致されてない。井貝が流入する危険な地域だから、工場とか向かない、という設定。

 ここ一ヶ月ちょっとの間に起こっている異界の流入の原因、地獄の花の生薬。

 その生薬を作って悪用していた組織だか団体だかの構成員が聖女に会いたいと言う。


「高校で地獄の花を栽培していた奴なんだよな? 若いのか?」


「若くはないけど戸籍は父親の方が異界人で、母親と本人は日本人だったよ。四十二歳。彼は青年団の団長の直属だから、逃げるに逃げられないし、舎弟たちを見捨てられないしで悩んでたんだって」


 年齢は思っていたより言ってるが、完全に日本産まれ日本育ちのようだと納得するサトル。

 しかし所属しているとされる組織は一般的な会社などではないらしい。


「うん? 青年団なのか」


 問えば答えるツカサ。

 その言葉にサトルはちょっと待てと話を遮る。


「うん、合志とちょっとだけ菊池にまたがる地域の普通に一般市民してた人たち。一応彼は農家さんだよ」


 ツカサの返事サトルは思い切り眉根を寄せた。


「とりあえず地図を見せてくれ」


 この場でサトルだけが熊本が地元ではないので、地域の名前だけでは話が進まなかった。 

 ユカリがすぐにタブレットに熊本の地図を映す。


 合志市は熊本市の北東に接する市。農業が盛んで、以前は大規模な煙草の栽培が行われていた。菊池や大津と言った他の農業の盛んな地域とも接している。

 

 熊本県は中心市街地のある熊本市が極端に発展し、周辺の市町村はやや閑散としていることが多い。そんな熊本市と接しているのでベッドタウンとしても人気のある地域だが、そのせいで歪な発展をしており、県内唯一集配郵便局が無かったり、娯楽や生活必需品以外を熊本市に買いに行くという傾向があるため、市内に書店が一切ない、出版大国である日本の中ではかなり珍しい地域だ。


 つまりは住人の出入が常に有り、それでいながら若いうちにその地域に閉じ込めれば情報の規制をしやすくもある。


「あ、合志ってここか。へえ、思ったよりも近い所からなんだね」


 もっと遠い所から来ていたと思ったとクロエ。


「先祖の故地を求めて、ってやってるのは主に年嵩の人たちだったんだって。昔は農業で食っていけたのに、今は国の法律が変わったり税金が跳ねあがったせいで産業が潰れて、食うに困るって程ではないけど贅沢とは無縁。だから救いを先祖の故地に求めた……みたいな?」


 何やら特定の産業の事を指して語るようなツカサに、サトルは何を言いたいんだと端的に問う。


「社長、言いにくい事でも話してもらわないと理解ができない。はっきりと言え」


「たばこ産業知ってる?」


 ツカサは少し迷った様子だったが、まあ仕方ないよねと肩をすくめる。


「合志ではまだ魔法があった時代から祭祀で使うような特殊な煙草を作ってたんだよね。今は南阿蘇にあるあの薬草園も、元は花畑町から合志に移して、そこから南阿蘇っていう変遷。薬草栽培の依頼は黒江家からもしてた」


 黒江家もかかわっていた話だから口が重かったのだろうかと、サトルは納得しかけるが、どうもそれだけではなさそうだ。


「ああ……秘術の類の伝承か。もしかして」


「うん、ちょっと昔の記録調べてみたらさ、地獄の花を使った、特殊なお薬入りの煙草とかもね、ここで作ってた。今は種の回収も済んで、栽培なんかできないはずだったんだけどね、隠して栽培してたのか、それともどこかで休眠でもさせてたのか、いずれにしろ……緑川や黒江が囲ってた異界人が元なんだよ……でも今は緑川も黒江も庇護下に入れていない。自由を保障していると言えば聞こえはいいかも知れないけど、見捨てたと取られても仕方ないんだよねえ」


 もしかしたらこれは黒江家への復讐なのかもしれないと、ツカサは考えていたようだ。

 しかしサトルとしてはそれにしては時期がおかしいと否定する。


「緑川や黒江がその異界人たちの産業に口出ししなくなったのは、どちらかと言うと戦後だろ? その当時を考えるとたばこ産業は、小売りを寡婦の補償に当てるくらいには安定して儲けが出ていた産業だったはずだ。原料の栽培者も十分社会基盤を確立させうるだけの収入があっただろう? 煙草の税金が上がったり、煙草による人体への悪影響が強く言われるようになったのは近年だ。復讐にしては時間が空きすぎている」


 それに黒江家への復讐だとしたら、いくらなんでも無差別攻撃すぎるともサトルは考えていた。

 むしろ地獄の花の力を使った実験を繰り返し、自分たちが望む結果を引き出そうとしているようにも見える。


「過去の栄光を取り戻したくて、異界の流入推進してんのかもな」


 クロノがキャベツの切れ端を口に引っ掛けながら鼻を鳴らす。


「アレだろ? ガチャってやつだ。地獄の花使って異世界ガチャやって、その内自分たちの思う通りのことができる何かが出て来るんじゃねえか、ってやってんだろ?」


 人を馬鹿にするようにケラケラと笑って見せるクロノ。

 クロエはそんなクロノの額を手で押さえる。


「クロノ、人はそこまで愚かじゃない。確かに行き当たりばったりのように見えるけど、すべてが運任せじゃないよ。愚かではないけど、もっと具体的な悪意はあるようにも見えるし」


 クロエとしてはクロノの言うような運任せの蛮行と言うよりも、ツカサが懸念している黒江家への復讐の方が納得いく話だと感じていた。

 シロノがクロエの言葉に同意する。


「ん、むしろわざわざ異界に拘る理由、ただ世界の罅でなく生物を呼び込む術も一緒にかけてある。熊本を混乱させようとしてる様に見えるが……そうなれば自分たちの生活も立ちゆくまい」


 元魔王から見ても地獄の花を使っている者たちの行為は、自滅を顧みない復讐に近いと感じるようだ。


「……自滅かあ……夏が終わっちゃうから、焦ってるのかな?」


 ツカサが溢した言葉に、その場にいた皆が書類棚の横にかけられたカレンダーを見やる。

 八月も半ばを過ぎ、もう夏休みは二週間も無い。

本日の更新もこれだけ。明日も一回更新です。


若干の嘘と本当を混ぜて書くのが大好きです。

話を書き始めた当時(2019年)合志に調べられる範囲で書店がなかったのも本当。

煙草の小売りが戦後の寡婦の専売だったとかも本当の話。タバコ屋のお婆ちゃんという昭和の風景の真実がここに!

タバコと言えば、洋画や洋物の小説では、特定のキャラクター色を出すアイテムです。金持ち、悪役、アウトロー、暴力、そういった、一般的な「普通を逸脱した」アイコンだったそうです。か(特に2000年代のハリウッドその傾向強い)

日本ではなぜかそれが通用しない時代がありました。

脳の血流上げるドーピング剤として、一般の勤め人が使用しまくってたからです。

タバコ、本来は薬物扱いでもおかしくないくらいちゃんと薬効と副作用のある薬草や毒草の類いなんですよね。

今日本では若干アウトロー表現に近くなってるけど、何故かそこに「色気」が付随している謎。タバコ表現は奥が深いのです。

本作品ではさらにそんな物語中の表現よりさらに以前の、魔法に使う薬物として取り上げてみました。

まあ森野喘息あるからタバコは吸えないのですが。ロマンがあると思ってます。

合志市は温泉もあっていい所です。のんびりできるしマンガミュージアムもあるしいい所です。

菊池はすごく面白い(奇妙)なところです。菊池は凄いよ菊池……オープンで明るくて何一つ因習村っぽくないのになぜか因習村っぽいという。

気になる人は調べてみてください、菊池の一族に付いて。

民族や風俗に付いて研究する時にも出来る菊池一族。

文学でも出てくる菊池一族。

攻城戦、籠城戦で調べても何故か出てくる菊池一族。

なんか気が付いたらそこに菊池一族......。


宣伝ほぼしてないし、読んでくれる人少ないし、好き勝手しまくってますが、これは全て地元愛から来るものなので、許してほしい熊(自認)なのです。

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