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320.クロエとヤバい魔法

春を堪能しております。

ひな祭りですね。

森野は下通に飾ってあるお雛様を見ながら桜っぽい何かを口にしつつ季節を感じようと思います。

 クロノを黙らせ、クロエはツカサにエーデルの容体を聞く。


「今は、どうしてる?」


 ツカサは少し考えて答える内容を絞る。


「病院のベッドの上。ルイちゃんとシオリさんが今も付いてるし、命に別状はない。失われた手足はそのうちどうにかするよ。彼女には万全でいてもらった方が良さそうだし」


 外傷や衰弱はもちろんなのだが、体の中がどうなっているかや、精神状や、感染症だとか他にも気にするべき場所はあるだろうが、その辺りは特に言及せずに答えるツカサ。

 失われた手足をどうにかする、という言葉に不穏さを感じて、クロエは首を傾げ胡乱に問う。


「出来るの?」


 義手や義足をあてがう、と言うのとは違う気がする。

 手足の再生など、現代の医療ではできないはずだとクロエ。


「うん、流石に生贄の儀式的なことが必要になるけどね」


 答えるツカサの顔には、作ったような笑み。

 いつもの綺麗な作り笑いと違い、わずかに口の端が引きつっている。


 生贄、その言葉の意味をそのまま受け取るなら、つまりはそういう事だろうと、クロエは責めるように厳しい表情をツカサに向ける。


「なるのか……何を使う?」


 流石に人を使うと言う事はないだろう。

 だが、動物の命くらいは必要になってくるはずだ。


「豚肉と屠畜の際の魂だね。正確には、豚の骨付きのあばらのお肉と、鶏肉の加工工場でどうしても出ちゃう、屠畜の際の余剰エネルギーね。最近魂が肉体から抜け出る時に何故魔法が発動するのか、っていう研究の論文が出てね、それで古い魔法に時々出てくる生贄の儀式の必要性ってのが分かったんだよ。まず肉体の材料として補填する物質が必要でしょ。次に魂が肉体から離れて不安定になって砕ける時に出てくるエネルギーが、所謂魔法を使う時に必要なエネルギーになるみたい。地獄の花の生薬のために取り寄せた論文の中にあったんで、それ利用して簡易だけど、緑川と三毛氏が術式組み立てたんだよね。そしたらそれが思いの外使えてさあ」


「……は?」


 ツカサの言葉を理解できず、クロエが固まる。

 しかしツカサは容赦なく情報を垂れ流し続ける。


「流石に鶏一、二羽程度じゃ、生存してた年数短すぎてそこまでエネルギーないけど、流石に何百、何千もってなると、かなり効率的にエネルギー使えるね。豚肉は一番人間の組成に近いから、分解してくっつけて手足の形を取らせて、後は年単位で置き換えて本人の体にするよ。実は実験も成功済み。と言っても指先と永久歯なんだけど今のところ不具合はないし、遺伝子は新しく生えてきたけの毛根からちゃんと本人のが検出済みだよやったね。因みに三毛氏の人が数人がかりで出来る儀式魔法なので、医療じゃありません。保険適用不可」


 クロエは頬を引きつらせつつ周囲を見る。

 ユカリはとてもいい笑顔でサムズアップを決めている。

 どうやらこのとんでもない魔法だか魔術だかは、ユカリも開発に関わっているようだ。

 その横ですまし顔であえてクロエとは視線を合わせないサトルも、きっと何から関係があるのだろう。

 ツカサの膝の上でシロノ髭を立ててサトルの顔を見上げている。


 クロエは前世の記憶を探りながら情報を整理する。

 肉体の欠損を回復する魔法が、前世の世界にも一応ありはした。

 ただその魔法は聖女として神々の使徒の協力を得ることが出来なければ使えない秘術のような物であったし、使える日にちも夏至と冬至年二回。場所もいちいち制約があったなとクロエは思い出す。


 そう言えばその秘術の際には、夏至と冬至の祭りがおこなわれている場所であることが大前提だった。

 秘術に人の生命エネルギーの漏れ出た余剰分を使っていたからだ。

 魔法と人の肉体の結びつきが今の世界よりもずっと強くて、聖女の秘術が使えなくとも、本人が魔力の使い方をしっかりと弁えていれば魔力で欠損を補えた。

 それと同じような事をしているのが今の黒江司だということも分かっている。


 ならば、魔力で補っていた欠損部分を、組成が似ているという豚肉に置き換えただけとも言えるかもしれない。


 クロエは自分の中の何とも言えない気持ちに折り合いをつける。


 そう言えば聖女の秘術に付いて、サトルに話したことがあった気がする。

 情報蒐集からの利用に長けているサトルならば、その話から魔法を作り出すまでの道筋を立ててもおかしくない。

 ただ、サトルにその話をしたことがあったのは、まだクロエが五歳で、こちらの世界の語彙力をしっかりと取り戻していない時だったので、あんまりはっきりしたことは話せてなかったはずなのだが。


 クロエは内心でぼやく。

 普段はあれほど無欲なのに、何て貪欲なのだろうと。


「当たり前だよそんなの……。と言うか何処でやるんだ何処で」


 祭りのエネルギー代わりの屠畜場にしても、そんな術のための場所を提供してくれるところなんてあるのかと、クロエは呆れ半分で聞いてみるが、その問いを受けても自信満々なユカリの様子から、問題無く場所が選定されている事を知る。


「ふ、ふふ……大丈夫。治療を受ける本人が魔法の知識と不可能なんだけどね。凄いよねえ、普通失った手足なんて早々戻るもんじゃないと思ってたよ。やる場所は東京、実験に成功したのが誰かは企業秘密」


 クロエの狼狽からの震え声で、ツカサは肩を震わせ笑いをこらえる。

 先ほどの作り笑いは、別に都合の悪い事を隠していたのではなく、開示する情報でクロエが度肝を抜かれるだろうことを考えて笑いそうになっていたらしい。


「まあすぐに治療するってわけにもいかないから、エーデルの体調見ながらだね。一年くらい養生に費やしてもらうかも」


 前世での聖女の秘術は完全に時期と場所と聖女本人の知識で成り立っていたので、そういうところは前世の世界よりも不便なんだなとクロエは納得する。

 乱用できる術でないことは何よりだ。


「まあ、それで助かる人がいるんだったら……僕が取役いうのはお門違いだったのかもね」

本日の更新もこれだけ。

明日も一回更新です。

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