最終話 女神の祝福
◇◇◇
「テレサ・ローレンスによる、国と民に対する多大なる貢献により、ローレンス家に伯爵位を贈り、また、当主たるレオン・ローレンスを伯爵に叙する」
「身に余る光栄、謹んで承ります」
王の言葉に、列席の貴族たちから、ワッと歓声が上がる。
今日はレオンの叙爵と、テレサの聖女就任が一度に行われる日。謁見の間にて、大勢の貴族たちに見守られ、最初にレオンが国王から伯爵の位を授けられた。
「僕は何もしてないのに、嫌なんだけど」
と明らかに嫌な顔をするレオンを、聖女を輩出した家に何もしなければ、王家の立つ瀬がないからと宥めすかし、ようやく了承させた。そして、テレサにいつでも会えるようにと、王都に屋敷と、王都近くに新たに伯爵領を与えられることになった。
直前まで不満を口にしていたレオンだが、儀式の間は、王都の貴族令息顔負けの凛々しさで、そつなくこなしている。
テレサに良く似た、輝く黄金の髪とアメジストの瞳を持つレオンの美丈夫ぶりに、貴族令嬢の目は釘付けになっていた。
「はぁ、レオン様……なんてかっこいいの……」
「あんなに麗しい方が、この世に存在するなんて……」
その中には、すっかり回復したリリアーヌも含まれていた。
「レオン様……素敵……」
けれども、聖女の正装を身に付けたテレサがユリウスにエスコートされて入室してくると、誰もがその美しさに、息をするのも忘れて見入ってしまった。
腰まで流れる艶かな金糸の髪に、輝くように白く滑らかな肌。そして、夢見るように神秘的なアメジストの瞳。何よりも、彼女の纏う清浄な空気が、特別な存在であると物語っていた。
「聖女様……」
「聖女様だ……」
口々に呟いた後、誰もが自然と頭を垂れる。テレサは会場を見渡し、並んで立つカールとイザベルを見つけると、にっこりと微笑んだ。
そっと頷くカール。イザベルは息子と娘の晴れの姿に、ハンカチで目頭を押さえていた。
「テレサ・ローレンス。貴殿のこれまでの多大なる貢献に感謝するとともに、この国と民を守る守護者として、大聖女の称号を与える」
「謹んでお受けいたします」
唯一無二の聖女として、歴代最初の大聖女の位を授かったテレサに、貴族たちは最大限の敬意を持って礼をする。
「そして、喜ばしいことに、王太子ユリウス・アレクシオスと、テレサ・ローレンスの二人は、この度婚約することと相成った。皆には、若い二人を支えてやって欲しい」
ワッと上がる歓声。
テレサとユリウスは、手を繋いで微笑み合う。
王宮を出ると、王都の至る所に花が飾られ、二人を祝福していた。花で飾られた馬車に乗り込む二人。レオンとイザベル、カールが、次の馬車に乗り込むと、馬車はゆっくりと走り出す。
天からひらひらと花びらのように舞い降りる優しい光。光が触れた先から、一つ、また一つと花が開く。
女神の祝福に、絶え間ない祝福の声。
「何だか嘘みたいです」
テレサはポツリと呟いた。王都を出たときは、こんな風にまた王都に戻ってくることになるとは思わなかった。
「もしこれが夢だったら、永遠に覚めないで欲しいな」
ユリウスがテレサを強く抱き締める。
これからの生活に不安がないかと言われると嘘になるけれど、きっと大丈夫。
多分、馬小屋で寝起きするよりはずっと暖かいはずだから。
テレサはユリウスの優しい温もりに包まれながら、朝からの準備に疲れ果て、こっそりあくびを一つするのだった。
おしまい
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
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番外編を書いているので、ぜひブクマもそのままで。
現在こちらの2 作品を連載中です。
「貧乏公爵に嫁いだ成金令嬢ですわ!」
「敵国の王に白い結婚で嫁いだ冷遇姫ですが、なぜか溺愛されています〜えっ?あのとき助けた亀はあなたでしたの?〜」
それぞれまた違ったタイプのお話なので、そちらもぜひ、読んでみてくださいね〜。




