33 春の気配
◇◇◇
「まぁ、ユリウス殿下が側にいてくださったら嬉しいわ」
無邪気に、にこにこと微笑むテレサ。
「……一生ですよ?」
「ええ。ずっと一緒にいて下さいね」
(だって、ユリウス殿下は初めてできたお友達だもの……)
けれど、
「テレサ嬢!愛してます!!!一生大切にしますから!」
感極まったユリウスに、いきなり抱き上げられ、くるくると回されるテレサ。
「殿下!おめでとうございます!」
「想いが通じてよかったですね!殿下!」
「ありがとう、皆!」
わぁ〜と上がる歓声に、あれっと思うテレサ。
(えっと、今愛してるって言われたってことは、もしかして、さっきのはプロポーズだったのかしら)
はたと気が付くテレサ。けれども、泣きながら喜んでいるユリウスの顔を見て、まぁいいか、と思い直す。
最初から、ユリウスはずっと、テレサのことを大切にしてくれたから。
幼い頃、足の治療をしてあげた男の子を思い出す。そう言えばあのときも、ちょっぴり涙ぐんでたなぁ。
「私、殿下のこと思い出しました。神殿の裏庭で、転んで足を怪我してた男の子、ですよね」
「君には、カッコ悪い所ばかり見られてるな……」
顔を赤く染めるユリウス。
「いいえ。痛みを我慢して、偉いなって思いました」
「実はあのとき、君に恋したんだ。ずっと、優しい君の姿が忘れられなかった。天使みたいだって、本気で思ったんだ」
「あんなに、ボロボロだったのに?」
「君はいつだって、最高に綺麗だ」
ユリウスの真っ直ぐな言葉に、テレサも思わず頬を染める。
その様子をみて、ますます盛り上がるメイドたち。
「すぐに結婚式の準備を!」
「いえ、まずは陛下に報告しないと!」
そこに、ローレンス領から到着したレオンとイザベルが、カールに連れられてやって来た。
ユリウスに、抱き締められているテレサを見て、目を剥くレオン。
「ちょっ!何やってるんですか!姉さまから離れてくださいっ!」
「あらあら……」
すっかり元気になったイザベルを、さりげなくカールがエスコートする。
「イザベル、長旅でしたが、疲れていませんか?」
「ええ。ありがとう、カール」
いつの間にか名前で呼び合っている二人にも、イライラするレオン。
「ちょっ!そこも!息子の前でイチャイチャするのやめてよね!」
そこかしこで、春の気配が訪れていた。




