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50話 ドキドキの魔物討伐1

ナターシャ、そしてエマルシア。

その二人とのドキドキハラハラの会食を終えた後――

なんとかラングのレベル上げのためのパーティが結成され、無事に魔物討伐へ出発することが決まった。


まず声をかけたのは、魔道具製造部のドグマとマニフェス。

まだ部屋の改修を控え、本格稼働には至っていないとはいえ、二人は二つ返事で協力を申し出てくれた。


次に声をかけたのは、菜園の拡大で目覚ましい活躍を見せているイワン。

これまでのフィールドワークの経験を買って頼んでみたところ、ぜひ力になりたいと快諾してくれた。


そして、“共同作業”という謎ワードで自ら参戦を表明していたナターシャも加わり、

こうしてラングを含めた5人の討伐隊が編成されたのだった。


* * *


とはいえ、普段外界と無縁な生活をしているラングやドグマが、武器や防具を持っているはずもない。

マニフェスに至っては魔物討伐などまったくの畑違いであり、状況は似たようなものだ。


その点、ナターシャは「なぜか」装備一式を所持しており、

イワンもフィールドワーク用に装備を常備していたため、問題はなかった。


残る3人――ラング、ドグマ、マニフェスについては、商会が保有する装備を借りることとなった。

なんでも、貨物運搬時に護衛が装備するため、それなりの数が常備されているらしい。

品質は「中の下」程度とのことだったが、ひとまずは十分だ。


ただ一つ、残念なことに――

ラングの小さな体に合う装備が見つからなかった。


そこで急きょドグマが魔物の皮を使って、ラング専用の防具を仕立ててくれることに。


「専門外だから、それなりのもんしかできないが……ないよりマシだろう」


と謙遜していたが、完成品はまごうことなき逸品。

分野外でも一定以上のクオリティを出せるあたり、やはり一流の職人は伊達ではない。

しかもその防具には、しれっと「認識疎外」のエンチャントまで施されていた。


というのも、今回のラングは“おみそ”扱い。

戦うどころか、ひたすら逃げ隠れに徹する予定だったのだ。





基本的に、今のラングは一度でも攻撃を受けたらかなり危うい。

そのため、敵の攻撃が届かない後方からの支援が主な役割となる。


――とはいえ、「がんばれ~!」とか「今だ、かわしてっ!」と声援を送る程度なのだが……。

それでも、今のラングにできる最大で唯一の支援。だからこそ、自信と誇りをもって全力で取り組むつもりだ。


パーィーティメンバーにはラングのスキルで能力が底上げされること、

さらには各自のスキルやシーツも強化するから自信を持って戦って欲しい伝えてある。



現在、順調に成長中のスキル【言霊】の補正効果は、組み合わせ次第で“100倍”を超える域に達している。

ここまでくれば、もはやラングの支援が「物足りない」などと言う者はいないだろう。


* * *


ちなみにパーティの役割分担は以下の通り――


ドグマとマニフェスが前衛、イワンが中衛(やや後ろ寄り)、

ナターシャとラングが後衛に位置する。


……とはいえラングは、「隠れる・逃げる・応援する」担当。

支援と呼ぶのもおこがましいレベルである。


「女性であるナターシャさんが前線で戦うってのに、オイラはほんと情けない……」

項垂れるラングに、ナターシャがやさしく(?)声をかける。


「気にすることはありませんわ。いつも私にしてくださるように、

皆さまにも“放置プレイの素晴らしさ”を教えて差し上げればよいのですわ♪」


「ラングさん、放置プレイって何のことですか? 本当にそんなに素晴らしいんですか?」

真顔で質問してくるマニフェス。


「ちょ、マニフェスさん!? その人の言うことを真に受けちゃダメですよ!

ナターシャさんはですね、頭がちょっと残念な――いや、変なことばっか言う人なんですから!」


「それとナターシャさん、俺いつ“放置プレイ”なんてしました!? そんな誤解を招く発言やめてくださいって!」


ラングは慌てて全力で否定するのだった。




ラングにとって、今回が人生初の魔物討伐。


その日が来るのを指折り数える日が続いた。


前の晩になると緊張と不安でドキドキが止まらず、なかなか寝付けなかったようだ。


「命、大事に」――その言葉を胸に刻み、迎えた出発の朝。


* * *


空き地を抜け、かつてバイオレンスチキの住処だった場所に足を踏み入れると、

そこはあのときの混乱を物語るかのように、羽毛があちこちに散乱していた。


いまやすっかり商会の家畜となり、懐いたバイオレンスチキたちは、

卵の供給源としても欠かせない存在になりつつある。

生まれたばかりのヒヨコたちも、ラングの後ろをついて回るほど懐いている。

そんな彼にとって、この光景はあまりにも胸が痛んだ。


「……あの時、助けられなくてごめんね」


心の中で静かに詫び、犠牲となったチキたちの冥福を祈るラング。


そうして、一行は鬱蒼(うっそう)とした密林の手前までたどり着いた。

この先は、いつ魔物と遭遇してもおかしくない危険地帯――まさに魔境だ。


ここまでの道中で、戦闘時の連携についてはすでに打ち合わせ済み。

あとは、踏み出すだけ。


さあ、いざ出発!


* * *


密林の内部は、木々の隙間に下草が密集しており、非常に歩きづらい。

当然ながら、整備された道などあるはずもなく、わずかに獣道のような痕跡が見える程度だ。


一行はその痕跡を頼りに、藪をかき分けながら慎重に進んでいく。


しばらくすると――


「……注意して。何か近づいてきます」


気配探知に長けたイワンが低く警告する。

一気に場の空気が張りつめた。


その直後、前方の茂みがガサリと揺れ、

ウサギによく似た魔物が姿を現した。


それは、額に一本の角を持つ、小型の魔物だった。


「キラーホーンラビットです! 見た目はかわいいですが、かなり攻撃的な性格をしています。

うかつに間合いに入ると急襲されます。一定の距離を保ち、弱らせてから一気に叩きましょう!」


イワンの指示に、すぐさま陣形を整える一行。


「みんな、これが栄えある初戦です! 頑張りましょう!」


ラングはスキル【言霊】を発動し、そう叫ぶやいなや、大急ぎで距離を取り、木の陰に身を隠した。


「アースウォール!」


ドグマが土魔法を唱えると、地面から土壁がせり上がる。


「マテリアルチェンジ、ハード!」


続けてマニフェスがその土壁を強化。

瞬く間に、厚く硬い防壁ができあがった。


キラーホーンラビットは突然目の前に現れた壁に驚き、

勢いのまま大ジャンプ。壁に激突し、その場でひっくり返って痙攣し始めた。


「……今だ」


ドグマが駆け寄って魔物を足で押さえつける。


「ラング、早よせい!」


チラリとこちらを見て声をかけられたラングは、木陰から飛び出して――


「よいしょっ!」


と叫びつつ、拾っていた石を魔物の体に命中させる。


それを確認したドグマは――


「どっせぇぇぇい!」


気合とともに斧を振り下ろし、魔物の動きを止めた。


初めての戦闘は、こうしてあっけなく幕を閉じたのだった。





即席パーティにしては、まずまずの連携だった。

皆が安堵の表情を浮かべて一息ついた――そのとき、異変が起きた。


どこかに潜んでいたもう一体のホーラビットが、突如ドグマに向かって突進してきたのだ。

完全に不意を突かれたドグマは、避ける間もなく鋭い角を正面から受け――るかと思われた。


だが――地面に倒れたのは、魔物の方だった。


激突したホーラビットは、そのまま地面に転がり、白目をむいて気絶している。


今度も同じようにラングが石を投げ当てたのを確認してから、ドグマがすぐ側の木をめがけて蹴り飛ばし、始末した。


どうやら突進の衝撃で、ホーラビットの角は折れ、防具には小さな穴が開いていた。

商会から借りた装備とはいえ、まともに刺さっていれば無事では済まなかっただろう。


だが、ドワーフ特有の頑強さに、ラングの【言霊】による強化が加われば――

例え魔物の猛攻でさえ、致命傷にはならないのだと証明されたとも言える。


……まあ、作戦はうまくいった。

――ということに、しておこう。




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