第19話 母のインタビュー
「先輩見て下さい!これ先輩のお母様のインタビュー記事ですよ!一緒に見ましょう!」
普通にお母さんと呼べばいいじゃんと少し思いつつ俺は後輩が見せてくれたネット記事を見ると、たしかに俺の母本人のインタビュー記事のようだ。
実は俺たちが動画投稿を初めたことでかなりの話題となったからか、インタビューをしたいと色々な媒体から連絡がきていた。
だが後輩が受験生ということもありまだ本格的にチャンネルの数字を伸ばす事に力を入れる時期ではなく、今はゆるく動画投稿をしていく方針でやっているので、インタビューは忙しさなどを理由に全て断ってきた。
企業達は俺たちに断られたので次の案として母にインタビューをしにいったのだろう。
後輩と一緒にインタビュー記事を読んでいく。
“先輩と後輩カップルの日常の先輩の母に突撃インタビュー!”
『インタビューを受けてくださりありがとうございます。早速質問していくのですが息子さんは小さい頃はどんな子だったんですか?』
『息子は小さい頃から少し変わった子で子供っぽい一面もあれば妙に大人びている一面もある不思議な子でした。でも昔から勝負好きで行動が型破りで自由な所は今と全く変わっていません。あ、でも昔は今と違っていつも退屈そうな顔をしていましたね』
『昔は退屈そうにしていたんですか?』
『そうですね、ずっと退屈そうにしていました。私が息子を独り占めしたくてあまり家から出さなかったのが悪いんですけどね。ずっと外はとても怖いところだと教えていました笑』
『息子がいる母のあるあるですよね笑』
『息子が凄く外に出たがっていたので小さい頃に1度試しに外に出して外の怖さを教えようとしたことがあるんですよ。怖いと思ってくれるように人通りの多い所にわざと行って。そして私の予想通り周りの沢山の女性からの視線を浴びたんですが、息子はそんな事は意にも介さず堂々としていましたね』
『昔から大物だったんですね』
「先輩は昔から先輩だったんですね。今でも周りからの視線は気にしないですもんね」
後輩が1度インタビュー記事から目を離してそう言ってくる。昔のことなのでしっかり覚えていないが、あまりに外に出かけない事に不満を持っていたし周りの視線も気にしなかった気がする。
その頃はきっと前世の記憶を断片的に夢で見ていたが、小さくてあまり理解力がなかった俺は夢で見ているのが前世だと分からず、漠然とただ夢で楽しそうにしている前世の自分に対して憧れがあったのだろう。だから人より外への憧れが強かったのかもしれない。
再度2人で記事を続きから読んでいく。
『では次の質問ですが、どんな教育方針で育てましましたか?』
『うーん…あの子に関しては育てたと言うより一緒に成長していったという感じですかね。私も最初は大切に育てていこうと思っていたんですが、大切にしすぎて駄目でした。息子が悪いことをしてもなかなか怒れなくて。逆に4歳の時の息子にもっと怒って欲しいと私が怒られました笑』
『あー息子が産まれると可愛がり過ぎて怒れないという話はよく聞きますね。息子に怒られたというのは具体的にどんな状況だったんですか』
『あの子がボール遊びで窓ガラスを割ってしまった事があったんですよ。その時に私はちゃんと見ていなくてごめんねって謝ったら息子に逆に怒られてしまったんです。悪いことした時はちゃんと怒らないとだめだよって。そしてそのあとに私に怒る練習をさせたんですよね』
『それはなかなか変わった息子さんですね』
確かに母に俺を怒る練習をさせた覚えがある。
全く怒られないと俺は行動に歯止めがきかなくなりそうだったから怒ってくれる人は絶対に必要だと子供ながらに思っていたな。
「ショタの先輩に怒られたい…」
後輩が俺に聞こえないくらい小さい声でなにかをつぶやいた。
「なにか言った?」
「なんでも無いです!」
後輩が何を言ったのかは聞き取れなかったが、いかがわしい顔をしているからおそらくしょうもないことだろう。
気を取り直し再度2人で記事を読んでいく。
『息子さんとのエピソードで楽しかったことを教えてください』
『息子を連れて色んなところに行ったことですかね。やっぱり息子とデートするのは憧れがありましたし楽しかったです。』
『おお!自分の息子とデートですか!全母親の憧れですよね。でも成長していくにつれて男の子って母親と出かけるのを嫌がりませんでしたか?』
『私の場合は息子と勝負して勝てばデートについてきてもらっていました。息子は勝負事が大好きなので勝負を持ちかけるとノリノリで絶対にのってくるんですよね笑。私は大人気なくあらゆる手段をつかって勝負に勝ちにいきました』
『どんなデートに行ったんですか?』
『カラオケ、ボーリング、水族館、温泉旅行など色んなところに行きましたね。全てが私の大切な思い出です』
母とは何百、何千回と勝負した思い出がある。
俺も俺で自分の欲しい物や行きたい場所に行くときに母に勝負をしかけていたし、母も自分の欲に素直だったので勝負に勝っていい思いを経験してからはどんどん遠慮がなくなっていき、勝負自体も息子とのコミュニケーションとして楽しんでいた節があるので毎日のように勝負していた。
でも勝負を重ねていくにつれ勝ちたくて仕込み、イカサマ、談合など何でもありになっていったのはやりすぎだったと思う。
俺はこの母との勝負で目ざとさ、勝負強さ、性格の悪さなどを学んだと言っても過言ではない。
後輩がインタビュー記事を見て少し不満そうにしている。
「私はデートでそんな所にまだ言ってないですよ!ずるいです!」
どうやら後輩は母に嫉妬しているらしい。可愛いなあ。よし、まだ受験生だから後輩には少し遠慮していたが、そんな気持ちにさせるならこれからはもっと色々なところにデートしに行ってもいいかもしれないな。
俺は後輩の頭をなでつつ、再度2人で記事を読んでいく。
『苦労したことはありますか?』
『苦労したことですか。うーん、あまり無いですね。強いて言うなら私が息子を異性として見てしまったので、どんどんかっこよくなる息子を見て自分を抑えるのが大変でした笑』
『血縁関係があるのに好きになってしまう事はよくありますからね。あまり良くないことなのでしょうけど、あんなにかっこいい息子さんなら仕方ない部分もあるかもしれませんね』
『そうなんです!仕方ない事なんですよ!でもそのせいか息子はおばあちゃん子になってしまったんですよ。息子はよく私の母の家に1人で遊びに行っていました。母は純粋に孫として息子に接していたので居心地が良かったんだと思います』
この世界には親が息子を好きになってしまったり、逆に子がお父さんを好きになってしまったり、きょうだいなのに好きになってしまうというような物語が数多く存在している。
法律では親族との婚姻は禁止されているが、逆にそれ以外は全く禁止されていないので、実際に親族なのに恋人関係になったり肉体関係をもってしまったりする人が多々いるようだ。
俺はそういう事情を理解していたので母から異性として見られることには特にどうとも思っていなかった。だからそれが原因で祖母の家に行っていた訳では無い。まあ祖母の家の居心地が良かったことは否定しないが。
俺がよく祖母の家に行っていたのは母との勝負に勝つために人知れず努力をしたかったからだ。あそこにはそこそこ大きい庭と周りに高い塀があり、頑張ってなにかするにはちょうどいい場所だった。
「先輩のおばあちゃんってどんな人だったんですか?」
「見た目だけでいうと身長が凄い大きくて顔も怖い人だったけど、俺の周りでは唯一の常識人だったから俺にとって癒やしだったかな」
「なるほど。いいおばあちゃんなんですね。でもちょっと聞きたいんですけど、先輩の中で私は常識人枠に入っています?」
俺は返事をせず無言で再度記事を見ていく。
「ちょっと!どういうことですか!私は常識人でしょ!」
『今の息子さんの活動についてどう思っていますか』
『私は息子がいきいきとしている姿を見れてファンの1人として満足しています。でも本当は同棲も許したくはなかったんですよ』
『どうして同棲を許したんですか』
『これも勝負で決めたんです。私は同棲なんてさせずにずっと我が家にいてほしかったので1番自信があった柔道で勝負しました。頭を使う勝負よりシンプルな肉弾戦が私は1番得意だったので。でも真っ向から負けちゃいました。』
「へぇーなかなか物騒な勝負しますね。そんなに私と同棲したかったんですか?ねえねえ?」
「うるさい」
実際勝負に勝つために祖母と凄く努力したので後輩が言うことは間違ってはいないが、改めて言われると少し照れてしまう。
『最後に一言何かあればどうぞ』
『たまには実家に帰ってきてね。あと女は皆狼だからあまり後輩さんをいじめすぎないように。やり過ぎると襲われちゃうからね。』
ここでこのインタビューは終わった。
「先輩!襲っちゃうぞ!」
「ふうん。はたして襲われるのはどっちかな?」
この後2人でイチャイチャして、それを見たクイーンが混ざってきたので3人でイチャイチャした。
西野鈴音
【先輩のお母様、先輩を産んでくださりありがとうございます。まあそれとこれとは話は別としてあなたの息子さんは私がいただいちゃいますね!】