第20話 餃子
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「先輩! なんだか今日は猛烈に餃子が食べたいです!」
後輩が学校から帰ってきて早々にそんな事を言う。
餃子か……作るのは少し面倒だが確かに食べたいな……よし、包むのは後輩にも手伝ってもらおう。
「いいね。じゃあ今から一緒にスーパーに行こう」
そう言うと後輩は嬉しそうに出かける準備をする。よほど餃子が食べたかったようだ。
出かける準備をすぐに済まし、一緒にスーパーへ向かう。
「先輩! 私、餃子なら無限に食えます! だからいっぱい作りましょう!」
「無限には無理でしょ」
「いけますよ! 餃子と書いて無限と読むのは私の中では常識です」
「常識のない後輩の常識かぁ」
「ちょっと! こちとらハイパー常識人ですよ!」
後輩と他愛も無いことを喋っているうちにスーパーに着いた。
スーパーで豚ひき肉、にんにく、ニラ、キャベツをかごに入れ、大判の餃子の皮を1袋入れると、後輩は追加で2袋かごに入れてきた。
「今日はこれぐらい食べれる気がします! なんたって無限に食べれますからね!」
これは流石に多い気がする。1袋20枚入りなので、60個も餃子を2人で食べられるだろうか。
「店で食べても1人前で餃子6個とかだよ。10人前分も食べれる?」
俺は全く食べ切れる気がしないので後輩に説得する。
「でも先輩。外食で餃子1人前だけ出されても全然食べ足りないですよね」
「分かる」
説得するつもりが思わずうなずいてしまった。いつも思うが1人前で餃子6個はちょっと少なすぎる。せめて10個は欲しい。
まあ食べ切れなくても次の日に食べればいいし、後輩も無限に食べられると言うので、結局3袋買うことにした。
これだけ買うなら一辺倒な味では飽きてしまうので、味を変えて作ろう。大葉、白菜、チーズなど、餃子のタネに合いそうなものを追加で買う。
ついでに家で少なくなってきた調味料などを追加でかごに入れ、お会計する。
後輩は今すぐにでも餃子が食べたいようなので、急いで家に帰る。それからぱぱっと餃子のタネを作ってしまって、後輩にひたすら餃子を包むのを手伝ってもらう。
2人でまずはオーソドックスな豚ひき肉、キャベツ、にんにく、ニラで作ったタネの方から包んでいく。もくもくと包む作業をしているからか、自然と後輩との会話が弾んでいく。
「後輩が包む餃子、中身入れすぎじゃない? ぱんぱんじゃん」
「だってぱんぱんのほうが美味しいじゃないですか!」
後輩は中身をパンパンに入れつつも、皮を伸ばしたり具を押さえつけたりしてなんとか上手く包んでいる。
後輩が言うことも分からないこともないが、俺は綺麗な形の餃子を作るのが好きだし、中身を入れすぎて焼くときに失敗するのが嫌なので、中に入れる量はほどほどにする。
「先輩はどんなタレで食べるのが好きですか?」
「俺は何もつけないで食べられる餃子が好きだよ」
「ええ! 餃子になにもつけないんですか! タレをひったひたに付けて食べるのが美味しいんじゃないですか!」
俺は何もつけずに餃子を食べるのが好きなので、それでも美味しく食べれるようにタネに塩をしっかり入れている。タネに味がしっかりついていれば、タレ無しでも餃子は美味しいというのが俺の持論だ。
「私は今までいろんなタレを付けて食べてきました。定番の醤油とお酢のタレに始まり、ポン酢、お酢プラス胡椒、塩とオリーブオイル、大根おろし、わさびと、色々試しました! どれも美味しかったので、先輩にもどれか試してほしいです!」
後輩は今言ったタレに、気分によってラー油をかけるらしい。それにしても後輩はかなりの数の餃子のタレを試しているな。ちょっと試し過ぎじゃないか?
「それだけ試すくらい餃子が好きな私なんですけど、餃子を美味しく食べれない要素が1つだけあってですね……ちょっとだけ猫舌なせいで、熱々の餃子を一口で食べれないんですよね。そうやって食べたほうが美味しそうなのに……」
後輩は「ちょっとだけ」を強調するように言う。後輩の中で猫舌というのは認めたくないことのようだ。別に猫舌は恥ずかしいことではないのに。
猫舌は食べ方が悪いとか舌の使い方が下手という人もいるが、食べ方を意識して治ったという人を俺は見たことがない。猫舌の人は、今まで通り冷まして食べるか、我慢するかしか無いのだろう。まあ餃子なら半分に割って中にタレをつけて食べれば大丈夫か。
やっと半分ほど終わったので、今度は豚ひき肉に大葉と白菜とチーズを入れたタネを包み始める。
「先輩。餃子の羽についてはどう思ってます?」
「うーん。羽はわざわざいらないかな」
「分かります! 私も絶対羽はいらない派です! でも多分私達の方が少数派な気もしています」
うーん。俺は羽があったらあったで美味しく食べるタイプなので、後輩のように絶対いらないとまで言えないな。
餃子に羽があればパリパリとした食感も楽しめて美味しいとも思っているが、後輩はそこに譲れないこだわりがあるらしい。
「先輩。これだけ皮があるなら、水餃子も作りませんか?」
唐突に後輩がそんな提案をしてきた。
「水餃子か……作ったことないな。ちょっと作り方調べてみるね」
どうやら普通に包んで餃子を鍋で1つずつ茹でればいいだけらしい。注意点としては1つずつ茹でないと皮がくっついて大惨事になるとのことだ。
「ちょっとめんどくさいけど作り方は簡単だから作ってみようか」
「わーい! やったー! 言ってみるものですね」
俺は水餃子自体を食べたことがないので楽しみだ。
「先輩。餃子の時は白ご飯派ですか?」
「うん。それ以外なくない?」
「私はチャーハンと一緒に食べたくなるんですよ。中華で合わせたい派なんで」
「なるほどね。じゃあ今日はチャーハンにするか。俺も別に絶対に白ご飯がいいってわけじゃないし。今日の夕食の予定では餃子とわかめサラダと味噌汁のつもりだったけど、まだ何も作ってない。せっかくなら餃子とチャーハンと卵スープと野菜炒めに変更して、全部中華風にしようか」
「良いですね! 家なのに外食っぽいのがなんか興奮します!」
じゃあ野菜炒めは普段より油を多めに入れてより外食の味っぽくしようかな。外で食べる野菜炒めは油っこいし。
「後輩ってさあ、餃子をタレにつけて食べるのが好きなんだよね。なんか後輩って、白ごはんの上にタレの付いた餃子をワンバウンドさせて食べるのが好きそうなイメージあるわ」
「それ、実家ですると怒られるんですよ! ご飯を汚すなって。もしかしたらそれが原因でチャーハン派になったのかもしれません。でも一度やってみた時は凄く美味しかったです。なんであんなに美味しいことが実家では禁止だったのか、意味が分かりません!」
まあ確かに行儀の良い食べ方とはいえないが、実際そうやって食べるのは美味しいから、どっちの気持ちも分かるな。
「我が家では自由に食べて良いけど、どうする? チャーハンを止めて白ご飯にする?」
「ううん……悩みますね……でももうチャーハンの口なんですよね……分かりました! じゃあ1杯分だけ白ご飯を残しといて下さい!」
こんな会話をしながら俺は最後の1つを包み、ようやく全ての餃子を包み終わった。60個も餃子が並んでいるのを見ると業者になったような気分になるな。
よし! じゃあ焼いていくか。大量に作ったから焼くのも一苦労だ。
俺は15個を水餃子にするために茹でていき、同時に餃子もどんどん焼いていく。
焼けた餃子を皿に盛っていこうとすると、家にある大皿1枚では餃子が全然乗り切らなかったので、3枚の大皿を使うことになった。
そうして出来上がった料理を2人で食べていく。
「こうして60個の餃子をお皿に出されると壮観ですね! お腹いっぱい餃子が食べられそうで嬉しいです!」
俺はまずは食べたことがない水餃子をポン酢につけて頂く。うん、普通の餃子よりさっぱりしていて美味い。食感も普通の餃子とは全然違ってツルンと食べられる。
俺が1つ味わって食べている間に後輩はガツガツと凄いスピードで食べていく。
「やっぱり餃子は美味しいですね。先輩、いろんなタレも用意しましたから試してみて下さい!」
俺が焼いている間に後輩はタレを準備していたようで、数種類のタレが机に並べられていた。
俺は試しにお酢と胡椒のタレを付けて食べてみる。うん、案外おいしいな。お酢の酸味と胡椒のピリッとした辛さが合っている。俺が美味しいと言うと後輩は自慢げな顔を見せる。
それから俺は色々なタレを試していった。何もつけずに食べるのもやっぱり美味しいし、タレを付けて食べるのも美味しい。いっぱい作ったおかげで気軽に色々な食べ方を試す事ができて嬉しい。
今度は大葉と白菜とチーズが入ってある方も食べてみる。あっさり目のタネの味に、チーズのこってりさが相まってなかなか美味しい。
後輩はタレを付けた餃子を白ご飯にワンバウンドさせて食べるやり方が思ったより美味しかったらしく、1杯分しか白ご飯を用意していなかったことを後悔していた。
そうやって味を変えつつ食べていったが、結局2人では全部食べ切れなかった。
後輩は食べすぎたのかお腹をさすりながら苦しそうにしている。
「うう……餃子なら無限に食べれると思ったのに……」
まあそりゃどんな食べ物も無限には食えないよな。
クイーンは苦しそうにしている後輩を見て、鼻でため息をついた。
西野鈴音
【餃子は無限に食べれなかったけど、コロッケなら無限に食えます!】
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