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気配の正体







装飾や壁など、全体が金色に輝く悪趣味な部屋に、これまた悪趣味としか言いようがない無駄に豪華な装束に身を包んだ、太った鬼人の男の汚い声が響き渡った。


周りより一段高い畳の上にふんぞり返ったその男が、眼下に(ひざまず)いて報告していた赤い鬼人を蹴り飛ばす。

しかし、たとえ蹴り飛ばされても赤い鬼人は決して反抗することなく、ただ淡々と跪くだけだ。


なんか、すごい偉そうなやつだな………………。

明らかに傲慢さが外見に出てるし、趣味の悪い格好もいかにも悪い将軍みたいな感じ。

とにかくダサい。

鬼人に命令してるし、あいつが黒幕と見て良さそうだ。



「あれは…………たしか、酒呑童子様直属の親衛隊の三番隊隊長、ワルーダです!なぜ酒呑童子様が座られるはずの天畳(てんじょう)に…………?」

「もはやネタだろ、その名前…………」



(わる)なの?

ワルだからワルーダなの?

信じられないと思いながらも〈鑑定〉で見ると、一文字も間違いなくそんな名前だった。

その"親衛隊三番隊隊長"ってのも本当みたいだ。


とりあえずそのネタみたいな名前が本当だった事にツッコミたいが、ひとまずそれは置いておいて。

なんでこいつに鬼人が皆従ってるかが不思議だな……………。

酒呑童子って鬼人にとって絶対的な王様、中には神様みたいに崇める人も居るくらいだって聞いた。

それなのにその酒呑童子を差し置いて、こんな傲慢な男に従う理由が分からない。


て言うかそもそも、その酒呑童子はどこに行ったのだろう。

個人的には厳重な封印が施された奥の部屋が気になるが……………。



「主、それよりアレ、やばい」

「だな」



あのワルーダとかいう輩は警戒するような実力の持ち主じゃない。

だが、そんなワルーダが使っている肘掛けに置いてある禍々(まがまが)しい水晶はやばい。


あれが散々感じていた邪悪な雰囲気を放っている張本人だ。

見るからに危ないアイテム。

イメージ的には禍々しいオーラがウゾウゾ(うごめ)いている感じ。

とにかくやばい。



おそらくアーティファクトだ。

古代の技術、ロストテクノロジーによって創られた伝説級の魔法具(マジックアイテム)


以下が〈鑑定〉によって明らかになったあのアーティファクトの解説だ。



    ────────────────



・アイテム名、"支配の宝玉"



・古代に呪いの王によって創られた呪術と怨念の塊。

呪術をベースとした支配の暗示は物理的、魔法的防御を全て無視して対象を支配する。

過去何度も破壊や浄化を試みたが、呪いが強すぎて成功した事は一度もない。



・能力 ???



     ────────────────




"支配の宝玉"、ね。

なるほど、俺達が感じてたのは呪術の………呪いと怨念の気配だった訳か。

どうりで尋常じゃないくらい邪悪な気配だと思った。

そりゃ呪いそのものだったら邪悪なのは当たり前だ。

にしても効果が分からないのは困ったな……………。

大方、催眠系統の能力なのは分かるが、最悪の場合、初見殺しもありえる。


なんでこんな馬鹿げたアイテムをこんなやつが持ってるのかが一番謎だ。

まさかそこら辺で拾ったとか言わないだろうね。

仮にそうだとしたら無法地帯すぎる。


さて、どうしたものか…………………。



「とりあえず効果があるか分からないけど、やれる事はやっておくか」



呪術は負の力。

ならば対抗できるのはそれに相反する正の力。

両膝をついた状態のまま、二人に注目されながら右手を掲げると、手が淡い白色のオーラのようなものに包まれた。




「わっ!ご主人様、それってもしかして()()ですか?」

「そ。よく知ってたね」

「えへへ………………ってあれ?なんで私、それが神気だって分かったんでしょう…………」

「知らんがな」



照れ隠しに頬をかいていたイナリが、改めて自分の発言を思い返して目を丸くし、こてんと首を傾げた。

えぇ…………言った張本人が一番驚いてどうするのさ。

まさかこれが神気だって知ってて言ったんじゃなくて、無意識に言っちゃったって事?

それはそれでどういう事だよ………。


そう、神様達のスパルタな修行によって、神界の物質で再構成された俺の肉体は神気に馴染み、ノエルと同じように神気を扱えるまでに至った。


まぁ、まだノエルほど繊細にとは行かないけどね。

もちろん地上の生き物でも漠然(ばくぜん)とならその力を感じること自体はできるので、俺がなんか凄そうな力を使ってるなぁ〜、とイナリが思うのは当たり前だ。

しかし、その力の名前が"神気"だという事は知っていないと出てこないはず。

他のと違って無意識に出てくるような単語ではない。


……………ただなぁ…………なんで言ったのか、イナリ本人も本当に分かってなさそうなんだよなぁ………。




結論、よくわからんので放置。

言ってしまえば別にどうでも良い事だからね。

今はそれよりも優先すべき事があるし。


気を取り直して、手の神気を全身に巡らせ、それからクロとイナリにも同じような感じで神気を纏わせる。



「ふわぁ〜…………なんだかぽかぽかしますぅ」

「ん。主の温もり」

「そう言われるとすごく恥ずかしいんだけど…………」



ノエル(いわ)く、神気にはその人の特徴が顕著に現れるらしいのだが……………。


………………………て言うか(あからさまな話題の変換)、神気を纏った瞬間から、呪いの気配で悪くなってた気分が少し落ち着いてきた気がする。

相反する力の神気を纏う事によって耐性がついたのだろうか。

なんにせよ、これなら思う存分行動できそうだ。



「こほんっ。…………そんじゃあ下に行くよ。イナリ、交渉は任せたからね?」

「了解ですぅ!」



にかっ!と笑顔で返事をしたイナリが、元気よく敬礼のようなポーズを取る。

………………やはりそこはかとなく心配だ。





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