逆鱗(ネタ)
ストックしてた小説のデータが消えました助けてください( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)
「……………イナリ、本当に頼んだよ?」
「そ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよぉ…………。私だってやる時はやるんですから!」
俺は心配を払拭しきれず、むんっ!と胸の前で両手を握ったイナリに再び問う。
や、ごめんね、しつこくて。
本当はイナリの言葉を信用するべきなんだろうけど、どうしても今までのイナリを見てきた感想として、またここでも何かやらかす気がしてならないのだ。
今回ばかりはイナリの残念さには自粛しておいてもらいたい。
「イナリ、あいつに向かってお願いする。わかった?」
「さすがにそれは私でもわかりますよ!?もう、クロさんが何気に一番辛辣ですぅ………。なにも子供じゃないんですから…………」
「実質子供みたいなもの」
まるで具現化した言葉の刃が深々と胸に突き刺さったかのようによろけるイナリ。
しかし、すぐに復活。
きゃんきゃん吠えて抗議するイナリに呼応するように、頭部のケモ耳がピコピコと揺れる。
若干涙目だ。
よほど無表情のクロのナチュラルディスのダメージがデカかったらしい。
まぁ、ぷんすか!と自分で口に出しているのはどうかと思うが……………。
「ふんだ!そんな事言って、胸の大きさならクロさんの方がお子様じゃないですかぁ!」
「あ」
ムキーッ!と今まで温めておいた伝家の宝刀こと、胸の大きさの話題で仕返しを企むイナリだったが、俺が静止する前にそれを声に出してしまったのが運の尽き。
お子様じゃないですかぁ……
お子様じゃないですかぁ…………
お子様じゃないですかぁ………………
静寂の中、やまびこのようにエコーのかかった言葉が遠くへ消えていく。
……………たしかにイナリの胸は豊満で自己主張がかなり激しいのに対して、クロはその、いわゆるぺったんこだ。
駄菓子菓子!
巨乳には巨乳の、ぺったんこにはぺったんこなりの良いところがある!
そう、みんな違ってみんないいのだ……………。
ただでさえ無表情なクロの目がすんっ…………、と死んだ。
「…………………………………ん、そんなに早死したい?」
「ひょぇっ!?ご、ご主人様ぁ!助けてくださいぃぃぃぃ!!」
「自業自得だと思う」
全身から絶対零度の冷気を放ち、全てを凍てつかせる瞳で睥睨されたイナリが、蛇に睨まれたカエルのように俺の後ろでガクガク震えている。
自分で挑発するような事を言っておいて何してるんだイナリは…………と言いたいところだが、実を言うと俺も若干気圧され気味である。
おおぅ、クロがここまでガチギレしてるの初めて見たかもな……………。
クロはあんまり胸の大きさとか気にしないタイプかと思ってた。
「普段はそんなに気にしない。でも、イナリのはなんかイラッてした」
「ひゃぁ!?ちょ、ご主人様と話しながらさりげなく氷で攻撃しないでくださいよぉ!」
視線は俺に合わせて首を傾げながら、器用にも背後のイナリだけを狙い撃つように氷の弾丸を発射する。
安全地帯だと思ってほっと息をついていたイナリには大誤算だ。
ひたすらに足元ばかり狙われ、強制的にタップダンスのような奇妙な動きをさせられる。
そして、ついにそんなイナリの眉間に、狙い済まされたようにデカめの氷塊がクリーンヒットした。
それはもうコントかとツッコミたくなるほど綺麗に。
ほぐぁ!?と漏れる奇怪な悲鳴。
次の瞬間、イナリが思わず一歩後退して重心を後ろに傾けると共に─────────俺達が立っている天井がバキッ!と嫌な音を立てて抜け落ちた。
どうやらクロが放った氷塊が天井にダメージを与え、イナリがトドメを刺してしまったらしい。
「おわっ!?」
「ん!?」
「はえっ!?」
突然、体を浮遊感が包み込む。
三者三様の悲鳴をその場に残し、瓦礫もろとも五、六メートルはあるだろう高さから真っ逆さまだ。
不意打ちの内蔵が浮び上がる感覚が気持ち悪い。
「着地っ!」
「んっ!」
だが、この程度のハプニングで狼狽えるような俺とクロではない。
ロングコートの裾を翻しながらすぐに空中で体勢を立て直し、某ヒーローのような見事な着地で事なきを得た。
ドヤ顔である。
一度はやってみたかったかっこいい着地を実際にできて非常にご満悦である。
もちろんクロも予想外の失敗が霞むほどのインパクトを見せて着地。
「え?別にわざと氷で天井を壊しただけですけど?」とでも言いたげなすまし顔だ。
………………落下する寸前に目が合って、気まずそうにふいっ、とそっぽを向いたのは忘れてあげよう。
まぁどちらにしろ突入する予定だった訳だし…………………って、何か忘れているような。
そんな予感が的中した事を知らせるように、不意に俺の上に影が差した。
「きゃああああっ!?」
「ぐはぁ!?」
逃げようと思ってももう遅い。
真上から落下してきたイナリに巻き込まれて俺まで床に衝突してしまう。
そ、そうだった……………イナリはこういう時、絶対にお決まりを外さないんだった………………。
中途半端に避けようとしたせいで思いっきり後頭部を床にぶつけて、悶絶しながらも頭の片隅でそんな事を思い起こす。
ちなみに当の本人であるイナリはと言うと、俺の上に覆いかぶさった状態で目を回していた。
きゅぅ………と半ば気絶したように全体重を俺に預けている。
おかげでイナリの柔らかいものがぐにぃ、と遠慮なく押し付けられ、窒息の危険はあるものの俺の顔面は非常に幸せだ。
内心サムズアップ!
………………いやいや、この柔らかさと大きさがあったからこそイナリは無事だったんだよね(セクハラ)。
うん、イナリが無事で本当に良かった。
決して他意はない。
ないったらない。
だからクロにはそんな冷たい目で見つめるのをやめて欲しい。
室内で冬ですらないのに背筋がぶるりと震えてしまう。
読んでいて"あれ、クロって魔法苦手なんじゃなかったっけ…………"と思ったそこのお方!
その通り、大正解です。
クロは魔法が苦手ってこの前書きましたもんね(たぶん)。
じゃあなぜ今回普通に使えているのか……………。
その理由は近々(?)明らかになると思うので、気長に待っていて頂けると嬉しいです!




