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第76話 願い

「バランさん、お昼ご飯の支度出来ましたよっ」

リエルの明るい声が俺を呼ぶ。


「おっしゃあ! ちょうど腹が減ってたところだぜ、さすがリエルちゃん!」

と返したのは俺ではなくガジュウだ。


さらに、

「よし、おれも切り上げるかな」

ダーソンも牛のエサやりを中断して家に戻ろうとする。


「おいお前ら、ちゃんとエサやり終わってから行けよ」

「細かいこと言うなよ。女性にモテないぞ」

「そうだぜ。まあオレ様はリエルちゃん一筋だけどな!」


ガジュウはともかくとしてダーソンもいつの間にかバラン村に居ついてしまっていた。


「ダーソン、お前いつまでこの村にいるつもりだ?」

「ずっといようと思っているが駄目か?」

「別に駄目じゃないけど……」

俺は村長だが誰が住むか住まないかを決める権限などない。


「この村は女性とお年寄りと子どもばかりだから男手が必要だろ。だったらおれがいた方がいいんじゃないか」

「いや、それなら問題ないぞ。ガゼフさんが言うにはそろそろ村の男の人たち帰ってくるらしいから」

「なっ、おいっ、それは本当かバランっ!」

ガジュウがいきなり俺の胸ぐらを掴んでくる。


「あ、ああ本当だ……」

「そりゃまずいぜっ、男どもが帰ってきたらリエルちゃんの競争率が上がっちまうじゃねぇか!」

ガジュウはそう言って「リエルちゃん!」と叫びながら家へと入っていった。


「あいつ脈がないことに気付いてないんだな、鈍い奴だ」

とダーソン。


「なんだ、そうなのか?」

「え? あんたもかよ。鈍い奴ばっかりだなまったく」

ダーソンは手をひらひらさせながら家に向かっていく。



「鈍い……か」

そういえばエクスカリバーにもそんなこと言われたっけ。


「なあ? エクスカリバー」

『……』

エクスカリバーは答えない。


だがエクスカリバーは今も俺の腰に差してある。


いつかまた話し出すんじゃないか。そう願って……。

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