第71話 決戦前夜
エルフの村の村長選挙の投票日が明日に迫っていた日の晩のこと。
「やれることはすべてやりました、あとは勝利を信じて待つだけです」
「バランさんならきっと勝てますよ」
レオとアナの二人が力強く励ましてくれる。
『あんたそんなにエルフの村の村長になりたいわけ?』
エクスカリバーが訊いてくる。
いや別に……。
『は? 何よそれ』
そうなのだ。
正直言って俺はエルフの村の村長にどうしてもなりたいというわけではない。
ただアナが望まない結婚を強いられることをなんとかしてあげたいだけなのだった。
エルフの村の村長になると一つだけ村長権限でどんな願いでも聞き入れてもらえるそうで対立候補のデルトロはその権限でもってアナとの結婚を考えているのだ。
デルトロは決して悪い奴ではないがアナは結婚する気はないようだから俺が村長になって阻止してやるしかない。
「すみませんバランさん。私のためにこんなことに巻き込んでしまって」
「いいさ。結婚は好きな人とするべきだからな」
「バランさん……」
『あんた耳赤いわよ』
自分で言っておきながらちょっと恥ずかしくなったので照れ隠しにお茶を一口すする。
「あのう、バランさんは好きな人っているんですか?」
唐突にアナがそんなことを訊いてきた。
「なんだいきなり」
「いえ、ちょっと気になって」
するとレオが、
「まだまだ子どもだなぁアナは、そんなこともわからないのか? バランさんはリエルさんと付き合っているに決まってるじゃないか」
アナを小バカにするように笑う。
「いや付き合ってないけど」
と俺。
「えっ、バランさんとリエルさんて恋人同士じゃないんですか?」
「ああ、全然違う」
「そんな~」
「何よ、兄さんだってわかってないじゃない。びっくりさせないでよ」
「おかしいな。リエルさんのバランさんを見る目は恋する女性の目だと思ったんだけどな~」
レオは首をひねりながらつぶやいた。
「リエルは確か二十歳だったかな、それで俺は三十六歳だから釣り合わないよ」
リエルはきっと俺のことなんて男だと意識していないはずだ。
「え、バランさんて三十六歳なんですかっ。だったら私の方が一つだけ年上だったんですねっ」
アナが驚いたように口にした。
だがもっと驚いたのは俺の方。
「年上!? え、お前たちって何歳なんだ?」
「私が三十七で……」
「僕が四十です」
とエルフの兄妹が言う。
マジかよ、二人とも俺より年上だ……。
見た目はどう見ても十代後半くらいなのに。
「悪い、てっきり今まで年下だとばかり思ってたからタメ口で喋ってた。これからはレオさん、アナさんて呼ぶべきだな」
「そんな、やめてくださいよバランさん。エルフの年で四十なんてまだ子どもみたいなものなんですから」
「そうですよ。バランさんは今まで通り私たちと接してください、お願いします」
「そ、そうか」
アナに頭を下げられうなずく。
「それよりバランさん、明日は忙しくなりますから今日はもう寝ましょう」
「そうだな、そうするか」
「じゃあ私は失礼します。おやすみなさいバランさん」
「ああ、おやすみアナ」
部屋を出ていくアナ。
レオもこれに続く。
「では僕も失礼しますね」
「ああ」
一人残った俺は部屋の明かりを消すとベッドに横になった。
『いいさ、結婚は好きな人とするべきだからな……ぷぷぷっ』
お前も黙って寝ろ。
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