第66話 エルフの兄妹の再訪
マリアが帰ってから一か月、マリアと一緒に稼いだ金貨三枚も生活費として消え俺の所持金はまたもゼロになっていた。
そろそろ冒険者としてまた仕事をしないとなぁ。
そう思っていたある日俺が村の見回りをしていると入り口の方がやけに賑やかなことに気付く。
「どうしたんだ?」
人だかりに群がっていたザジーに声をかけると、
「あっ、おじさん。あのね、エルフのお兄さんとお姉さんが来てるんだよっ」
興奮した様子で返した。
エルフのお兄さんとお姉さん?
すると人だかりの中心から一人の金髪の男が抜け出てきた。
透き通った肌と整った顔立ちで耳がぴんと尖ったその男は俺と目が合うと声を上げる。
「バランさんお久しぶりですっ!」
「レオ? レオじゃないかっ」
「はい。ご無沙汰しています。あっ、妹もいますよっ」
そう言うとレオは振り返り「おーい、アナっ」と呼んだ。
村人たちの中からアナが顔を見せる。
「バランさん、お久しぶりです。急に来てしまってすみません」
アナは俺の前まで来て頭を下げた。
「いや全然構わないけど、それよりどうしたんだ?」
エルフは人間と距離をとって生活しているはず。
もしかしてまたオークに襲われて助けを求めに来たのだろうか?
「実は私たちあの後村を再建してまた以前のような落ち着いた暮らしに戻ることが出来たんです」
「へー、それはよかったじゃないか」
「そのことを兄さんがどうしてもバランさんに報告しないと気が済まないってきかなくて」
「だってそうだろアナ。バランさんたちがあの時助けてくれなかったら今の僕たちはないんだからっ」
「ちょっと兄さん顔近いわよっ」
アナが詰め寄ってくるレオをおさえて落ち着かせる。
「まあ立ち話もなんだしうちに来いよ」
俺の家ではないけど。
「はいっ、ありがとうございます」
「ではお言葉に甘えて失礼します」
レオとアナは俺にお辞儀をすると村人たちにも頭を下げながら俺の後に続いた。
相変わらず礼儀正しい兄妹だ。
ガゼフさんの家に着くとちょうどガジュウが玄関の扉を開け外に出てきたところだった。
「ん? なんだこいつら? 貴様の知り合いか?」
レオたちをじろじろと無遠慮に見た後俺に顔を向ける。
「あーそうか、お前は会ったことなかったか。この二人はレオとアナ、エルフの兄妹だ」
「は、はじめましてレオです。よろしくお願いしますっ」
「わ、私はアナです」
「ふーん、オレ様はガジュウだ憶えとけ。おっといけねぇガゼフに呼ばれてたんだったぜ、おい、急いでるからそこどいてくれっ」
言うとガジュウはレオとアナの間をでかい図体で駆け抜けていった。
ガジュウの後ろ姿を眺め目を点にするレオとアナ。
「あの大きな方もバランさんと同居しているのですか?」
「ああ、成り行きでな。さあそんなことより入ってくれ」
「は、はい、失礼します」
「お邪魔します」
家の中には誰もいなかった。
おそらく牛舎にでも行っているか畑仕事の手伝いにでも行っているのだろう。
「悪いな、ちゃんとしたもてなしも出来ないで。少しすればお昼だからリエルたちも戻ってくると思うんだが」
俺は一応お茶とお茶菓子をみつくろって二人に出した。
「いえ、すみません」
「連絡もしないで突然訪ねたりするからよ、兄さん」
レオが妹のアナに注意されている。
エルフ族も女性の方がしっかりしているようだ。
『ふあ~あ……あ~よく寝た。ってあれ? エルフの奴らじゃない。なんでいるのこいつら?』
眠っていたエクスカリバーが目を覚ました。
ついさっき村に来たんだよ。
『何またオークでも出たの?』
いや、村の再建が順調にいっているって報告しに来てくれたんだ。
『何それ? つまんないわね』
つまろうがつまるまいがお前には関係ないだろ。
「……さん、バランさん? 聞いていますか?」
「ん、あ、おう悪い。なんだ?」
エクスカリバーとの非生産的な脳内会話に夢中になっていてレオの話を聞いていなかった。
「それでですねうちの村長がぜひバランさんに一度会ってみたいと言うのでお礼もかねてバランさんをエルフの村にご招待したいのですがどうでしょうか?」
村長が俺に会いたい?
「えーっとそうだなぁ……」
お礼なんて別にいいのだが……レオがすごく期待した顔で俺をみつめている。
エルフの村の村長が俺に会いたがっているというのならむげには断れないか。
「……わかった。招待されるよ」
「本当ですかっ。ありがとうございますバランさんっ」
「すみませんバランさん無理を言って。本来ならばこちらから出向くのが筋なのですが村長は足が悪くて遠い距離を歩くのが困難なんです」
とアナが言う。
「構わないよ」
エルフの村なんて一生に一度見られるかどうかだもんな。
「では早速出発いたしましょう」
「えっ、今から?」
レオは立ち上がると俺の手を取った。
「善は急げと言うじゃないですか」
「ちょっと兄さん落ち着いて。まだリエルさんたちにも会ってないじゃない」
「ああ、リエルたちに一言言ってから行かないと心配させちゃうからな」
「そ、そうですか……す、すみません」
よくわからないがレオは何かを焦っているような急いでいるようなそんな印象を受ける。
……いや、きっと俺の気のせいだろう。
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