第54話 パーティー名
バラン村からカジカ村には二時間ほどで着いた。
山を越えるのでもっとかかると踏んでいたのだがマリアのホーリーアクセルで身体能力を向上させたおかげでだいぶ時間が短縮できた。
「ここがカジカ村ですか……なんか町みたいです」
村を見渡して初めて来た時の俺と同じような感想をもらすマリア。
新しそうな建物や大きな建物が沢山建っているのでそう思う気持ちもよくわかる。
「それじゃ早速ギルドに行こうか」
「はい」
しばらく歩きギルドをみつけると俺たちはギルド内に足を踏み入れた。
すると、
「……おっ、おい、あれ、紅の旅団のマリアじゃねぇか!?」
「マリアだっ。なんでこんなとこに……」
「一緒にいる男は前に来た奴だぜ!」
「バランだ。あいつ追放されたはずなのになんでマリアちゃんと一緒にいるんだよっ」
ひそひそ声というレベルを超えた冒険者たちの話し声が耳に入ってくる。
『やっぱりこの小娘も有名なのね』
そりゃそうさ。勇者セフィーロ率いる【紅の旅団】のマリアっていったら冒険者で知らない者はいないはずだ。
だが当のマリアはというと冒険者たちの声に縮こまっていた。
俺と同じくマリアも目立つのはあまり好きじゃないタイプだからな。
俺はマリアを連れて受付カウンターへと進んだ。
そこにいた受付の女性に話しかける。
「すいません、また依頼を受けに来たんですけど」
「はい。バラン様ですね。今日はお二人で依頼を受けるおつもりですか?」
「はい」
「ではお連れの方のお名前と冒険者ランクをお願いします」
おそらくこの女性もマリアのことは知っているはずだがそれはそれ、これはこれ。仕事を淡々とこなしていく。
「あ、わたしはマリアといいます。Sランクです」
マリアが一歩前に出て自分の口で言った。
「はい。マリア様ですね。お二人ともSランクですのでどのような依頼でも受けることが出来ますが今日はお二人でということなので新しくパーティーを作っていただきます。どのようなパーティー名にされますか?」
受付の女性が訊いてくる。
そうか。複数人で依頼を受ける場合にはパーティー名が必要なのか。
全然考えてなかった。
「どうする? マリア」
「バランさんにお任せします」
と笑顔で返される。
まいったな、こういうのは苦手なんだよなぁ。
適当につけても愛着がわかないし、変にこねくり回した名前を付けるとあとでふと我に帰った時に自己嫌悪に陥りそうだしな。
『だったら私が決めてあげよっか?』
エクスカリバーの声が頭の中で響いた。
どんな名前なんだ?
『私が考えたやつに決めるって言うなら教えてあげるっ』
面倒くせ。
例えばなんだよ、一応言ってみろって。
『じゃあ私が決めたやつにするって約束して』
約束は出来ない。
俺はそこまでお前のネーミングセンスを信用してないからな。
『じゃあいいわよ、自分で考えなさい。それと後ろ詰まってるわよ』
え?
振り向くと俺たちの後ろにはいつの間にか行列が出来ていた。
「バランさん、早くしないと……」
「パーティー名、どうなさいますか?」
「あー……えーっと……」
マリアと受付の女性の声が俺の焦りを加速させる。
『ほらほら、さっさとしないと後ろの奴らから舌打ちされるわよ~』
エクスカリバーもあおってくる。
「えーっと、あのう、だからその……」
「ちっ」
今舌打ちが聞こえた。
後ろから聞こえた。絶対聞こえた。
駄目だ、何も思いつかない。
エ、エクスカリバー頼む。なんでもいいから教えてくれ。
『じゃあ今から私が言う言葉を復唱してよね』
わかったから早くっ。
『パーティー名は……』
「パーティー名は……」
『バラン団!』
「バラン団!?」
「パーティー名はバラン団ですね。かしこまりました」
受付の女性がバラン団で登録した。
「バラン団ですか……い、いい名前ですね」
マリアが愛想笑いを浮かべる。
マリアのマの字も入っていない自己中心的なパーティー名。
その名も【バラン団】が今ここに誕生したのだった。
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