第48話 VSマリア
「ホーリーマギカ!」
マリアは杖を空にかざし唱えた。
すると空から一筋の光が俺の頭上に降ってくる。
「うおっ……!」
俺はもろに直撃を受ける。
このホーリーマギカという魔法は聖者であるマリアの数少ない攻撃魔法のうちの一つだ。
本来はアンデッドに対して絶大な効果を発揮する浄化作用のある魔法だが一定程度のモンスターなら消滅させられる。
初撃から何の躊躇もなくこの魔法を使ってくるということは俺のことを本気で倒そうとしているということか?
それとも格闘大会で優勝した俺の強さを認めてくれているということなのか?
だがどちらにしてもダメージキャンセラーによって俺は物理・魔法攻撃のダメージをゼロに出来る。
俺に魔法は効かない。
「はあっ!」
俺は光から抜け出るとエクスカリバーでマリアに一撃を浴びせた。
「きゃあっ……!」
とっさに腕でガードしたマリアだったが後ろに吹っ飛んだ。
荒野に土埃が舞う。
エクスカリバーに刃はない。ただのレプリカだからおもちゃを振り回しているようなものだ。
だがマリアはそもそも接近戦を得意とするタイプではない。しかも体重も軽い。
よって俺のエクスカリバーの攻撃でも吹っ飛ばすことが出来たわけだ。
「バランさん、すごく強くなってますね……でもわたし負けませんっ」
すっと立ち上がるとマリアは杖の先端を自分に向けた。
「ホーリーアクセル!」
するとマリアの体が赤い光で覆われた。
そして次の瞬間マリアは地面を蹴ると俺の目の前に現れた。
「っ!」
マリアが杖で俺のお腹を突いた。
「ぐぅっ……」
体が折れ曲がったところを俺の顔面めがけて蹴りを入れてくる。
「ぶふっ……!」
なおもマリアの攻撃は止まらない。
俺はたまらず空中に飛んで避難した。
「くっ……あっぶ――」
「まだですよっ!」
マリアが地面を強く蹴り跳び上がってくる。
軽く五十メートルは跳んでいる。
ホーリーアクセルは対象者の身体能力を高める補助魔法。
俺がパーティーの一員だった頃はセフィーロやランドルフに対してよく使用していたマリアお得意の魔法だ。
俺の目の前まで跳んできて拳を振りかぶるマリア。
そしてそのまま、
「えいっ!」
渾身の一撃をくらい俺は地面に殴り落とされた。
「いってて……」
パンチのダメージはゼロに出来るが地面に落下した時の衝撃は受ける。
『ほら本気でやるんでしょ。だったらいつものアレいくわよ』
「ああ、そうだな」
地面に着地したマリアにエクスカリバーを向ける。
「マリア、俺はこれから今俺が出来る最大の技を使う。死にたくなかったら逃げろ」
「わたしは……わたしはもう逃げませんっ!」
気迫のこもった声が返ってくる。
「いくぞっ」
俺はエクスカリバーを天高く振り上げる。
持ち手部分のボタンを押すと金色の光が伸びて大きな剣を形作る。
俺はその剣をマリアに振り下ろした。
「エクスカリバー!!」
マリアは直撃の瞬間杖を胸の前で両手で握り、
「ホーリーバリア!」
と唱えた。
ズズ……。
大きな金色の光の剣がマリアが張ったバリアによってふせがれている。
「うぐぐぐっ……」
マリアの張ったバリアがエクスカリバーの光を徐々に押し返す。
そして――
「……やあっ!」
マリアが声を発した。
それと同時にバリアが膨れ上がりエクスカリバーが放っていた光を消し去った。
「はあっ、はあっ……」
『うそっ!? あの子ふせぎきっちゃったわよ』
「ああ……そうだな」
『そうだなってあんたなんで驚かないのよ。私たちの必殺技があんな小娘にふせがれたのよっ』
エクスカリバーが俺の脳内で声を上げる。
「……あー、それなんだが実はな、昨日お前が寝ている時にその必殺技を使っちゃったんだ」
『はあっ? なんでそんなことしたのよっ』
「だってたまには太陽エネルギーを発散させないと暴発するって言ってただろ」
『だからって決戦前日にするバカがどこにいるのよっ。まったくあんたってやっぱりバカだわ、大バカよ』
「はあっ……バランさん」
エクスカリバーの文句が続く中マリアが肩で息をしながら近付いてきた。
「マリア……」
「すごい一撃でした……正直あのまま押しつぶされるんじゃないかと思いました」
「マリア、お前の勝ちだ。さっきのが今の俺に出来る最大の技だった。それをふせがれた以上もう俺に残った手はないよ」
「バランさん……ありがとうございます、と言いたいところなんですけれどわたしも今ので力を使い果たしてしまいました」
そう言うとマリアはふらっとよろめいた。
立っているのがやっとのようだ。
「ちょっとー! 試合はどうなったのー!」
アナベルが岩陰から声を飛ばしてくる。
「悪いが試合は引き分けだ! 俺たち二人とも力を使い果たしてしまったんだ!」
「えー、何よそれー! ちょっとマリアー!」
言いながらアナベルが執事を率いて駆け寄ってくる。
するとカバランも飛び出たお腹を押さえながらどすどすと駆けてきた。後ろにはラインバッハさんもいる。
俺はラインバッハさんに顔を向けると、
「すいません、勝てませんでした」
頭を下げた。
「いえ、バラン様はよくやってくださいました。そうですよね? カバラン様」
「うん、ぼくちゃんすごい興奮したよっ」
とカバランは目をギンギンにして俺を見てくる。
「まあいいわ、負けなかっただけでよしとしましょ。あんなすごい技ふせぎきったんだから実質マリアの勝ちみたいなもんだし」
アナベルがマリアの頭に手をぽんと置いて言う。
『なんか私が思ってた貴族のイメージと違うわね。貴族ってもっとヒステリックな人種かと思ってたわ』
とエクスカリバー。
実は俺もちょっとそう思っていたからなんとも言えない。
「今度は代理戦争なんかじゃなくてわたしたちで勝負しましょうよ」
「う、うん。で、でもぼくちゃん痛いのは嫌だからね」
「わかってるわよ。わたしだって痛いのはごめんだわ」
見るといつの間にかアナベルとカバランは笑顔で握手を交わしていた。
貴族って意外と話の通じる奴もいるのかもな。
『そうかもね』
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