第38話 リエルの想い
「う……ううっ……こ、ここはどこだ?」
ガジュウが目を覚ました。
「ここはわしのうちじゃよ」
ガゼフさんが答える。
「……何者だ、じいさん?」
「ガゼフという者じゃ。お主が以前さらったリエルの祖父じゃよ」
「な、なぜオレ様はこんなところに……?」
そう言いながら頭に手を当てる。
頭に包帯がしてあることを確認したガジュウは部屋の中を見回した。
部屋にはガゼフさんと俺とリエルがいてガゼフさんはガジュウのそばに座り、俺とリエルは立ちながら布団に入ったガジュウを見下ろしている。
「バランどのに感謝するんじゃな。医者を呼んで助けてくれたんじゃから」
「バラン……貴様が?」
ガジュウと俺の目が合う。
「殺そうとした相手に助けられるとはお主も情けないのう。それでも盗賊団のリーダーか」
「……盗賊団、か……紅蓮の牙ならもうないさ」
ガジュウがつぶやくように言う。
「バラン、貴様にやられてオレ様の面目は丸つぶれだ。あの後部下たちはオレ様から離れていったんだ」
「そうだったのか」
別に俺は悪くないのに少しだけ罪悪感を覚えるのはなぜだろう。
「紅蓮の牙はオレ様が一から作り上げた盗賊団だった。それを貴様のようなただのおっさんに壊滅させられるとはな……」
お前も充分おっさんだろ。
「ぐっ……」
立ち上がろうとしてふらつくガジュウ。
「これこれ、まだ安静にしとかにゃいかんぞい」
「さ、触るなじいさん。オレ様はガジュウ様だ、貴様らのあわれみは受けん」
部屋を出ていこうとするガジュウ。
その時リエルが、
ぱしんっ。
ガジュウの頬を平手打ちした。
「「「!?」」」
リエル以外のその場にいた全員が固まる。
「バランさんの気持ちがわからないのですか? あなたは怪我人なんです、安静にしていてくださいっ」
リエルは自分よりかなり大きいガジュウを見上げ言い放った。
見るとリエルの手は震えていた。
ガジュウはリエルをにらみつける。
両者がにらみ合って、
「……ふんっ」
ガジュウは部屋を出ていくかと思いきやくるりと向きを変え布団の上であぐらをかいた。
「……」
そして腕を組むと目をつぶる。
『へー、その女やる時にはやるじゃない。気に入ったわ』
とエクスカリバー。
リエルのことをその女とか言うな。
「バランどの、わしは牛たちの世話をしてきますのでバランどのはここでガジュウと一緒にいてくだされ。リエルや、わしらは行こうかの」
「は、はい、おじいちゃん。では失礼しますバランさん」
二人は俺とガジュウを残し部屋を出ていった。
……。
部屋に俺とガジュウの二人きりになる。
……気まずい。
この空気に耐えきれず俺も部屋を出ようとドアに手をかけると、
「なんで助けた……?」
背中に声がかかる。
俺は、
「……」
ただ黙っていた。
なんで助けたって言われても明確な理由なんかない。
「オレ様は貴様を殺そうとしたんだぞ」
「……別に死ぬ必要はないだろ」
死んだら後味が悪いしな。
「ふっ、甘い奴だ……だが、オレ様の負けだな」
ガジュウがつぶやく。
何を今さらわかりきったことを。
お前は既に俺に二回も負けてるんだぞ。
するとガジュウがごろんと布団に寝そべった。
「貴様のせいで血が足りない。少し寝させてもらうぞ」
「勝手にしろ、俺は村の外の見回りをしてくる。お前みたいなのがいつ来るかわからないからな」
そう言い残し俺は部屋をあとにすると村の外に向かったのだった。
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