第19話 インタビュー
ダーソンは気絶したマーレを抱きかかえながら控室に戻ってきた。
マーレを椅子に寝かせると、
「あんたと試合か、楽しみだよ」
俺の肩に手を置いた。
「俺三十六歳だから多分お前より年上だぞ。敬語使えよ」
「ちっちゃいこと言うなよ。女性にモテないぞ」
「大きなお世話だ」
ちょっと顔がよくて俺より背が高いからって……うらやましい。
「これより決勝戦を始めます! バラン選手とダーソン選手はリングに上がってください!」
マイクを通してキスギさんの声が聞こえてくる。
「おれたちの番だ、行こうか」
「いちいち肩に手を置くな」
俺の肩はお前の手置き場じゃないぞ。
俺たちはリングへと向かった。
「おおーっ」と歓声が上がる。
よかった。観客から俺に対してもうヤジは飛んでこない。
アントワネットのおかげかもな。
「決勝戦を始める前にお二人にインタビューを行いたいと思います!」
とキスギさんが言う。
「まずダーソン選手ですがレベル400の剣士ということですが会場の皆さんはあなたのことを今日知ったという方が多いと思います、なぜこれほどの実力者でありながら今まで表に出てこなかったのでしょうか?」
マイクをダーソンに向けた。
「簡単なことです。おれは十五歳から十年間ずっとダンジョンの中で暮らしていたからですよ。その間一度も外に出ることはなかったので、ただひたすらモンスターを狩っていました」
「十年間一度もですか?」
「はい。おれはつい一昨日十年ぶりに外に出てきたんです。今回は当面の生活費のために出場したってわけです」
「な、なんということでしょうか。そんな方がいたなんて」
レベル400でも無名だった理由はそういうことか。
レベルは本人にしかわからないから400っていうのもあくまで自称に過ぎないと思っていたがあながち嘘ではなさそうだな。
ということはこいつはセフィーロたちよりももしかしたら強いのかもしれないのか。
「で、では続いてバラン選手に訊いてみましょう! あなたは勇者セフィーロのパーティー、紅の旅団に属していましたが実力が追いついていないという理由で解雇されてしまいましたよね」
キスギさんがオブラートに包んだ言い方をしてくれるが要は足手まといの役立たずだから追い出されたってことだ。
「そのあなたが決勝に残るとは会場の皆さんも予想していなかったと思いますが、どのようにしてここまで強くなられたのですか?」
「えっと……鍛冶職人のスキルを活かしただけです」
適当に作った剣でミノケンタウロスを倒したらレベルが一気に150になったんです、なんて言っても信じてもらえないだろうしな。
「鍛冶職人のスキルをですか? そのスキルは紅の旅団にいた時は使っていなかったのですか? もし使っていたら解雇されなかったのではないですか?」
ベルーガ国王と観客がいるからかキスギさんは質問を続ける。
「いや、使ってましたけどあの四人は俺の助けがなくても充分強かったので……」
「では最後にもう一つだけ。セフィーロさんたちが神喰いのダンジョンでミノケンタウロスに敗れて大怪我をしたことはご存じですか? お見舞いなどは行かれましたか?」
質問が二つになっているが……。
「はい、風の便りで。でもお見舞いとかは……追放された身なので合わせる顔もないですし」
「そうですか。ぶしつけな質問にこころよく答えてくださってありがとうございました……さあ、それでは気を取り直して決勝戦を始めましょう!」
高らかに宣言するとキスギさんはリングから下りた。
「決勝戦、始めっ!」
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