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第7回 新入社員でひゃあっ!

研究室。

朝から落ち着かない空気が漂っている。


「今日は新しいメンバーがくるみたいですよ〜。」

オブちゃんがカップを両手で持っている。


「…え、えっと…どんな…方ですか…?」

ラボちゃんが心配そうに伺っている。


「…ロボットと聞いています。」

データちゃんはコンソールに目を落としている。


「ロボ太とかいったっけなー!!」

エキスちゃんが弾んだ声で続ける。


「…性能データが欲しいですね。」


「承認済み!事前承認!」

アール所長が宙で8の字を描いている。


——そして午後。


「ロボ太です。よろしくお願いします。」


入り口に立っているのは、やや丸みのあるフォルムの中型ロボット。

目がくりくりしていて、頭のてっぺんにアンテナが一本ついている。


「よろしくー!!」

「…よろしくお願いします。」

「歓迎です〜♡」

「…よろしく…おねがい…します……。」


みんなの挨拶を受けてロボ太がぺこりと頭を下げる。

「…それでは…各担当の仕事を…見学して…もらい…ますね……。」


まずはデータちゃんのところへ。


データちゃんがコンソールに向かい、淡々と数値を打ち込んでいる。

「…ここで研究室全体の記録と解析を担当しています。」

「なるほど、こうやるんですね。」

ロボ太が関心しながら横でメモを取っている。


「…非効率な動作をするとすぐわかります。」

「それは…すごいですね。」

「…当然です。」


データちゃんが短く答えて画面に視線を戻す。

ロボ太のメモが止まっていない。



——次はエキスちゃんのところへ。


作業台の上にケーブルや基板が散らばっている。

エキスちゃんが目を輝かせながら手を動かしている。


「ここではいろんな新しいものを作ってるんだ!!」

「どんなものが…できるんですか?」

「んーとね、こことここをつなげると回路が接続されて……」


ボンっ!!


煙が上がる。作業台の端にビーカーが転がっていく。


「はいっ!なにかよくわからないものができましたー!!」

エキスちゃんが両手を上げて喜んでいる。


「…大丈夫なんですか?」

ロボ太が煙を手で払っている。


「大丈夫、どうにかなるっしょ。ラボ姉で試してるけどいつも平気だよ!」

「…そうですか。」

ロボ太のメモが一瞬止まった。



——次はオブちゃんのところへ。


広めの実験室。棚に大小の機器が並んでいる。


「ここではエキスさんのつくったものをテストしています〜。」

ロボ太がメモを取る。


「仕様書を見るとこのレバーを右に倒すようなのですが、ロボ太さんやってみてもらえますか〜?」

「わかりました。えっと…」


ロボ太がレバーに倒してみる。動かない。


「あれ、結構固いです。うーん…。」


「ちょっと見てみますね〜。貸してもらえますか〜?」

「あ、はい。どうぞ。」


オブちゃんがそっとレバーを受け取り、力を込める。


バキッ!!


「あら、ちょっと壊れちゃいましたね〜。」

「…え。そんな簡単に壊れないはずでは…。」


「大丈夫ですよ〜。またエキスさんに直してもらえばいいんです〜♡」

オブちゃんは壊れたレバーを押し込んで無造作に棚に戻している。


ロボ太のメモのペースが明らかに落ちていた。



——そして最後はラボちゃんのところへ。


静かな資料室。本棚が壁一面に並んでいる。


「…えーと、ここでは言語について…古い書物の解析や…」

ラボちゃんが棚から大判のノートを取り出そうとした。


ノートを開く。

まばゆい光が走る。


「ひゃあっ!」


「やったねー!!」

「…いいデータが取れました。」

「今のひゃあも可愛かったですね〜♡」


三人がロボ太の横で楽しそうにしている。


「…ちょっと、人がきているんだから…やめてください…。」

ラボちゃんが眼鏡をクイッと直す。顔が少し赤い。


【ブオー】


「ふふ〜、ロボ太さんもそう思いますよね〜?」

ロボ太が固まっている。


——しばらくして。


ラボちゃんが隣の部屋に入ろうとする。


カチッ。

「…あれ…?」


感圧板だ。床が光り爆風が廊下を流れていく。

「ひゃあっ!」


ラボちゃんは壁に手をついて無傷でふんばっている。

ロボ太はそのまま廊下の端まで吹き飛んだ。


「…感圧板は有効ということですね。記録しました。」

データちゃんが素早くコンソールを打ちながら続ける。


「…ロボ太さん、大丈夫…ですか…?」

ラボちゃんが廊下の先のロボ太に駆け寄る。


「…なんであの爆風で大丈夫なんですか…。」

ロボ太が壁にもたれかかっている。


——そしてその直後。


「感圧板の場所、もう一箇所ありますよ〜♡」

オブちゃんがにこにこしている。


カチッ。

もう一度、爆風が巻き起こる。

「ひゃあっ!」


エキスちゃんが廊下の奥からロボ太の飛んでいく様子を見届ける。

「あっ!飛んでった!!!」

ラボちゃんは感圧板の上でコートがバサバサ揺れている。


「…ロボ太の記録、完了です。」

データちゃんが淡々とコンソールを閉じる。


「…ロボ太さん…きてるんだから…やめてください…恥ずかしいです…。」

ラボちゃんが袖で顔を半分隠す。

顔が真っ赤に変わる。


【ブオオオオーーーー】


冷却ファンの音が廊下に響き渡る。


「浮遊継続中。」

アール所長がぷかぷかしながら廊下の上を通過する。


——後日。


「なんで皆さん、大丈夫なんですか。僕には無理です。」

ロボ太の声には深い実感がこもっていた。



数日後、データちゃんだけに手紙が届いた。

封筒を開くとメモが一枚入っている。


『データさんへ。

あなただけ普通でした。

またいつか遊びに行きます。

 ロボ太』


「…非効率な手紙ですね。」

データちゃんがコンソールに視線を戻す。


ほんの少し口角が上がっていた。


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