㉑ 超時空◯◯会議
翌朝、サン・ジェルマンが亜空間レストランに出勤すると、カウンターバーに、封書の手紙が置かれていた。
表面に日本語で"サン・ジェルマン伯爵殿へ"と書かれているが、差出人は不明だ。
だが彼は、何故か迷わずそれを開けた。
そうしなければならないような、気がしたからだ。
手紙の文面はヘブライ語で書かれており、以下のような短いモノだった。
親愛なる昭和のサン・ジェルマンどのへ
キミも遂に、並行宇宙を旅する手段を手に入れた。
いよいよ、我々と合流するべき時が来たのだ。
ついては、以下に記した座標に来られたし。
必ず来ると信じて、待っている。
全宇宙で誰よりもキミと親しい友人より
そしてその文章の最後に、確かに、とある座標が書かれていた。
彼は"コレはアラハバキあたりの考えた、手の込んだ罠かも知れない"とも思った。
しかし何故か、行かなくてはならない気がして、仕方がなかった。
そしてとうとう、誰にも相談する事なく、その場で決断し、黒いビートルでその座標を目指す事にしたのだった。
座標の場所にたどり着くと、そこはいわゆる亜空間だった。それは即ち、一つ目の時空を1、二つ目の時空を2とすると、1.5に当たる場所。
しかし、彼のアジトたる亜空間レストランが、すぐ隣の時空の影響を受けて、ホンモノのテレビ塔の特徴を、色濃く残しているのに対して、ここは何も無い真っ白な空間だった。
その空間のど真ん中に、大きなドーム型の建物が鎮座している。彼のビートルは、その周りを囲うように設けられた駐車場の一角に、キレイに収まるように座標を指定され、到着していた。
(誰だか知らないが、なかなかイイ仕事をする。)
彼は素直に、そう思った。
他の駐車スペースには、既に様々な乗り物が停められていた。
それらはクルマに限らず、ヘリコプター型や、円盤型まである。恐らく全て、何らかのタイムマシンの類の擬態であろう。
彼がクルマから降りて、ゆっくりとドームの入り口に向うと、両開きの扉が当然のように、自動で開いた。入って来いという訳であろう。
彼は遠慮無く先へ進む。
長い廊下の突き当たりにまたドアがある。
それが自動で上にスライドして開いた。
彼は、そこも躊躇わずに中に入った。
内部は間接照明だろうか。
暖色系の少し薄暗い灯りだった。
ほとんどシルエットだが、すでに10名以上の人物が、円卓の席について居るのが分かった。
上座にあたる正面の人物から声がかかった。
「昭和の時間軸から、よく来てくれたね。早速だが、席に着いてくれたまえ。」
サン・ジェルマンは言われるままに、目の前の空いている座席に収まった。




