⑳ 雪女の末裔
「実を言うとね…。」
「はい?」
「時々、アナタの様な私の末裔が、訪ねて来るのよ。で、その時の質問が、大体、今言ったような事なのよ。」
「…ああ、だから。」
「そういう事。他には?この際、訊いておきたい事は?」
「一体、何がきっかけで、私の直接の先祖は、ニンゲンと暮らす事になったんでしょうか?」
「それは…ワタシには、分かりかねるわ。顔がタイプだったんじゃない?」
「…そんなあ。」
「そうかしら。結構、重要でしょ?顔。アナタのパートナーも、見たところ、中々のイケオジじゃないの?」
「…そりゃあ、どうも。」
言われた伯爵は、悪い気はしなかった。
「さあもう、いいかしら?こう見えてもワタシたち、結構忙しいのよ?"地球温暖化"を、少しでも遅らせなければ、オチオチ昼寝も出来やしないわ。」
「…えっ!?その話を、もう少し詳しく…。」
「だめよ。これ以上は、トップシークレット。後は自分たちのチカラで、未来を勝ち取りなさい!」
その言葉を最後に、日本の雪女ユキメは、その場からまるで煙のように、フッと消え去ってしまった。
ふと気がつくと、周りにあんなに居た世界中の雪女たちも、一人残らず姿を消していた。
「帰りますか?京子さん。」
サン・ジェルマンに促され、彼女も同意した。
30分後、二人は、テレビ塔の亜空間レストランで、向き合う席に座り、コーヒーブレイクしていた。
「自分のルーツを知ったところで、大した収穫にはならなかったわね?」
「…でも、知りたかったんですよね?」
「そうね。納得したわ…でも、そんな事より…"地球温暖化"って何よ?」
「…21世紀に、大きなモンダイになる事ですよ。ニンゲンが、長年の歴史を重ねる内に、地球環境を破壊し続けて来たツケが、とうとうやって来るのです。」
「…ソレ、何とか解決できるの?」
「今、この時代に存在している、全てのニンゲン次第ですね。」
「…そうなのね。」
「この件は、個人のチカラでは、いかんともし難い事なのです。例え我々のチームが、不老不死と超能力者の集団だとしてもね。」
「…アナタ、本当は、この先の人類の運命を知っているんじゃないの?」
「だとしても、それはあくまでも可能性の一つに過ぎない。観測済みの未来は、直ぐにウソになってしまう。移ろいやすいモノなのですよ。人物画を描くのと同じ事ですよ。」
「…それは、どういう?」
「"未来は、今、ここに居る我々が、切り拓くべきモノ"だと言う事です。」
「…ああ、成る程。アナタが好きなそのセリフに行き着くわけね?」
「そういう事です。それこそが、タイムマシンを駆使した人生を経た私の、行き着いた答えなのです。」
最後にサン・ジェルマンは、"我が意を得たり"という顔で頷いたのだった。




