婚約者と従者
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初登校を終えた夜、フリアの家族に向けて手紙を書いていると、アルベティウス様がやって来た。
「やぁ、ティーナ。貴族院はどうだった?」
「色々と衝撃でしたね。ザ・悪役令嬢と取り巻きに出会いました」
「ははは。それはテンプレだなぁ。どちらの令嬢だい?」
「アトワジール家のエスメラルダ様でした。私が何処の令嬢か分かっていなかったみたいです」
「?新入生代表挨拶はしなかったのかい?あれは、家格の一番上の者がするんだけれど」
「ええ。しました。した上で詰め寄られました」
「…それは、全く頭の空っぽな令嬢だね」
…辛辣っ
「まぁ、面白かったのでいいです。エスメラルダ嬢で思い出しました」
「どうしたんだい?」
「エルサザール様のお孫さんの、レイモンド様と親しくなりまして」
「…親しく?」
「ええ。エスメラルダ嬢にしつこく婚約の打診をされて困っているそうなんです。私に婚約者が居なければ、申込みをしようと思っていたんですって」
「…婚約の申込み?」
「そうです。とても話しやすくて、色々と教えて頂きましたし、馬が合う良い方でした」
「……馬が合う良い方?」
…ありゃ、何か怒気が含まれている様な?
ハッとして、アルベティウス様をみると、笑顔のおデコに青筋が立っている。
…やべぇ!ヤンデレが発動してしまう!テスもビビって扉の方まで後ずさったじゃん。やだ、逃げないで助けてよテス!
「ご、誤解しないでください。私がアルベティウス様の婚約者だとご存じでしたし、アルベティウス様には叶わないと、諦めていらっしゃいました。レイモンド様は、良いお相手がいたら私に紹介して欲しいとお願いされたのです」
慌てて取り繕う。
「国内には中々家格の合う方が見つからないそうなので、他国にツテは無いかと言われました。王妃様なら何方かご紹介頂けないかと。未来の国王陛下の側近候補なので、良い方と娶らせて差し上げたくて」
必死に懇願してみた。
「…それは、全力で探してあげないとね。1秒でも早く婚約者を見つけてあげなくては。母上にも打診してみよう。ルサの為だしね。(近寄る虫は払わねば)」
…最後小声で何か言ったような?
「是非、お願いします。アルベティウス様とレイモンド様は再従兄弟に当たりますよね?会った事は有りますか?」
「勿論、会った事はあるけれど、歳が離れているし、僕は成人してすぐ引き篭もったからね。幼い彼しか覚えてないな。妙に懐かれた記憶は有るけれど」
「レイモンド様はアルベティウス様の事を叶わない人だと言ってました。幼い頃の印象そのままの様ですね」
「これからも、そのままで居てもらわないとね」
ふふふふと笑う顔が怖い。
「心配しなくても、アルベティウス様以外とどうにかなる事はありませんよ」
「どうにかって?」
アルベティウス様は、私に近付いて私の頬を触る。人外のイケメンが目の前に来て、赤面してしまう。
「な」
慌てて後ずさろうとすると、腰を抱えられた。
「何処へ行くの?」
「い、いやあの。そんな綺麗な顔が近いと…」
「近いとなんだい?」
―章斗〜!覚えてろぉ〜!
「んっ!んっん〜!」
いつの間にかやって来た怖い笑顔のメルが、アルベティウス様の背後で咳払いをした。
「お茶をお持ちしました!アルベティウス様、未成年のシスティーナ様に何をされているのですか?出入り禁止にしますよ」
メルが言うと、秒で5mくらい離れた。メル強い。恐い。テスは扉の前で、笑顔を張り付けている。
「嫌だなぁ。ぼくが無体な真似などする訳が無いだろう。メルは筆頭執事になって益々しっかりしたね」
アルベティウスさまは、引き攣った笑顔で言う。
―『益々恐くなった』って副音声が聞こえたよ。カイン親子は似ている。そして、破天荒な王族の扱いに長けているね。
「…何、頷いてるんだい?」
「…いえ、何も」
私達は気を取り直して、メルが入れてくれたお茶をを飲む。
「システィーナ様、貴族院に侍女見習いを雇うと聞きました」
「ええ。ベルエル上位子爵のご令嬢なの」
「ベルエル上位子爵と言えば、フリアの筆頭執事じゃなかったかな?」
アルベティウス様は引き篭もってる割に、情報通だ。
「ええそうです。お父様の様な従者になりたいと云う事ですので、勉強になるかと」
チラッとアルベティウス様を見る。
「フリアの執事…なるほどね。その方がいいね。良い子だったんだろう?」
「ええ。私の大切なペンダントを拾ってくださったの」
「ペンダント?落ちたのかい?」
「掛け金が壊れてしまって」
「貸してご覧。僕の失態だ。直してあげるよ」
「宜しくお願いします」
私はペンダントをアルベティウスに預けた。
「メルは、テンペランスをどう思いまして?」
メルの意見を聞いてみる。
「テスからその話を聞いて、直ぐ夫にテンペランス嬢の事を尋ねました」
…諜報が得意なご主人ね…。何でもご存じなのね…
「ベルエル上位子爵は、とても優秀で、代々フリアの家令を務めているそうです。真面目で仕える主人には絶対の忠誠を誓う、手放し難い従者だと。長男のユースラウド殿も執事として有能で、次期筆頭執事となる予定だそうです。一人娘のテンペランス嬢も、その家格の割に高い魔力を持ち、将来有望との事です。性格も、落ち着きがあり温厚。システィーナ様にお仕えするなら、とても良い侍女になるだろうと、申しております」
…チラッと聞いただけで、この情報量。ギュスターブ恐るべし。
「中々いい人物を見つけたね。ギュスの情報なら信用出来る」
―ここの人達は、序列とか気にしないで、人を見てくれるから、本当に嬉しいな。私を受け入れた時点で分かっていたけど。有り難い。
「では、問題ありませんね。お給金もきっちり払って差し上げてね。テスに任せるので、メルから聞いて頂戴ね」
「「畏まりました」」
二人に任せれば大丈夫だね。




