テンペランス
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レイモンドの機嫌が直った所で、再び空気になったテンペランスに声を掛ける。
「テンペランス様は、フリアの家令のお嬢様なんですって?」
「はい。父はベルエル上位子爵です。フリア領主様の筆頭執事を任されております」
…やっぱり、箱を用意してくれた執事さんだ。って事は、私の秘密を知っている人だ。
「やはり、そうですのね。王族案件で詳しくお話することは叶いませんが、以前、お父様には大変お世話になりましたの。私がとても感謝していたと、お伝えくださる?」
「はい!必ず伝えます」
…万が一の事も考えて、テンペランスを、取り込みたいなぁ。そうだ!
「テンペランス様は、将来の事は考えていらっしゃるの?」
「将来ですか?」
「お父様の様に家令になりたいとか、私の母の様に研究者になりたいとか、領主に嫁いで領地経営したいとか」
「そうですね、侍女になりたいと思っています。流石に父のように筆頭執事になる事は無理でしょうが」
「あら、そんな事は分かりませんわ。私が住んでいる離宮の筆頭執事は、女性でしてよ。テスのお姉様ですの」
「…本当ですか?」
驚いて、テスを見る。
「ええ、姉は家を取り仕切っております。女性ですが、何の遜色もありませんわ」
テスは笑顔で返す。
「そうですわ。テンペランス様、私の侍女見習いをなさいません事?」
「えっ?」
テンペランスは驚いている。
「システィーナ様っ!」
テスが『何言い出したコイツ』って、顔をしている。私の側に近付いて耳打ちする、
「システィーナ様、セレスティナ様やアルベティウス様の許可も無しにその様な事をお決めに成られる等、困ります」
「あら?例の一覧には名前はありませんでしたから、注意は必要ないでしょう?それに、フリアの家令の娘なら問題ありませんわ。寧ろ、色々漏れる前に近くに置いておくのが良いのでは?」
はぁと、頭を抱えて、「知りませんからね」と諦めた様だ。
「あ、あの、ご迷惑でしょうから、大丈夫です…」
テンペランスが、恐縮してしまった。
「いえ、大丈夫よ。テンペランス様が遣りたいと思ってくれるなら、ぜひお願いしたいわ。取り敢えず、この貴族院でだけでも。リーネは護衛ですし、テスは学年が違うので、時間が合わない事もあるでしょう。テンペランス様が居てくれると助かりますの」
おずおずと、テスを見る。
「やる気が有るのなら、私が指導致します」
テスはテンペランスに微笑んだ。
「高位王族に、子爵令嬢の侍女が侍る事は滅多にありません。とても光栄です。後に高位の貴族に雇われる際の利点となります。勉強させてください」
テンペランスは真剣な顔で、頭を下げた。
「決まりですわね。レイモンド様、常時入室出来るようにするには如何したらよいですか?」
ご機嫌にお菓子を食べていた、レイモンドに聴く。
「ああ、壁の魔石に先ずシスティーナ様が魔力を通して、その後、テンペランスが魔力を通します。それで、システィーナ様が許可すると言えば大丈夫です」
「…今の3人の許可登録をした覚えがないのですが、それは如何してでしょう?」
「それは、入学に際して、セレスティナ様が申請を出されたのですよ」
レイモンドの代わりにテスが答える。
「入学後、新たに許可登録するには、先程の魔力登録で行うのです」
今度は、レイモンドが答えてくれた。
「なるほど。理解しました。では、早速、登録しましょうか。此方へ」
魔石に手を当てて、魔力を通す。続いてテンペランスも魔力通す。
「テンペランス・ベルエルの入室を常時許可します」
魔石は一瞬光って、光は消えた。
「これで、貴女は私の侍女です。皆、愛称で呼んでいるの。父親の雇い主の息子が居ては遠慮するでしょうが、今日から同僚です。気にせず働いてくださいね。レッドからは、ランと呼ばれていたわね」
私は手招きして、レッドにリーネを入室させる様に言った。
入室したリーネにテンペランスが今日から同僚になった旨を伝える。従者3人にテンペランスの愛称を考えてもらう。
「何がいいかしら?テンピー?テンペ?ランス?」
「…ランが良いと思います」
「私も」
「それがいいです」
あれ?私のアイデア、ダメだった?まぁいいか。
「皆がそう言うなら、ランね。ラン、宜しくね」
「はい。宜しくお願いします」
ランは信徒の礼で恭順の意を示した。
早速、ランはテスに習って、特別高位王族塔の話や、私の侍女として等、指導を始めた。
…雇うって簡単に言ったけど、貴族院のアルバイト代って如何やって払うんだろう?この世界小銭入れとかないし、ピカッってやつだもんね。
「レイモンド様、貴族院で従者や護衛に生徒を雇うと聞きました。その際の報酬はどの様に支払いますの?」
「ああ、一般の学生は食堂に専用機がありますが、我々は部屋の魔石で行えます。専用の紙に金額を記入して、魔石と手で挟み魔力を注ぎます。それから、支払う相手の名前を告げればよいのです。登録されている者であれば、相手の口座に支払われます」
「承知しましたわ」
「…ですが、恐らくシスティーナ様が直々に支払う事は無いでしょう。ここならテスがやるでしょう」
…そうなの?!
「基本的に身の回りの事は筆頭従者が全て取り仕切ります。心配いりませんよ」
レイモンドはニカッと笑う。この人、妙に色気が有るんだよな。まだ17歳になるかならないか位の歳の筈だけど。
取り敢えず、心配は要らない様なので、ホッとして一口お茶を飲んだ。




