↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は大空でした  作者: 高木 藍
第三章 平民の居ない場所と平民しか居ない場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/124

リハビリ

いいね&評価、ブックマーク有り難うございます!

 翌日から、落ちた筋肉を戻すためのリハビリが始まった。ベッドから出ると、翼だけでなく、体のあちこちが動かなくなっているのが分かる。

 その中でも、やはり翼を動かす筋肉を付けるのが急務だ。何故なら、この世界のあらゆる物は、飛べる事前提の作りになっているからである。


 「ではまず、翼の付け根を意識して動かしてみようか」


 笑顔で話す美人に、照れて仕方ない。


 リハビリは、セレスティナ先生、カイン様、アルベティウス様が行ってくれている。セレスティナ先生は手習いや御遣い様のお仕事があるので、私にずっと付いていられない。カイン様もセレスティナ先生の侍従なので、先生が手習いの時くらいしか来てもらえない。

 となると、必然的に私のリハビリを担うのは、大体アルベティウス様となる。アルベティウス様は、研究員だが、今研究している事は、次に進むまで暫くあるらしく、

 「今は時間があるので気にしないで。ティナと仲良くなれて嬉しいよ」

 と、心臓破りの笑顔で宣う。


 セレスティナ先生も美人だが、アルベティウス様の様に現実離れはしてない上、既に親しんでいる。カイン様はイケオジだけど、緊張する程ではない。美男美女の多いこの世界においても、アルベティウス様は次元が違う。前世を足して66年になるけど、こんな人にはお目にかかった事はない。


 …あの、キラースマイルを向けられると、眩しくて目を開けてられない…リハビリに身が入らん…無だ。無になるしかない。


 全ての感情を押し殺し、リハビリに集中した。


 …トイレに行きたいな…


 「トゥアレタに行きたいのですが…」

 

 トゥアレタとはトイレの事だ。残念な事に、トイレも飛べないと行けない。いつも、侍女のメルシェレーラ様に連れて行って貰っている。

 因みに、身の回りの世話をしてくれる人は、全ての事実を知っていて、信用できる人をと、メルシェレーラ様を付けてくれた。なんと、メルシェレーラ様はカイン様の娘だ。まだ16歳だけど、この春結婚したばかりだそうだ。この世界では女性は16で成人して、高貴な人程、成人と共に結婚するんだって。


 「僕が運ぼうか?」

 「けけけ結構です。メル様にお願いしますので」


 私が赤面しながら言うが、アルベティウス様はふふふと笑っている。


 …サラッと揶揄ってくるので、侮れない。


 「ティナ様、お運びします」

 

 メルシェレーラ様は、笑いを堪えて、私を抱えてくれる。華奢な見た目にそぐわず、力持ちだ。メルシェレーラ様曰く、何処の王族の侍女となっても恥ずかしく無いように、日々の鍛錬を欠かさないらしい。

 平民の私の事は呼び捨ててくれと言ったけど、『平民だろうが、自分が仕える方を呼び捨てには出来ません』と、取り合ってくれなかった。寧ろ、自分を呼び捨てにしろと強固に主張されたので、『メル様』で勘弁してもらった。

 メル様は、橙色の髪と瞳で、翼は朱色。小柄で可愛らしい印象だ。旦那さんは首都の裁判所で働いている。貴族には珍しく恋愛結婚で、旦那さんも上位伯爵だったので、身分に問題も無かった為すんなり認められたらしい。メル様から聞いたが、カイン様も恋愛結婚なんだと。感情を出さないタイプだから、どんな出会いをして結婚まで至ったのか、非常に気になる。本人に聞いても絶対に教えてくれないだろうから、セレスティナ先生に聞こうかな。 

 


 トイレからでて、部屋に戻ろうとした時だった。


 「あれ?メル?如何してここに?」

 

 後から声を掛けられた。


 「デイン様、お久しぶりです」


 メル様は私を抱えているので、信徒の礼ができない為、代わりに頭を下げる。


 「メル、その子は?」

 

 メル様が、言葉に詰まっている。


 ―私の事を話す訳にはいかんだろう。幸い翼が見えてるから、平民だとは思われてないようだ。よし。


 「お初にお目に掛かります。私の事はティナとお呼びください。訳あって病の療養の為に、暫くここに滞在しております。私から詳細を語る事は許されておりませぬ故、これ以上はご容赦ください。お尋ねになりたい事がございましたら、セレスティナ様へお願い致します」


 どう見ても子供の私から、大人びた発言が出た為か、面食らっている。


 「初めまして。僕はデインベルク・アトワーフ・ベレナルフだ。君は大人が子供になってしまう病なのかい?」


 本気なのか、冗談なのか微妙な顔付きで聞いてくる。


 「…いえ、その様な病では…」

 「デイン様、急ぎますので、失礼致します。アルベティウス様はまだ暫くは戻りません」


 メル様が、デイン様に向き合って言う。


 「ああ、引き止めて悪かったね。エルが君に会いたがっていたよ。また家にも顔を出してくれ。ティナもまたね」

 「近いうちに是非。では失礼致します」


 メル様が頭を下げたので、私も下げた。


 デイン様から離れたので、メル様に聞いてみる。


 「さっきの方はどういった方ですか?」

 「デイン様は、セレスティナ様のご子息です」

 「えっ!」


 …そうか、セレスティナ先生と同じ家名だもんね。って事は、未来の私のお兄様って事??


 「デイン様にはまだ、ティナ様のお話はされていない筈です。この離宮にはアルベティウス様しかお住いではなく、時折セレスティナ様がいらっしゃるだけなのです。ですので、事情を知らない者に会うことは無いと考えていたのですが…」 


 表情は見えないが、メル様の声は固い。


 部屋に戻ると、何かを感じたアルベティウス様が尋ねて来た。

 「何かあったのかい?」

 「トゥアレタを出た辺りで、デイン様にお会いしました」


 メル様は私をベッドに、下ろしながら言う。


 「デインに?」

 「恐らく、アルベティウス様をお訪ねになったのかと。それか、セレスティナ様をお探しにいらしたのではないでしょうか」

 「…どうしてこんな時間に。当然ティナの事を聞かれたよね?」

 「一応、ティナ様がご挨拶されましたが、詳しくはセレスティナ様に尋ねる様にと…」

 「ああ、それでいいよ。ちょっと追い返してくるから、休んでて」


 アルベティウス様は私にキラーウインクすると、部屋を出ていった。


 メル様の淹れるお茶を飲んでいると、アルベティウス様が戻ってきた。


 「お待たせ。デインは帰ったよ」  

 「有り難うございます」

 「ただ…ちょっと困ったことになるかもしれない」

 「どうしたのですか?」

 「…師匠が戻ったら相談するよ。今は君の回復が先だ」


 その後は、デイン様の事には触れられず、只管リハビリを頑張った。


 「僕がいいと言うまで、翼を動かして」

 「片足で立って、両手を広げて。そのまま」

 「翼を縮めて思いっきり開いて。其れを100回ね」 

 「両手を広げたまま片足だけで屈伸これも、100ね」

 「これを100回やったら休憩しようね。早く回復してご両親の元へ戻りたいんだよね?なら頑張らないとね。ティナなら出来るよ」


 …天使の顔で、鬼教官だなこの人…


 へとへとである。アルベティウス様は、ドSだ。


 「…ティナは頑張り屋さんで、飲み込みが早いから、明日から魔術の訓練も同時にやろうか」


 ―?!この人は鬼だ。人間ではない


 「ティナなら大丈夫だよ」


 天使の様な悪魔の微笑みを恨みがましく見つめるが、私には頷く以外の選択肢はない。


 ―お家に帰りたいよ〜


 ぐっと涙を堪えるしかないのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。