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転生先は大空でした  作者: 高木 藍
第二章 貴族ではない自分と平民でもない自分

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領主との話し合い

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 お茶で緩んだ緊張の糸は、領主の登場で瞬く間に張り詰めてしまった。

 

 硬い表情の両親と共に、ソファに腰を落とした。


 このフリアの領主と、名乗ったキースボイドは、髪は濃い赤茶色、翼は赤銅色している。ニコニコ笑う笑顔は、一見優しそうに見えるが、心の奥底を読ませない、不気味な笑みにも見える。


 「まぁ、そう固くならずともよい。突然の召喚で驚いただろう」

 「は、はい。い、いえ」


 …お父さんガッチガチだわ


 固まるお父さんに話を振るのは無駄と思ったのか、領主は一方的に話を進めた。


 「今日来てもらったのは他でもない。其方等の娘、ティナの件だ。…珍しい髪と瞳をしているね」


 優しそうな瞳の奥に、鋭い光が見えた。


 …何を言い出す気だろう。


 私も両親も、領主の真意が見えず黙り込んだ。


 「そう怖がらないでくれ。其方等に悪い話ではない。聞いたところによると、髪や瞳だけでなく、大変珍しい翼を持っているそうだね?」


 私の翼のカバーを見ている。怖くなって視線を遮るように体を捻った。


 「…領主様、我々は平民でございます。貴族様方の様に、腹芸が得意ではございません。仰りたい事ははっきりとお願いします」


 お父さんが、真っ直ぐな瞳で領主を見た。


 …お父さん、覚悟を決めたみたい。めっちゃかっこいい!

 

 領主は、一瞬、目を細めてお父さんを見据えたが、またすぐに笑顔に戻った。


 「いやぁ、すまない。では、はっきりと申そう。其方等の娘は平民で在りながら、魔力を有するようだ。その髪や瞳、色の付いた翼がその証だ。平民では持て余すだろう。私の養子になりなさい」


 …は?


 吃驚して、固まってしまった。両親も同様で、目を見開いている。

 驚きはしたが、私以上に驚いている両親を見て、スッと冷静になれた。


 …なりなさいって事は、決定事項として話しているな。でも、私は王族になる事になっているので、それは出来ない。王族になる事は言えないしどうしよう。セレスティナ先生来てくれないかな。


 「…領主様、それはお断りさせて頂きます」


 お父さんが、絞り出す様な声で言った。


 「どうしてだい?娘は上位の貴族になれて、いい教育を受けられる。裕福な生活を送れるのだよ?」


 領主は意味が分からないと言うように首を振った。


 「其方はどう思っているのだい?」


 領主が、こちらを見た。


 「…私は両親の元を離れたくありません。それに、養女になさるとおっしゃいますが、私が養女になって領主様は何の利があるのでしょう?平民の血が流れる私は、貴族と婚姻は結べませんのに」

 

 お父さんとお母さんが、驚いた表情で私を見た。私が物怖じせず、大人顔負けの話をするのを初めて見たからだろう。 


 …セレスティナ先生の前ではこうなんだけどね。お父さん達にもバレちゃった。でも、ここを切り抜ける為にはやむを得ない。


 私が見た目に反した話をするのに、領主も驚いた様だ。


 「…驚いたな。想像以上に利発な子だ。其方の疑問に答えよう。先ずは、其方と周囲の保護だ。扱いを知らず、魔力が暴走しては命の危険があるからな」


 …これはセレスティナ先生が言ってたことと同じだな。


 「次に…」と言ったあと、コホンと咳払いをした。


 「ウチは男児ばかりでな。可愛い娘が欲しかったんだ」


 …は?何言ってるのこの人?目が点2回目ですが?


 私が目を見開いてるのを見て、もう一度咳払いをした。


 「報告を受けてから、こっそり視察をした時に、其方を見て娘に欲しいと思ってしまったのだ」


 何ちょっと恥ずかしそうに、変なこと言ってんの?このオッサン。


 「やはり、いくら魔力があっても、高魔力の息子の妻には難しいし、養子に貰うしかないだろう」


 …ああ、王族案件って事を知らないから、私の魔力も知らないのか。恐らく、逆の意味で魔力が合わないだろうけど。それにしても…


 「…領主様は、私の魔力がご子息と釣り合えば、婚姻を結ぶ事に抵抗は無いのですか?私は平民です。貴族とは交われない存在ですよ?」


 私が真剣な顔で領主を見詰めると、領主はにっこり見つめ返してきた。


 「抵抗など無い。本来、王族、貴族、平民がそれぞれ交わらないのは、魔力に差がありすぎて、母子に負担が

掛かる為だったのだ。序列によるものではない。現に貴族とは、太古の昔、王族と平民が交わって産まれた存在なのだ。神の落とし子たる王族と、神が創造した平民。貴族はその中間の存在。魔力が釣り合うのなら、全く構

わん」


 …この人は、高位貴族で在りながら、平民に対して差別意識がないんだね。セレスティナ先生と同じ事言ってるし。悪い人では無いのか。でも、この話を飲む事は出来ない。


 「…領主様、娘は物ではありません。私がお腹を痛めて産み、慈しんで大切に育てている、可愛い子なのです。領主様がご子息様を大事に思うように、私もこの事を大事に思っております。どうぞ、取り上げる様な事は止めてください」


 お母さんが、私の手をギュッと握り、静かに懇願した。


 「…シラーナ」


 お父さんも、私とお母さんの手を握った。


 「領主様、娘の魔力制御の事はまたご相談させて頂くかもしれません。ですが、どうぞ、このまま見守っていただけませんか?」


 お父さんも、必死に訴えかける。


 「其方等の気持ちも分かるが…資金力の無い貴族や王族に見つかったら、拐かされる可能性もある。私の所にいた方が安全なのだが」


 うーんと、顎に手をやって考え込んでいる。


 「領主様、私が拐われたら、一体どの様な扱いをされるのでしょう?」


 「…幼い其方に話す訳には」


 領主は、苦虫を噛み潰した様な顔だ。


 「私達も、娘を守る為には知っておかなくてはいけません。教えていただけませんか?」


 お父さんも気になっていた様だ。


 「…覚悟がある様なので、教えよう。決して気持ちのいい話では無いぞ」


 領主の言葉に、私達はゴクリと飲み込んで頷いた。


 「其方の様に、平民で高い魔力持ちは聞いたことが無いので、王族や貴族の御落胤の話になる。昔はどうか分からぬが、今は王族でも貴族でも、平民と交わって出来た子供は、色があるのに貴族にしては魔力が無いし、平民にしては魔力があるという程度の魔力しか持って生まれてこないのだ」


 ふぅっと腰掛け直して話を続けた。


 「産んだのが平民であった場合、生まれてすぐに底雲(そこぐも)の里と呼ばれる孤児院に引き取られる。そこで、名納めすることなく過ごすことになる」 


 「!!」


 お母さんは口に手を当てて驚いている。


 「そこでどの様な扱いを受けるのかは知らぬ。その孤児院におる子供は全て名納めしておらぬので、国の補助金は出ない」


 「そんな…」


 「混じり物と、誹りを受けながら生きねばならぬ。もし、王族にバレればそこに送られる可能性がある。そして、貴族に拐われたら地下室に閉じ込められて、一生魔石作りの道具として生きねばならぬだろう」


 「…魔石ですか?」


 …魔石ってどうやって作るの?


 「我々の生活には、魔石が欠かせない。魔術具は魔石を核として作られるからだ。昔は魔力溜まりで発生した物を採掘していたが、今から300年前、人工的に作る方法が確立し、飛躍的に発展したのだ。魔石は、罪を犯した罪人の魔力から作られたり、研究費用を稼ぎたい研究者が自分の魔力を使って作ったりするのだ。魔石はとても需要があるので、高く売れるのだ」


 …なるほど。資金繰りに使われるわけね。


 「王族や高位の貴族なら、1日1つくらい一人で作れるんだが、下位の貴族だと魔力が足りず何人か協力した上で、1つできるか出来ないかという所だ。そこに、一人で作れる平民が居たら…?」


 「…喉から手が出るほど欲しいでしょうね」


 お父さんが、溜息を付きながら頷いた。


 「貴族だけでなく、豪商も同じことを思うだろう。身の危険を理解してくれたかな?」


 領主は笑顔に戻って私達を見回した。


 「はい。…しかし」


 お父さんは、下を向いてギュッと拳を握っている。


 お母さんは、私を抱き寄せた。


 …危ない事はよく分かった。でも…


 「考えている余裕は無いのだよ。娘の安全を考えて、領主命令として、召し上げてもよいのだぞ?」


 「そんなっ…」


 私達が、青い顔で領主を、見上げたその時だった。


 「お話中、失礼致します」


 扉が開いて、見覚えのある人が入ってきた。


 …あ、そうだ、領主を見たことあると思ったら!


 


思いの他長くなりました。もう少し続きます。

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