召喚状
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お父さんと帰って来た。お父さんが扉を開けようと手を伸ばすと、中からエリスとカルムが飛び出してきた。
「あ!お父さん!」
「ティナ!」
「どうしたんた?何処かへ行くのか?」
お父さんが尋ねると、カルムがぷぅっとふくれた。
「ティナが遅いから探しに行くところだったんだよ!」
「お母さんから、一緒にお父さんも探してくるように言われてたから、ちょうど良かったわ」
エリスがホッとしている。
「それは、スマンかったな。仕事に戻る所だったが、お母さんと話してから行こう」
家に入ると、「ああ、ダスリー。ティナ、無事だったのね」
青白い顔をしたお母さんが、寄ってきた。
「遅くなってごめんなさい」
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「ええ…こちらに」
お母さんは、優しく笑顔で私の頭を撫でると、お父さんを促して離れた。
「これを…」
お父さんに、何か巻き物みたいなのを渡している。
「…領主様からの召喚状?!」
お父さんは、驚いて目を見開いている。
「何故、領主様が…」
「ティナと三人で明日来るように書いてあるわ」
「…行かない訳にはいかんだろう」
「セレスティナ先生やフェリオルフ様に、この事を伝えたほうがいいかしら?」
「ううむ。どの様な話かわからんし、明日、話が終わってから必要なら報告しよう」
少し離れて話してはいるが、ワンフロアのこの家では話は筒抜けだ。
…うーん。お父さん、先に話したほうがいいと思うけなぁ。私が呼ばれてる時点で何となく理由を想像つくじゃん
私が考え込んでいる間に、お父さんはエリスとカルムに明日は家から出ないように告げている。明日は闇の日なので、手習いはお休みだ。
「ティナは、明日お父さんとお母さんとお出かけだ。では、仕事に戻るよ」
そう言い残し、お父さんは出ていった。お母さんは不安げだ。私と目が合うと、「大丈夫よ」と頭を撫でてくれた。
翌日、お父さんはお休みをもらった。お父さんもお母さんも、何だか少しピリピリしている。
私は、エリスとカルムの三人で遊んでいるフリをして、二人に耳打ちした。
「エリスとカルムにお願いがあるの。私達が出かけたら、この事をセレスティナ先生に伝えて欲しいの」
「この事って、領主様に呼ばれたこと?」
「そう。私も一緒に領主様のところに行ってるって伝えて。お父さんとお母さんには内緒でね」
「何で内緒なの?」
「…カルム、お父さんなら先生に余計な心配かけたらいけないって反対するからよ」
「そう!エリス分かってるね」
「…分かったわ。伝えてくる」
「ただ、悪い犯罪者が逃げてるらしいから、絶対に二人で一緒に行ってね」
「「わかった」」
三人で頷きあった。緊張しているお父さんとお母さんには、聞こえていないようだ。
「さぁ、ティナ、行くぞ」
「二人は家で待っててね」
お父さんとお母さんに手を引かれて、家を出た。
通路を通ってゲートの方に向かう。前回来たときは、目を瞑っていて気が付かなかったが、上段とゲートのある層の間に、大きなお屋敷が浮かんでいる。
「あれが、領主様のお屋敷なの?」
「ああ。もちろん、初めて来たけどな」
私の問いに、お父さんが笑って言った。
屋敷に近づくと、私兵だろうか、騎士団ではない制服を着た兵士が二人近付いてきた。
「止まれ!ここはフリア領主様のお屋敷である!何用で参られた?」
「領主様に呼ばれて参りました、第三巡視兵長のダスリーと申します。召喚状はここに」
お父さんは、召喚状を上げて言った。
兵士は、召喚状を見て「暫し待て」と、一人が屋敷に入っていった。
…騎士団では無さそうだけど、翼は色付きだから、貴族だね。まぁ、フリアは上位の貴族が治める領地だから、門番が平民って事はないか。
暫くすると、先程の兵士が戻ってきた。
「入ってよい。私に付いて参れ」
兵士に言われて、後に続く。
…近付けば近付くほど、大きいお屋敷だね。
首都の大礼拝堂を見たときの次くらい感動している。大きさは、フリアの礼拝堂より大きい。やはり、上位貴族の屋敷だけあって、造りは豪華だ。あらゆる所に彫刻が施されていて、宮殿の様だ。飛びやすい造りになっている為、通路は広く天井は凄く高い。
「ここで待て」
兵士に言われて部屋に入る。中に入ると、侍女が居て、ソファに座って待つように言われた。
…ソファだ!でも翼が邪魔にならないように、背もたれが低いね。うぁぁ、フカフカだぁ。
私はソファの座り心地に感動していたが、両親はそれどころではなくガチガチに緊張している。
…大丈夫かなぁ?お父さん、お母さん。エリスとカルムはちゃんと伝えてくれてるかなぁ?
「どうぞお召し上がりください」
侍女が紅茶とメレンゲのお菓子みたいなのを勧めてくれた。
「いただきます」
…このお茶美味しい!色は紅茶だけど、飲んだことのない味。ウーロン茶とも焙じ茶とも違う。何のお茶なんだろう?
暫しお茶に感動し、お菓子に手を付ける。
…うん。メレンゲだ。でも、これも美味しいなぁ。お茶が甘くないから、お茶請けにはバッチリ合う。
メレンゲをサックリ噛んで含むと、お茶で温められた口内で、ホロリと溶ける。
…家で使ってるアブゴと砂糖では、コレは作れないね。相当高級な物を使ってるわ。
私が高級茶と高級菓子に感動している間も、両親はお茶にも口を付けず、固まっている。そんな様子を見かねてか、侍女が「お茶が冷めてしまいますので、どうぞ」と促してくれた。
「ああ、シュラーリア様に感謝を」お父さんが言う。お祈りの簡易版だ。「感謝を」お母さんも。
…あ、私さっき、いただきますって言っちゃったな。変に思われなかったかな。
お父さん達は一口飲んで、ほぅっと息を吐いている。漸くひと息つけたようだ。
「このお菓子も美味しいよ」
私もにっこりとお菓子を勧めた。
「あら、本当に美味しいわね」
「うまいな」
やっと二人に笑顔が出た。
一心地ついたとき、執事らしき人がやってきた。
「領主様がいらっしゃいます」
そう言われて、立ち上がりバッテンポーズで領主の登場を待った。
「待たせてすまない。領主のキースボイドだ。座って楽にしてくれ」
笑顔で紳士が現れた。
…あれ?何か見たことある。この人。
笑顔の領主を、見つめてどこで見たのか必死に考えていた。
長くなるので分けます。




