いつか海を越えて
黒龍王さんの無茶振りも何とかひと段落です。
ほんと、当初の予定では単純に海の掃除だけしていくつもりだったんですけどね~
一時騒然となった船上も真犯人が海に没したので次第に落ち着きを取り戻していった。
そして今、俺に土下座せんばかりに謝っている姫さんがいる。
「シュージさん。大変申し訳ございませんでした」
「気にしないでください。そもそもの発端は俺があいつを逃がしたことなんですから。
それに捕まった後も特に無体をされた訳じゃないですし。
ある意味虜囚に対して健全な対応だったと高く評価している方ですよ」
「そう言って頂けると助かります」
実際、殴ったり蹴ったりがあった訳でもないし。
ごく一般的に考えれば反抗出来ないように痛めつけられていただろう。
むしろあの分だと仮にもう一晩くらい営倉に居るようなことがあれば最低限の食事さえ出てきたんじゃないだろうか。
やはりお米の国なだけあって仁義を大事にするってことか。
「では改めて自己紹介と行きましょう。
大陸東部、魔界の更に南東にあるスライム教国という国で国王になったシュージ・フルイムです」
「ま、まさか王様だったんですか!?」
「ええ、まぁ。成り行きに身を任せていたらそうなりました」
盛大に驚く姫さん。
まぁ見えないよな。うん。
俺だって言われたら冗談だとしか思えないもの。
それを一切疑うことなく受け入れてる彼女は間違いなくお人好しだ。
「1国の王を罪人扱いするなど、とんだご無礼を……」
「あぁだからそれは良いんですって。気楽に行きましょう。その方が有難いですから。
俺は特に王族のマナーとかも知らないですからね」
「はぁ。シュージ様がそう仰るのであれば」
「だから敬語とかもなしで良いから。
さっきのバードフィッシュの話をしていた時くらいの感覚で頼みます」
「分かりました。
しかし、1国の王がなぜお1人でこんな遠くに?」
やっぱりそこ疑問に思うよな。
俺ならまず王だと信じないし。
「分かりやすく言うと蒼龍王様の依頼をとある方の代理で受けたからです」
「蒼龍王様の……そうでしたか」
この一言だけで納得された。
もしかして蒼龍王も普段から無茶振りしてるんだろうか。
してるんだろうなぁ。
「それでそのご依頼は済んだのですか?」
「俺の予想では半分終わった、というところかな。
そうですよね蒼龍王様?」
『うむ、そうだな』
俺が尋ねると蒼龍王はゆっくりと頷いた。
受けた依頼は海の掃除だった。
島からここまで見てきた範囲では無事にゴミは無くなっているように見える。
しかしこれまで聞いた話から海流を頭に思い浮かべると、どうも東の大陸から来る流れと、西の島国から来る流れが中間付近でぶつかってるはずなんだ。
東から流れてきたゴミは海流の衝突により半分だけ西に流れてきたと考えられる。
だからまだ東側半分にはゴミが残っているはずだ。
「俺はこれから東の大陸に戻りながらその依頼をこなしていこうと思う。
なので小舟の1つでも借りれたら助かるんだけど」
「いいえ、それには及びませんわ。
今回の謝罪の代わりには到底ならないでしょうが、この船で大陸まで送らせていただきます」
「俺はありがたいけど、いいの?」
「構いません。それにこれをきっかけに大陸との交流を図るのも良いでしょうし」
「なるほど、そっちにもメリットはあるってことだな」
「そういうことです」
それなら遠慮せずに力を借りても良いだろう。
確か2週間前まで海流の影響で国交が断絶してたっていうし、これをきっかけに交流が盛んになれば今回みたいに力ずくで侵略しようなんて奴はでなくなるだろうしな。
『ふむ、話は纏まったようだな』
「あ、はい。お待たせしてしまいましたか?」
『いや、良い良い。
シュージよ。此度の件、依頼したのは確かに黒龍王に対してであり、そなたも黒龍王から依頼されたのだから本来なら黒龍王から報酬を受け取るべきなのだろう。
だがそなたの働きに我からも礼をしたい』
「おおぉ」
ちょっとじーんとしてしまった。
『ん?どうした』
「そんなこと言われたのが初めてで」
『まったく、あ奴らときたら。
ならばあ奴らの分までそなたの望みを叶えるとしよう』
「ありがとうございます。しかし望みかぁ」
急に言われてもパッと思い浮かばないけど何が良いかな。
お金は要らないし装備品も要らないし龍素材を貰って城や教会の強化をする?
だめだ。絶対に皆から怒られる気がする。またこんなものを持ってきてって。
だとすると他には……
『なに、そなたの望みは分かっておる』
「え?」
『しかしその為にはあれが邪魔か。
よし、そなた向こうに渡ったら宗教都市を目指せ。
そうすればそなたの望みは叶えられるであろう』
「あの、俺の望みって?」
『では我は早速準備に取り掛かろう。お主も遅れを取るでないぞ!』
そう言って蒼龍王は海中へと帰っていった。
ちょっ。話が通じると期待してたのに。
結局一方的に決めて行ってしまった。
仕方ない。
俺は隣の姫さんに聞いてみるか。
「俺の望みって何だと思われたんだろう?」
「さ、さぁ。私では龍神様の御心は計り知れません」
だよな。うーん不安だ。
ただまぁここで考えていても仕方ないか。
「ひとまず船を動かしてもらっても良いかな?」
「あ、はい。
総員、出発する。目標は東大陸。帆を下ろせ。微速前進から巡航速度へ!!」
「「了解しました!!」」
蒼龍王が居なくなって海は元の穏やかな状態へと戻っていた。
姫さんの号令で動き出した船は、凪いだ海域を出て東へ。
すると途端に海上にゴミが浮かんでいるのが目についた。
「よし、じゃあ俺達は掃除の続きだ。やるぞスライム」
「「「すらっ」」」
近場にスライムを放流?しつつ、南北にスライムを飛ばしていく。
これであとは海流に乗ってどんどんゴミを回収して行ってくれるだろう。
その様子を見て姫さんが感心していた。
「はぁ~~。これが海岸に流れ着いていたスライムの正体だったんですね」
「ん?」
「本土にも大量のスライムが流れ着いていたものですから。
最初はポンシュ島を襲った者たちの仕業なのかと警戒していたんです」
「あ、なんかすみません。先に何か通知しておけば良かったですね」
「いえいえ。私たちの所にはイナホ島から連絡が来たのでもう誤解は解けています。
ですがその。東の大陸は大丈夫なのですか?」
「あ……」
言われてみればそうだよな。
魔界ならともかく、こっち側の大陸には俺ってほとんど面識ないし。
このままだと俺の国が海から攻めてきたように取られる危険がありそうだ。
「うーん、なにか伝える方法があれば良いんだけど」
「そうですね。直接話に行けないなら、やはり手紙でしょうか」
「手紙……海の向こうに手紙……といったら瓶詰の手紙、ボトルメールか」
「ボトルメール? なんですかそれは」
「まぁ見ててください」
まずは手紙を書いて、適当な空き瓶にそれを入れて蓋をする。
そしてそれをスライムに持たせて投げれば。
「これで陸地に漂着したスライムが、漂着先に居る人に手紙を渡してくれます」
「まぁ、なんて画期的な」
「特定の誰かに宛てるのは無理ですが、今回なら流れ着いた先にいる人なら誰でも良いからね。
ただ1個2個じゃ海岸になかなか辿り着かないかもしれないのでもっと作ろう」
「お手伝いしましょう」
「うん、ありがとう」
そうして俺は姫さん達の手も借りながら100個ほどボトルメールを作って海に流した。
これでダメだったら向こうの港に着いてから冒険者ギルド経由で各地に伝達をお願いしよう。
それから2日後。
俺達の進む先に陸地が見えてきた。小さく港も確認できる。
港に近づくと向こうからも巡視船がやってきて、軽いあいさつの後、適当な船着き場に案内された。
異国の船が来たにしては随分反応が穏やかだったけど、既に俺達の事がこっちにも伝わっていたってことだろうか。
船を降りると、領主館へ向かうという姫さん達とはそこでお別れすることになった。
「送っていただき、ありがとうございました」
「いえ。こちらこそ有意義な時間でした。それにお土産までもらって」
「船乗りにとって怖いのは果物不足ですからね」
この世界に壊血病があるかどうかは知らないけど、途中リンゴを食事に提供したらすごく喜ばれたので、1樽分置いていくことにしたんだ。
「近い将来うちの名産品になる予定なので、いつか交易路が確立出来たら極力安く提供しますよ」
「それは楽しみですね。こちらからも米と清酒で良ければ輸出させていただきます」
「ありがとうございます」
「それではここで。っと、その前にこちらを」
<ミコトと友諠を結びました>
「これで離れていても連絡が出来ますね」
「なるほど、確かに。では今度そちらに向かうときは間違って捕まらないように先に一報入れておくようにしよう」
「も、もうそんな心配は要りませんわ。
そんな意地悪言ってると毎日連絡しますからね!その場合、毎日会いに来るんですよ!!」
「さすがにそれはご勘弁を」
プンッと怒って見せるミコトと笑いあった後、改めて再会を誓いながら別れるのだった。
さて、次に向かうは南の宗教都市か。
一番の心配は異教徒の俺が行って大丈夫なんだろうかってところだけど。
後書き掲示板:
No.200 通りすがりの冒険者
西の島国から船が着いたって
No.201 通りすがりの冒険者
バイキングの件があったから心配してたけど、大丈夫そうか?
No.202 通りすがりの冒険者
うん、意外と友好的。
てっきり俺らを警戒してるかと思ったんだけど
No.203 通りすがりの冒険者
そしてみんな、お待ちかねのお米だーーー!!
No.204 通りすがりの冒険者
よっしゃああぁぁ
No.205 通りすがりの冒険者
おっこめ、おっこめ
No.206 通りすがりの冒険者
清酒もあるよ!!
No.207 通りすがりの冒険者
既におでんの屋台もスタンバイおっけーb
No.208 通りすがりの冒険者
いやぁ、楽しみだな~
No.209 通りすがりの冒険者
早く夜にならないかなぁ
No.210 通りすがりの冒険者
……じーーー
No.211 通りすがりの冒険者
……(/ω\)
No.211 通りすがりの冒険者
そろそろ突っ込んでいいかな?
No.212 通りすがりの冒険者
なんでスライムさんが荷下ろし手伝ってんの!?
No.213 通りすがりの冒険者
やっぱあれ、スライムさんだよな。
No.214 通りすがりの冒険者
あんな挙動出来るスライムがスライムさん以外居るとは思えない。
No.215 通りすがりの冒険者
え、もしかして西の島国はもうスライム教国に占領されてるのか?
No.216 通りすがりの冒険者
友好国だってさ
例の件で仲良くなったらしい
No.217 通りすがりの冒険者
聞けばほぼ無償で島の奪還をしてたらしいし
教主が居なかったら子供と老人に大勢死者が出てたんじゃないかって話だから。
本当は関係ないはずの俺達にまですっごい親切
No.218 通りすがりの冒険者
これはもう、色んな意味で西で悪さは出来ないな
No.219 通りすがりの冒険者
だな。
何というかここまでしてもらえて仇で返すような奴は人として終わってる。
No.220 通りすがりの冒険者
むしろこのままだと俺達スライムさんのおんぶにだっこだぞ?
No.221 通りすがりの冒険者
何かで恩返ししないとな。
とは言っても何をすればいいか思いつかないけど
No.222 通りすがりの冒険者
海の掃除は?この前のイベントでゴミが大量に流れただろ?
No.223 通りすがりの冒険者
それも既にスライムさん達が回収してまわってるそうだ
No.224 通りすがりの冒険者
だめだ、スライムさんが万能すぎるw




