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うちのスライムが弱いはずが・・・・・・くっ!  作者: たてみん


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復讐するは我にあり

なんというかこう、時々訳もなく叫びだしたくなりますね。


 日も暮れ始めて今日はもうそろそろお開きにしようかと話していた頃、慌てた様子のスライムが俺のところにやってきた。


「すららっ!!」

「西から船が近づいて来てる?

 そうか。意外と早かったな」


 きっと西にあるっていう本島からの救援だろう。

 一足早く終わらせてしまったからな。

 折角来てくれたのに無駄足になりそうだ。

 いや、復興を手伝ってもらえば良いか。

 そうと決まれば出迎えに行くか。


「どっちの海岸に来るみたいだ?」

「すらっ」

「北西の方ね。了解。

 おい、何人か一緒に来てくれ。西の島から船が来たみたいなんだ」

「分かりました、シュージ様!

 カン、タン。一緒に行くぞ」

「「おう」」


 村の青年3人を連れて海岸に行くと、丁度水平線の先に船団が見えてきた。

 ぱっと見、中型船が5隻か。

 あれで全部にしては少ないから先遣隊みたいなものか。

 暗くて国旗とかは見えないけど。

 ひとまずこちらも海岸で篝火を焚いて所在を伝える。

 すると、向こうの船の1つから連続して花火が上がった。

 赤、赤、黄、赤。

 信号弾か?なにか意味があると思うんだけど。

 島の青年なら分かるかな。


「なぁ、あれの意味わかるか?」

「あ、はい。あれ?でもおかしいな。

 俺の知ってる信号だと、降伏勧告なんですけど。

 カン、タン。分かるか?」

「すまねぇ。俺も同じ意見だ」

「ああ」


 ん?もしかしてこっちが解放されたのが伝わってなくて、俺達を侵略者と勘違いしているのか?


「こっちから敵意が無い事を伝えるにはどうすれば良いだろう?」

「うーん、昼間なら手旗信号って手もあるんですけど」

「こんなことなら信号弾持ってくるんだったな」

「俺達魔法も使えないし」


 まいったな。このままだと攻撃される危険も出てきた。

 一度彼らを後ろに下げるべきか?

 他に信号って言ったらモールス信号? なんてものがある気がしないが。

 ……あ。


「そうだよ。単純に手紙を届ければいいんだ」

「はい?どうやってですか?」

「紙と筆はアイテムボックスにあるから、それを取り出してっと。

 『俺はシュージ。侵略者は既に撃退しました。村人も全員無事です』

 急がないと攻撃してくるかもだし、これだけ書けば十分かな。

 じゃあ、スライム。向こうの偉そうな人に渡してきてくれ」

「すらっ」

「それっ!」


 手紙を持たせたスライムを船団に向けて投げ飛ばす。

 しかしそれは、船から射出された何かに迎撃された。


キラッ

「スライムーーーーーッ」


 あれ?

 俺のスライムが攻撃された?

 実は救援部隊とかじゃなく、偶然海賊艦隊がやってきたとかだったりして。

 これでもし問答無用で攻撃してくるようなら敵認定して沈めるのもやぶさかではないんだけど。

 と、そこで俺の袖が遠慮がちに引っ張られた。


「あ、あのシュージ様」

「ん?」

「恐らくですけど、今のは攻撃に間違われたのかと」

「え?」

「暗くて何が飛んできたかも分からなかったでしょうし、降伏勧告を出した矢先に何か飛んでくれば反抗して攻撃してきたと思われても不思議じゃありません」

「あ、あー。言われてみればそうだな」


 危ない危ない。

 理不尽にスライムが倒されたと勘違いして我を忘れるところだった。

 普段ならそれくらい思いつくはずなのに、相当疲れてるなこれは。

 さて。じゃあ穏便に済ませるためにはどうすればいいか、だけど。


「よし。3人は一度村に戻ってくれ」

「え、でも」

「俺の事は心配しなくていい。

 あれが西の島からの救援部隊なら誤解さえ解けば何の心配もない。

 でもその前に攻撃されると3人を守り切れないかもしれないからな。

 あ、一応言っておくと、応援を呼んできてほしいって事じゃないから勘違いするなよ」


 なんかこういう時って念を押せば押すほど、反対の意味で取られそうで怖いよな。


「わ、分かりました」

「シュージ様もお気をつけて」

「俺達は村で待ってますから」

「はいよ」


 そう言って3人は村へと戻っていった。

 さてこっちは、どうするかな。

 流石に攻城戦で暴れた後に、荒らされた村の復旧までして頭回らなくなってきたしな。

 本当はログアウトしてぐっすり寝たいところだけど、

 よし、ここはのんびり向こうの出方を待つか。

 ……おっ。

 小舟を下ろしてきた。

 どうやら誰か来るみたいだな。

 降りてきたのは小舟1艘に付き10人ずつ、計50人。

 ほぼ全員が騎士というより武士と言った方がしっくりくるお揃いの鎧を身に纏っている。

 ほぼと言ったのは2人だけ違うからだ。

 一人は女性だからなのか、鎧の輪郭が柔らかい。あと所々に紅色が差してあって意匠にもこだわりを感じる。

 もう一人は布のマントに仮面といかにも怪しい風体だ。

 え、なに?

 もしかして西の島も何かヤバ目な事件に巻き込まれてるの?

 そう思った矢先。

 その怪しいやつが俺を指さして叫んだ。


「姫、あいつです!

 あいつこそが此度の騒動の元凶。

 天災を呼び、島を襲った張本人です!!」

「そうか」

「ん?」


 なんだろう。確かに曇鳥を呼んだのは俺だし、攻城戦で攻め込んだのも俺だから間違ってはいないんだけど悪意を感じるな。

 あと、姫って呼ばれたってことはこの女性が多分この中ではトップだろう。

 仮面の男の言葉に短く頷いて周囲へと指示を出した。


「予定通り1班2班は村の状況を確認。3班はここに陣地を形成せよ。

 油断はするな。どこに敵が潜んでるともしれないからな」

「「はっ」」


 訓練の行き届いた迅速な動きで30人程が島の中へと入っていく。

 村の事を気にかけている辺り、洗脳はされてないと信じたい。

 恐らく村人に危害を加えることはないだろう。


「さて」


 と改めて姫と呼ばれた女性がこちらを向いた。


「抵抗はしないのだな」

「した方が良かったか?」

「いや、この島を襲った侵略者と聞いてたからどれだけ狂暴かと思案していたのだが、拍子抜けだっただけだ。

 捕らえよ」

「はっ!」


 ボケっと立っていた俺に兵士二人が近づき「御免」と一言言い、手を縛ったあと体をぐるぐる巻きにした。

 ……そういえば魔界でも縛られてたな、なんてことをボーっと考えてたら再び仮面の男が口をはさんだ。


「姫。奴は怪しい術を使います。縛るだけでは危険です。

 ここは手足を折って反抗できないようにしておくべきでは」

「いや、問題ない」


 そう言って姫は俺のおでこに手を当てた。

 その手がパッと光った。


<封印状態になりました。封印が解除されるまで一切のアクティブスキル・魔法が使用できません>


 へぇ、封印か。呪いとはまた別ってことかな。

 それよりもだ。仮面の男の声。


「とくがわ?」

「オダだ!おっと、んん。何のことだ?」


 へぇ、逃げ延びれたのか。執念だな~。

 そのまま逃げておけばいいのに、奸計なんて柄じゃないだろう。

 この姫も突っ込みどころ満載のこいつに疑問を持たないのは何かあるのかもしれないな。

 そう考えている間に小舟に乗せられ、そのまま本船の営倉に放り込まれた。


「しばらくここで大人しくしていてもらおう」

「すらっ」

「ん?」

「ああいや、分かった」(しーっ)


 暗いのを良いことに1体付いてきたスライムが扉の陰で手を上げていた。

 魔法が使えなくなったとはいえ、既に召喚していた分が消える訳じゃないからな。

 そう考えると俺を完全に封印しようと思ったら不可能に近いな。

 送ってくれた兵士が出て行ったあと、横になった。

 あ、体にまかれた縄だけ取ってもらえた。代わりに今は手首と足首がそれぞれ縛られてるけど。


「さて、多分向こうから来るから、それまでのんびりするか」

「すらっ」


 そうして10分ほど休んでいたら扉が開いた。

 入ってきたのは仮面の


「よっ、とくがわ」

「オダだ。何度言わせるつもりだ!!」

「いやここまで来たら言わないとダメかなと。

 それにしてもよく生き延びれたな」

「ふんっ。リーダーたる者、常に不測の事態には備えておくものだ。

 万が一殺された時のために、スケープドールを隠しておいたのさ。

 あの時殴り殺されていれば危なかったが、貴様の油断のお陰でこうして無事だったという訳だ」


 なるほど。しかし、備えておくのは良いけど、自分一人ってどうなんだろう。

 折角の5レンジャー(笑)なんだから全員分用意してやればいいのに。


「それじゃあ、その仮面もとっておきの逸品なのか?」

「おうよ。これさえ付けておけばNPCどもは俺を怪しむことが無くなるんだ。

 お陰でどこでも入り込み放題よ。

 こんどあの姫さんの部屋にでも忍び込んでみるかな」


 NPCって。久々に聞いたな。


「にしても凄いな。

 隷属の首輪にスケープドールにその仮面。

 いったいどうやって手に入れたんだ?」

「秘密だ。と言いたいところだが教えてやるよ。

 うちのギルドにはアングラスミスってジョブの奴が居るんだよ。

 変わり者でずっと王都の拠点の地下に篭ってるけどな。

 珍しいアイテムを持っていくと複製したり改良したりしてくれるのよ」


 へぇ。だって運営さん。


「俺が言うのもなんだけど、そんなにべらべらしゃべって大丈夫なのか?」

「おう。姫さんに確認したがお前に付けられた封印は姫さんじゃなくちゃ解除できないらしい。

 そのうえでお前は本島の地下深くに幽閉されるんだからな。

 言っておくが死のうがログアウトしようが抜け出せるものじゃないからな」

「そりゃ困ったな。でも村を調べれば俺が無罪だとバレるんじゃないか?」

「ふっ。そこも考えているさ。お前にはこれを付けてもらう」


 そう言って取り出した首輪。

 ん?隷属の首輪なら効かないけど?

 取り付けられても特に何ともないぞ。


「これはなぁ『入れ替わりの首輪』っていうアイテムだ。

 これを付けた相手を自分と誤認させるって代物よ」

「また面白いアイテムを出してきたな」

「じゃあな。これでお前はNPCどもからはオダと判断される。

 精々代わりに恨まれてきてくれや。

 あっはっはっはっは」


 オダは勝ち誇ったように笑って出ていった。

 うーん。のんびりしすぎた?

 まぁ最悪なんとかなるだろうしいいか。

 そうして俺はもう少しだけ一人のんびりと休むのだった。



後書き掲示板:

No.272 通りすがりの冒険者

全員配置についたか?


No.273 通りすがりの冒険者

裏口はいつでもいけるぞ


No.274 通りすがりの冒険者

狙撃班、配置についた


No.275 通りすがりの冒険者

探索班ねずみ1匹逃がさないぜ!


No.276 通りすがりの冒険者

よし、突撃10秒前


No.277 通りすがりの冒険者

……3,2,1、ゴー!!


No.278 通りすがりの冒険者

秘密警察だ!!

大人しくお縄に……ぎゃあああぁぁ


No.279 通りすがりの冒険者

>>278

何が起きた!?

状況を報告しろ!!


No.280 通りすがりの冒険者

扉空けて直ぐに猛毒プール!!


No.281 通りすがりの冒険者

裏口はギロチントラップに仕掛け矢。


No.282 通りすがりの冒険者

どこかの古代遺跡かびっくりハウスか!!

この調子なら吊り天井とかありそうだな。


No.283 通りすがりの冒険者

ばかやろう!!

フラグ建てんなってほらきたーーーー


No.284 通りすがりの冒険者

流石に大岩転がしは建物の大きさ的に無いのが助かるな。


No.285 通りすがりの冒険者

よっしゃ、研究室の扉まで辿り着いた。

行くぜ!!


No.286 通りすがりの冒険者

>>285

あ、ばか。油断するな!!


No.287 通りすがりの冒険者

ぎゃーーーー(ビリビリビリッ)


No.288 通りすがりの冒険者

だから言ったのに。お誂え向きにドアノブなんて付いてるんだから電流流してるに決まってるじゃん!!


No.289 通りすがりの冒険者

しかしこれで今度こそ

って扉が倒れてきた!?


No.290 通りすがりの冒険者

くそ古典すぎ!!


No.291 通りすがりの冒険者

まさかたった1人にここまで手こずるとはな。


No.292 通りすがりの冒険者

だがここまでだ。観念しろ。

……って、お、おい。

その手に持ってるスイッチっぽいのは……!!


No.293 通りすがりの冒険者

自爆装置!?

10秒で爆発って早すぎんだろ!!


No.294 通りすがりの冒険者

ぎゃあああああああああああああああ


No.295 通りすがりの冒険者

……


No.296 通りすがりの冒険者

……


No.297 通りすがりの冒険者

……なんてこった


No.298 通りすがりの冒険者

飛ぶ鳥後を濁さずなんてレベルじゃねえな

敷地内を綺麗に更地にした挙句、ちゃっかり自分の墓石を立てて逝きやがった


No.299 通りすがりの冒険者

『世紀の大発明家ここに眠る』

マッドサイエンティストの間違いだろっ!!


No.300 通りすがりの冒険者

ちくせう

あいつ倒した後で、発明品を頂戴しようとおもってたのに。


No.301 通りすがりの冒険者

ちなみに何が欲しかったんだ?


No.302 通りすがりの冒険者

……性奴隷の首輪とか(ぼそっ)


No.303 通りすがりの冒険者

お巡りさ~~ん!!



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